第10章 おばちゃん、実家(仮)に向かう

第82話

 今、私は……ぽくぽくという長閑な馬の並足の音に癒されつつ、森林浴をしながら街道を進んでいる。

 当然、レヴィエスタ王国との国境に向かう道だ。

 私と共に馬に乗っているのは、イザーク様。その前後を挟むように、前辺境伯夫婦、双子、オズワルドさんとカークさんが殿しんがりを務めている。前辺境伯夫人、アリス様から差し出されたドライフルーツ(リンゴかな?)を受け取り、むしゃむしゃと食む。

 平和っていいなぁ、と思いながら、ふと、一昨日の出来事を思い出し、つい、遠い目になった。


 結論としてリンドベル一家は、こともなく殲滅してしまった。

 ギルマス含め、ギルドの面々が、あんなに散々緊張して、もう駄目、みたいに悲観していたのに、何、あれ。

 魔物よりも化け物って、凄すぎるでしょ……。


               * * * *


 第二陣でやってきた斥候役の冒険者の言葉を最後まで聞くこともなく、さっさと出かけようとするリンドベル一家。私も同行するのは決定事項だった。置いていくつもりはないと。まぁ、置いていかれても、ジッと結界張って待つしかないから、連れてってもらっても何ら変わりはない。

 イザーク様に『身体強化』の魔法はかけなくていいのか、とこっそりと聞いた。イザーク様も忘れてたみたいで、町を出て魔の森の近くに来てから、家族全員(オズワルドさんたちも含む)にかけた。忘れるってことは、なくてもなんとかなるってことだったんだろう。それでも、この世界、何があるかわからないのだ。

 皆、びっくりしてたけど、同時に感謝もされて、少しくすぐったい気持ちになった。


 私たちから少し遅れて、我々を案内するはずだった斥候役の冒険者や、撃ち漏らしたのを殲滅してもらうためのBランクの冒険者たちもついてきていた。だけど、彼らにまで魔法かけちゃうと、後々、問題(私の身バレとか)が起きそうなので、内心、ごめんね、と謝りながらも、魔法をかけるのを我慢した。撃ち漏らしさえしなければ、いいんだし。


 結局、最初の斥候役から聞いた話通り、五カ所の小さな集落と、その奥に大規模な集落があるのがわかった。私の地図情報拡大版でも、真っ赤なのが表示されていたし、もう、オークの方は、やる気満々だったんだと思う。

 リンドベル一家は夫婦、双子、私たちの三チームに別れて、集落を襲撃したんだけど、瞬殺っていうの? 『身体強化』万歳。案の定、撃ち漏らしもゼロ。

 大規模な集落に至っては、全員で、ってなった。そんな中、私も結界を張りながら、魔法の練習も兼ねて、色々試し打ちしましたよ。さすがに近距離で攻撃する勇気はなかった(というか、無理)から、エアカッターだとか、ウォーターカッターみたいな切る系と、アイスアローやストーンバレットみたいな撃つ系のを試してみた。

 ……うん、距離って大事って、しみじみ思ったわ。


 最初に追いかけられた時は必死だったから考えもしなかったけど、こうして殲滅に来てみて、人型の魔物相手だけに攻撃することへの躊躇みたいのがあるかなって思ったんだけど……意外にも冷静な自分がいた。血の匂いには、少しだけ辟易したけど。


 討伐後の焼肉パーティは、思ってた以上に美味しかった。特に、オークキングのお肉が。普通のオークのお肉とか、ギルドの解体の人に綺麗に切ってもらったのを山ほど持っているので、野営の度に食べられるのが今から楽しみだったりする……ハハハハ。

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