第2話

 次に目が覚めた時、パジャマ姿の私は真っ白な空間にふわふわと浮かんでいた。

 そう、なぜか、浮かんでいたのだ。


「え?」


 私は無意識に声が零れる。

 思わずそれに驚いて、喉元を両手で触れた。

 普通に声が出る。さっきまでの息苦しさが嘘みたいに感じられない。


「え? え?」


 困惑している私の目の前に、不意に、シュンッという軽い音と共に一人の男性が現れた。


「ハァ~イ?」


「…は?」


 突然過ぎて、固まる私。

 見上げるような背の高さに、白いチュニックに白い長いトーガを羽織ってる。

 見た目はまるでギリシャ神話に出てくるような何かの神のように、筋肉ムキムキ、のクリクリ金髪に碧眼のモデルばりの超イケメン……なのに、声はやけに高い……というか、裏返ってないか?


「もう、突然、いなくなっちゃったから、心配しちゃったじゃな~い?」


 ……オネエだ。


 ちょっと拗ねたような表情は、もっと子供っぽい子がやったらカワイイといえるのだろう。

 しかし、いかにも男性的なイケメンなのに小指立てて、くねくねしながら私に近寄ってくる姿は、残念すぎる。

 繰り返し言うけど、イケメンなのに。

 唖然としながら、私は男性の姿に目が離せない。


「……えと、どちらさん?」


 思わず呟くように問いかける。


「あ、いきなりでゴメ~ン。えと、私、神様です」


「……は?」


「だぁかぁらぁ、神様でっす」


 キラーンッという効果音とともに、ブイサインを目元に、まるでアイドルか何かみたいにポーズを決めてる。

 まぁ、似合うといえば似合うんだろうけど。

 でも、ちょっとゴツイのよ、うん。


「遠藤美佐江さん、でいいわよね?」


「は、はいっ」


 急にキリッとした顔で名前を問われれば、私の方も自然とピシッと背筋を伸ばして答えてしまう。

 眼鏡でもかけてたら、クイッと直してそうだわ。


「もうっ、こっちの奴らが余計なことするもんだから」


 神様、突然手元に現れた透明な薄いクリップボードに目を向けながら、ブツブツ文句を言っている。

 なんだか、その姿が病院でお世話になった看護師さんたちの姿が重なって、そのクリップボードにカルテでも挟まってるんだろうか、と思ってしまう。

 神様が私の方へと目を向けた。鋭い視線に、思わず、ビクッとなる。

 なに? なに? 私、なんかやらかしたっていうの?


「あのね、今回、こっちには召喚じゃなくて、転生するはずだったのよ」


「ほへ?」


 神様がプンプンしながら言った言葉に、思わずポカンと口を開けて変な声が出てしまった。


 召喚? 転生? なんのことよ。

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