第25話

 二日目の昼過ぎに、やっと最初の町についた。本当に、やっと、という感じ。

 野営も初めてだったし、ありがたいことに何事もなく済んだけど、やっぱり、ちゃんとした寝床で寝たい、というのが正直な話。なにせ、馬車の中では横にすらなれなかったんだもの。


「明日は六時の鐘が鳴ったら出発だ。遅れても待たずに出るから、そのつもりで」


 御者のおじさんの言葉に乗客たちは頷き、乗合馬車から離れていく。


 王都に比べる、とかいうのはダメだね。本当に小さい町だ。昔で言う宿場町、って感じなんだろう。

 宿屋も一軒しかなく、乗合馬車の乗客は全員、その宿に泊まるしかない。

 受付のおばさんは、にこやかに乗客たちに案内をしてるから、私も同じように接してくれると思ったら。


「なんだい、お前さんは一人旅かい」

「ええ」

「一人でも一部屋だから、一泊銀貨一枚だよ」

「……」


 ……別にさ、お客様は神様です、とは言わないけどさ、そういう対応はどうなのよ。

 それに、宿泊代、相場よりちょっと高くない? と思った。

 確か、この先の分岐にあたる領都の宿屋がそれくらいの値段なのは、調査済み。普通、それよりも安いものじゃないの? 

 しかし、私の前の老夫婦にも同じ値段で言ってたから、子供だからと舐めているわけでもないようだ。王都の近くの村だってことで、高くしてるのか。


 舌打ちしなかった私を誰か褒めて。


 私は渋々、銀貨一枚を渡して、自分の部屋の鍵を貰う。

 一番最後に受付をしたせいか、案内された部屋は、受付のカウンターと繋がった食堂から階段を上がってすぐ。

 ドアを開けてみれば、正直、物置かなんかじゃないの? と思うような部屋だった。

 ベッドはあるにはあるけど、絶対、食事時だけじゃなく、夜は飲んで騒ぐ人もいるよね? 普通、煩くて寝られないよね?

 これで銀貨一枚!?

 思わずムッとしたのが顔に出てしまったのが、おばさんにも見えたらしい。

 私が文句を言い出す前に、釘を刺してきた。


「気に入らなければ、出てってくれていいんだよ」


 ム・カ・つ・く。

 しかし、さすがに 疲れてる自覚がある。ベッドがあるだけマシなのだ。

 物置部屋もどきの中へと入り、ドアを閉めると同時に、小さく呟く。


『結界』


 キーンッという軽い音と共に、この狭い部屋の中は薄い膜で覆われる。ナビゲーションで調べまくった結果、光魔法にあった『結界』を使ってみたのだ。これがある限り、音も聞こえないし、侵入することも出来ない。

 私は大きく深呼吸すると、思い切り叫んだ。


「……クソババァァァァッ!」


 ……ふぅ。


 うん、とりあえず、スッキリ。部屋の中は埃っぽいけど。

 当然、クリーンの魔法をかけてから、結界を解いて町に出かけましたよ。うん。

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