第202話

 さて、今度は第三王子と子爵令嬢のクラスだ。

 彼らのクラスは魔法の授業らしく、練習場でいくつかのグループに分かれて、何やら攻撃魔法を目印に当てたり、防御の魔法を使ってるみたいだ。私たちの学年は、まだ座学しか出来ないけど(私はすでに使えるけどね)、彼らの学年になると実技も含まれるようになるようだ。

  肝心の王子と令嬢は……案の定、一緒のグループみたい。しかし、他のメンバーは男性ばかり。このクラスは、女性と男性、ほぼ同数のはずなのに。あ、女性だけのグループが出来てる。

 彼女たちの視線が、チラチラと王子たちのグループに向いてるけど、誰も注意しない。 仲のいい者同士で集まってる、と言われればそうなのかもしれないけど、普通に、違うよねぇ~、って言いたくなる。相手が王子だから言えないのかな、なんて思って見てたら、なんか、グループの中に生徒じゃないのが紛れてる。


 ……どう見たって二十代後半。まさかの教師まで交じってるの?


 私の学生時代にもボーイッシュな女の子が、よく男の子たちと仲良さげだったことがあったけれど、あれは、男の子たちと同格扱いというか、女性としての扱いではなかったよなぁ、と昔を思い出して遠い目になる。だいたい、そういう子は他の女の子とも、うまいことやってたもの。


 ――だけど、あれはちょっと違う。冷ややかな目で集団を見つめる私。


 ソロリソロリと彼らのグループのそばへと近づいてみるけれど、誰も気付かない。隠蔽スキル、本当に便利だわ。私は王子と子爵令嬢の背後に立って覗き込む。


「あ、ほら、ゆっくり集中すれば、出来るだろう?」

「ええ、本当に!」


 小さな炎を指先に灯して、キャッキャと仲良しこよしの王子と子爵令嬢。やってることは、かなり低レベルの魔法の発動。そもそも、その学年ですることじゃないよね? 思わず唖然とする私。


「ああ、ルーシェ嬢、素晴らしいですねっ!」


 ……教師のセリフに、私だけじゃなく、周りにいる他の生徒さんたちも、白目になってる。

 だよねぇ。そうなるよねぇ……と、思いながら彼らを見ていると、ふわりと動くピンク色の靄が見えた。ちょうど、第三王子の腕に子爵令嬢の手が触れている所。


「え?」


 思わず漏れた声に、慌てて口を押さえる。幸いなことに、彼らは子爵令嬢に夢中で私の声には気付かなかった。ホッとしながらも、もう一度、ジッと見つめると、微かに、本当に微かにピンク色の靄が、王子の腕に纏わりついているように見えた。


 ……あれは、いったい何?


 目をゴシゴシしたり、瞼を閉じて揉んで見たりしてみたけれど、やっぱり見えるのだ。それも、よくよく見てみると第三王子以外の男性たちにも、微かにピンクの靄が見える。

 それは、子爵令嬢が触れるたびに、発生するモノみたいで、彼女の手が離れると、靄も離れていく。でも、触れるたびに靄は発生してるみたいで、何も触れていないと、彼女の手にも靄はないみたい。他の人は見えていないみたい。見えてたら、誰かしら反応するはずだもの。


 呪いは黒い靄だった。

 じゃぁ、ピンクの靄は? 




――――――――――――――――――――

 ご指摘がありましたので、196話でのクラスに関するくだりを修正いたしました。下記の通り、クラスの整理をさせていただきます。学年は三年生に当たります。


【Aクラス】

エリナ・ポワーズ伯爵令嬢(十六歳)

 ※裏設定:領地で大怪我をして入学が遅れた。今後触れるかは未定。

キャサリン・コーネリウス伯爵令嬢(十五歳)

アイリス・ドッズ侯爵令嬢(十五歳):偽聖女


【Bクラス】

ルーシェ・プレスコット子爵令嬢(十五歳)

リシャール第三王子


【Cクラス】

エミリア・カリス公爵令嬢(十五歳)


ちなみに、レジーナ・シェンカー侯爵令嬢は、ミーシャの見た目年齢に合わせて、十二歳となっております。一年生です。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る