第201話

 そして週が明けて、婚約者候補を絞り込む最後の週となった。

 正直、レジーナ嬢以外とまともに接していないから、公平さには欠けている自覚はある。なので、今週はフリーの時間を使って、あちこちに出没してみようかと思う。

 フフフ、久々に隠蔽のスキルを使ってみるのである!


 一応、候補者たちのクラスについては把握済み。伯爵令嬢二人と偽聖女は、なんと同じクラス。子爵令嬢は彼女たちの隣のクラスだ。一応、第三王子は子爵令嬢と同じクラスらしい。


 まずは伯爵令嬢ズ&偽聖女のクラスだ。ちょうどダンスの授業らしく、広い練習場でそれぞれにパートナーとなる子息と組んで練習をしている。

 私自身、ダンス自体は好きだったりする。よくテレビで社交ダンスの番組とか見てたしね。まさか、自分が踊ることなるとは想像もしてなかったけど。実際に自分で踊ってみると、なかなか難しいのよねぇ、なんて反省しつつ、教室の端に隠れながら立っている私。隠蔽スキルが発動してるから、気にすることはないんだけど、慣れないもので不安になるのだ。


「さすが、エリナ様ですわ」

「キャサリン様だって、お上手ですことよ」

「エリナ様は、幼い頃からダンスの家庭教師をお付けになってると聞きましたわ」

「まぁ、そうなんですの? 努力家なんですのね」


 取り巻き女子たちが小声で話しているのが、耳に入ってくる。みんな彼女たちには好意的。おべっかって感じではないのは、本人達がそばにいないからだろう。踊っている伯爵令嬢ズも楽しそう。


「あら、アイリス様は、またお相手の方の足を踏んだみたいですわね」

「仕方ありませんわ……元は平民の方ですもの……」


 一方で偽聖女に対しては、なかなか女子たち、遠慮がないな。それでも、めげない偽聖女の根性は認めるけど。


「いやだ、踏まれてるのに、あの方、ニヤニヤされてるなんて」

「殿方は、ああいう方がお好きなんでしょう」


 言われてみれば、鼻の下伸ばしすぎ。そんなに可愛くもないのに、不思議だ。偽聖女、そんな嫌そうな顔して踊らなくても……。


 ジーッと観察するも、気が付けば彼女たちのダンスの練習は終わってしまって、フロアの端に戻って来た。伯爵令嬢ズはお相手の方に、丁寧に挨拶をされている。互いに笑顔で話をしているあたり、普通にいい子たちに見える。

 一方の偽聖女、不機嫌そうに歩く姿を、他の子息たちが追いかけている。クラスの令嬢たちがどちらに好意的な目を向けるかと言ったら、当然、伯爵令嬢ズだよなぁ。


 授業が終わるまでじっくりと観察させてもらったけど、伯爵令嬢ズの子爵令嬢に対する仕打ちをした姿とは、ちょっと違う印象を受けた。他の令嬢たちとも仲が良さげだし。偽聖女は、安定の嫌な女、確定だわ。


 ……絶対、私のひいき目とかではないはずだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る