第53話
イザーク様は一瞬、
「ミーシャ、改めて、確認させて頂きたいんだが、貴女は『聖女』様で間違いないかい?」
「あー。そう、ですね。たぶん。シャトルワースでしたっけ? あの国の王子だか、魔法使い? だか、なんかいっぱい人がいるところに呼び出されたんです。」
「なるほど……それで、そのような結界が張れるのか」
「ん? これはアルム様が与えて下さったスキルの一つです。本来、『聖女』には浄化しか出来ないそうですよ」
「なんだって!?」
それから私は、今までのことを簡単に説明した。
元々、病で死にかけてたところをアルム様がこちらに転生させようとしてたところに、シャトルワースの方から召喚されてしまったこと、それを申し訳なく思ったアルム様が、色々とおまけをしてくれたこと。
そして、実年齢四十七歳という話も付け加える。
「おかげで病気のほうは治ったんですけどね」
「では……老婆というのは……」
度々びっくりした声をあげていたのはカークさん。
「あー、それ、王都のギルドで出てたクエストですかね? 失礼しちゃいますよね。老婆はないでしょうに」
ぷんぷんと怒る私を、みんなでジロジロ見てる。
「しかし、どう見ても老婆には見えんが」
「今はワンピースを着ていることもあって、普通に少女ですよね」
「ズボンを穿いているのを見ると少年だけどな」
最後のオズワルドさんの言葉には、思わず苦笑い。
「えーと、アルム様のオマケの一つです。病気のほうは、こちらに召喚された後、治癒士というんでしたっけ? その方が治して下さいましたけど、アルム様としては転生させたかったそうで、それで若返らせてくださったんです」
そう話してみても、訝し気に見られてしまう。どうしたものか。
「じゃぁ……」
私は目を瞑って左手の手首につけている変化のリストに手を触れて、前の私の姿を思い描いた。
ふわりと、身体の周りを柔らかい風に包まれる。
「……なんと」
「……まじか」
「ミーシャ?」
三者三様の言葉に、私も苦笑い。
たぶん、入院前のまだ健康だった頃の私の姿になっているはず。一応、自分の様子を確かめてみると、着ている服も、あの頃よく着ていたチェックのシャツにジーパンみたいな格好。
「一応、アルム様から頂いた変化のリストで、前の姿になってみたんだけど……ごめんなさいね。こんなおばさんで」
「い、いえ、とんでもありません。このようなご婦人を老婆だなどと」
「そうですね。ご年齢の割に随分とお若く見えます」
「……全然、アリ」
最後のオズワルドさんの言葉に、バッと二人の視線が向く。
「あら、ありがとう。お世辞でも嬉しいわ」
クスクスと笑いながら答える私に、オズワルドさんは頬を赤らめる。
「……兄さんは、年上好きだったのか」
「オズワルド……」
二人の残念そうな視線に、オズワルドさんは気付きもしない。私は苦笑いしながら、元の姿に戻る。オズワルドさんの「もったいない」という言葉に、内心、ちょっとだけ嬉しくなったのは内緒だ。
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