第59話
イザーク様は、普通に恋人とかいてもおかしくないイケメンさんなのだ。
だって、行く先々で女性たちの熱い視線がイザーク様に向けられてるのがわかるもの。カークさんやオズワルドさんも、そこそこカッコいいよ? でも、みんなやっぱりイザーク様に向けられるのだ。
「あー、それはですね」
脇から話しかけてきたのは、オズワルドさん。
「オズワルド、余計なことを」
「いや、結局、後で知ることもあるでしょうから、今のうちにお話をしたって変わらないでしょう」
「……」
不本意そうなイザーク様。そんなに嫌な話なんだろうか?
「えーと、それは私が聞いてもいい話です?」
「まぁ、これからリンドベル領に行ったら、誰かしらから噂話として聞くこともあるでしょうから」
「あら、誰でもが知ってる話なんですか」
その時点で、ちょっとばかり気の毒になってきた。
そして、詳しい話を聞いてみると、なんと子供の頃から婚約していた相手がいたんですって。お相手は、お隣の領の子爵令嬢。いわゆる幼馴染ってやつだったのかしら。
イザーク様は学生時代も、近衛騎士になっても、ほぼほぼ王都暮らし。子爵令嬢は子爵領でと遠距離恋愛(いや、恋愛にもなってなかったみたいだけど)だったのが、どうも家庭教師の男性とくっついちゃったそうな。すったもんだした挙句、子爵のほうから婚約無効を願い出てきたとか。イザーク様にしてみれば、妹みたいに思ってた相手だっただけに、すんなり認めちゃったらしい。
その途端、あちこちの伯爵やら子爵やらから、婚約の話がくること、くること。ある意味、子爵令嬢って防波堤になってたのかも。基本的に、そういう話は辺境伯が窓口になってくれてたらしく、イザーク様のほうにきた話も断っていたそう。やっぱり、モテモテなんじゃない。
本来なら、貴族社会での人脈づくりを優先して考えれば、いい条件の相手と繋がっておきたいところのはず。だけど、リンドベル家は辺境伯ということもあって、派閥とか、あんまり気にしてないらしい。先代も冒険者なんかやってるし。だからこそ、イザーク様も今は婚約とかいう話はいい、と、仕事一筋らしいんだが。
「でも、イザーク様だって、それなりな年齢なんですし」
若い男性が、この年齢で何もないわけないと思うのよね。
ジーッと見つめると、少し顔を赤らめて、ゴホンッと誤魔化すような咳をする。
「そこは、聞いちゃダメなところですよ」
バチンッとウィンクしたのはオズワルドさん。強面に、それは似合わねぇっすよ……。
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