第160話


 リンドベル家の屋敷に戻って、エドワルドお父様とアリスお母様と真剣に、本当に真剣に相談をした。あの家の防衛体制について。散々王都で面倒な目にあったのだ。こっちに帰って来て、同じような目にあわない保証はない。

 だったら、この屋敷にいればいい、という話も出るには出たが、中身おばちゃんには、どうにも甘えに思えて仕方がないのだ。エドワルドお父様たちにしてみれば、甘えて欲しいんだろうけど、どうしても同世代の感覚が抜けないのよね。


 自分でも結界は張れるから大丈夫、と思ってはいるものの、不在時の隙に誰かが入りこむ可能性も否定出来ない。ゲイリーさんたちは信用してるけど。

 護衛をつけようとも言われたけれど、私一人のために、あの魔の森に居続けろとか、なんの罰ゲーム? とか思ったので、それも遠慮させてもらった。


 ということで、あの家周辺に自動で結界を張るような魔道具を作れないか、相談してみた。一応、ダンジョンに潜る時のための結界の魔道具があるそうだ。

 魔道具職人が領都にも数人いるそうなので、一度、リンドベルの屋敷に来てもらうことになった。

 話を聞いてみると、ダンジョン用の結界の魔道具というのは、テントの大きさに合わせて個数が増えるのだとか。二人が入る程度のテントであれば、四個を四隅に置くと十分だそうだ。

 パメラお姉さまが使っているやつを見せてもらうと、テントの四隅に刺す杭みたいなタイプだった。これは一度張ったら、誰も中に入れないタイプ。完全に引きこもりってやつだ。

 一方で魔道具職人さんは、最新型を持ってきてくれた。なんかよく花壇とかに置いてある、ソーラーパネルで充電するライトみたいな感じ。これを地面に刺すタイプ。ソーラーパネルの部分に魔石がはまってる。その魔石の下に、魔法陣が描かれているのが、うっすら見える。お姉さまのよりも結界の強度が違うらしい。


「これ、特定の人しか入れないようにすること、出来ます?」

「そうですね……出来なくはないです」


 それならば入館証みたいな物を持たせられないか聞いてみたら、カードは無理だけれど、指輪などのアクセサリーに許可された者であると登録することが出来るそうだ。誰それ、という個人は無理で、アクセサリーを持っていれば入れる、というものだ。

 魔道具といっても、そこまでは万能ではないのね、と、変なところで納得。


「例えば、管理者の場合は、そのアクセサリーは必要?」

「いいえ、設置時に管理者の魔力を登録することになりますので、アクセサリーは不要になります」


 最後まで説明を受けた私は、最終的にその魔道具を購入することにした。土地の大きさから必要な個数の算出や、許可のアクセサリーのタイプ、諸々はセバスチャンさんが窓口で対応してくれた。お金は……エドワルドお父様が出してくれました。

 ……ちゃんと、何らかの形でお返しせねば、と密かに心に誓うのであった。


 魔道具職人さんと話をした翌日には、屋敷のほうに道具が綺麗な木箱に入って一式届いた。許可用のアクセサリーはピンバッチみたいなのが十個。なんか、多くない? と思ったんだけど、ゲイリーさんご夫婦にリンドベルの家族、セバスチャンさんでちょうどになったのだ。さすが、セバスチャンさん。

 設置自体は、ダンジョン用の結界の魔道具と同じということで、エドワルドお父様に使い方を聞いた私。話を聞いている間、すぐにでも設置に行きたくてワクワクしっぱなしだった私。


「じゃ、いってきます」

「え、おいっ」


 お父様たちを置いて……転移しちゃいました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る