第81話

 部屋の中が、リンドベル家勢揃いって感じになってしまった。辺境伯夫妻はいないけど。

 そこそこ広いはずの応接室なのに、私をのぞいた全員背が大きくて、圧迫感がすごい。

 本来なら、オーク討伐の話題で殺伐としそうなのに、なぜだか、この人たちがいると、大したことないって思えるのが不思議だ。

 先程の話し合いに加わったのはパメラ様。うん、彼女、きっと脳筋タイプだわ。一方でニコラス様は、私とアリス様に加わって、ほのぼのしながらお茶飲んでる。


 話を聞いてみると、パメラ様が剣士で、ニコラス様のほうがアリス様の力を引き継いだようで、精霊魔法が使えるんだとか。もしかして、ニコラス様たちも風の精霊とかにお願いしたってことなんだろうか。


「うん、その通り。父上たちからオクトにいるっていう伝達の鳥が来た時点で、もともとオクトに向かうワイバーンには乗ってたんだけどね。なにせ、警護クエストで国を出てた僕たちに、国元にいた父上から訳の分かんない手紙が届いてたもんだからさ。早いとこ、話を聞いてスッキリさせたほうがいいって、パメラが言いだしてね」


 うん、なんかそういうこと言いそう。パメラ様。チラリと話し合っている様子に目を向けると、イザーク様たちにも負けずに……というかむしろ押してる感じで話してる。


 そもそも、調教されたワイバーンって、そんなに数がいないらしい。だから、料金も割高なんだとか。普通は、別に操縦する人がいるそうなんだけど、パメラ様もニコラス様も、どちらも操縦できるから、二人で一匹に乗ってたそうだ。

 当然、ニコラス様も精霊魔法で、風の精霊にお願いして飛ばしたけれど、タイミング悪く、二人がオクトに着いた時には入れ違いで、エドワルド様たちが飛び立った後だった。

 さすがに、王都から飛び続けてたワイバーンに、再度乗るわけにもいかなくて、新しいワイバーンに乗り換えるのに手間取ったそうな。その間にエドワルド様から、今回の移動先の町の指定が届いたので、追いかけてきたそうだ。


「まさか、父上や母上が、孫、孫と大騒ぎしてるとは思わなかったよ」

「まぁ、ニコラス、こんな可愛らしい姪が出来たのよ、嬉しくはないの?」

「……あー、いや、なんで、この子が姪になるっていう詳しい話を聞いてないんだけど」


 まさかの、エドワルド様とアリス様だけが盛り上がってて、そこんとこ、ちゃんと話してなかった模様。私はアリス様と目を合わせて苦笑いを浮かべる。

 一方で、すごく嬉しそうな顔をしたアリス様がニコラス様に説明をしようとした時、再び、ドアが激しく叩かれた。


『リンドベル様っ! 斥候の第二陣がっ』


 エイミーさんの悲痛な声。


「……動きがあったようですね」

「ふむ。やはり、オクトを待ってては埒が明かないか」

「まぁ、オークの集落程度、私たちでなんとかなりましょう」


 自信満々のパメラ様の言葉を誰も否定しない。むしろ、余裕すら感じるんですけど。

 ……本当に大丈夫なの?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る