第281話
街に着いてみると、冒険者の姿が多くてびっくりする。どうもこの街はいくつかのダンジョンの中継地点のような街のようだ。様々なダンジョンに向かう乗合馬車がいくつも止まっている。
「パメラ、ニコラス、お前ら、宿は決まってるのか」
ヘリウスが、チビちゃんを前に座らせながら、双子に向かって問いかける。チビちゃんはうつらうつらしているあたり、大分疲れたのであろう。あんな目にあったのだ、当然かもしれない。
名前をイスタリウスくんというらしい。ちょっと長いのでイスタくんと呼ぶことにする。
ニコラス兄様が言っていた『王子様』発言については、まだ確認は出来ていない。こっそり教えてくれたということは、さすがに本人達に直接は聞くような話ではないのだろうし、目の前でニコラス兄様に聞くこともできない。
さりげなく二人とも鑑定をしてみたのだが、完璧に弾かれた。鑑定除けみたいな物を持っているのだろう。そういうのを平民出身の冒険者が持つことはないから、彼らは貴族の可能性がある。まぁ、双子も貴族といえば貴族だし(忘れがちだけど)。でも『王子様』というからには、貴族ではなく王族、ということになるんだろうけれど……。
「まだよ。街に寄らずにダンジョンに直行したからね」
「おいおい、それで、よくあんな長期間潜ってられたな」
「うちには優秀なポーターがいるからね」
そう言ってパチリとウィンクしてくるニコラス兄様。優秀と言われて、私も満更ではない。内心、こいつらがいなければ、もっと身軽だったのに、と思っていても。
「そうだよなぁ……あの量の遺体を運んだんだしなぁ……」
遠い目で言うヘリウス。嫌なことを思い出させる。アイテムボックスとはいえ、斃した魔物とは違って、人の死体を入れているのは、微妙な気分だったのは事実だ。
「よければ、俺たちが泊まっている宿を案内するが」
「あら、ヘリウスの泊まっているところなら、いいところよね」
「パメラにとっていいところかは、わからんがな」
ニヤリと笑うヘリウスに、嫌そうに顔をくしゃりとしたパメラ姉様。
「……まさか、そばに娼館とかあるようなとこじゃないでしょうね」
「わっはっはっは」
「あんたっ、子供同伴なのに、何考えてんのっ!?」
「子供って言ってもなぁ、こいつも、もうすぐ十八だし」
「えっ!?」
ヘリウスの言葉に、私たちは固まるが、双子はすぐに復帰する。
「あ、ああ、そういえば、獣人ってそういうもんだっけ。忘れてたわ」
「……どういうこと?」
「んとねぇ……」
パメラ姉様が説明してくれた。
獣人の成人は十八歳なんだけど、成長速度が人族とは違うんだとか。成人するまでは、人族の小さい子供と変わらない。成人した途端、一気に大人の身体に変わり、だいたい六十歳を超えるくらいまでは青年期、それ以降が中年、老年となっていくのだそうだ。
ちなみに、ヘリウス、こう見えてすでに三十後半なんだとか。実際、人族の年齢にしてみれば、まだ二十代前半くらい。見た目だけなら、イザーク兄様と同い年くらい。年齢詐称と言いたいところだが、それは私もだったっけ。
それにしても、あんなに可愛いのに、すでに十七歳だなんて。相変わらず、ヘリウスの前で、眠そうにしているイスタくんの姿に、なんとも言えない気分になった。
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