第233話
風の精霊王様の「ついで」なるものは、すぐにわかった。
なにせ、翌日には転移で教皇本人を連れてきた上に、教会に仕える専属の騎士団まで連れてきたのだ。
そして、捕縛されてた面々を……騎士団の方々が王都に連れて行ってしまった。
その後、彼らをどうするのかは、私には教えてはもらえなかった。
しかし、そのままリンドベル家の応接室で、教皇がお茶している図っていうのも、どうかと思うけど。
「ミーシャ様、貴女様が心を痛める必要はございません」
ニッコリと微笑む姿は、好々爺然とした感じ。悪い人には見えない、というのは、さすが教皇だけのことはあるのかもしれない。見た目は、だけど。教会という組織の中でトップをやってるだけのことはある、ということだな。奴らの話をしてる時は、目が笑ってないのよ。目が。
「あ、いや、でも」
『まぁ、美佐江は優しいのねぇ』
そう言って隣に座って、私の頭を撫でるのは、今日の護衛担当のリアルサイズの土の精霊王様。ぽっちゃり感が母性を連想させる。しかし、優し気な声に騙されてはいけない。怒らせると、火や風の精霊王様も引くぐらい、怖いらしいのだ(だから、風の精霊王様、さっさと騎士団たちを連れていったのかも)。
「そ、そんなことはありませんよ」
「いえいえ、精霊王様の仰る通りです。あのような者たちに情けをかけてやるなどとは……『聖女』様のお心の深さを実感いたします」
『さすが、わかっていますね』
「恐れ入ります」
あんたたち、私の話は聞く気がないんでしょ。
『風のも、少々おイタをしたようですが……?』
「あははは、そうですなぁ……こちらは、助かりましたが」
なんでも、レヴィエスタの国内で以前から教会側の方で目をつけていた新興宗教の拠点らしい場所が数カ所、なぜか、暴風によって破壊されたとか。いくつの「ついで」をこなしてきたんだか。
……もう、遠い目になるよね。
いつの間にか、執事のセバスチャンさんが、二杯目のお茶をいれてくれている。メイドさんじゃなくて、セバスチャン。教皇様くらいになると、やっぱり、セバスチャンじゃないと駄目なのかも。教皇様も優しい笑みのまま、ティーカップを手にする。
「どうも、彼らの教祖と言われる者はオムダル王国におるようです」
「えっ? 帝国ではないのですか?」
「はい、帝国にも、それなりに大きな拠点はあったようですが、一応、本拠地はオムダルだと言われています」
さすが、すでに調査済みですか。それにしても、教会側でも把握するくらいな存在なのか、と思うと、ちょっと怖いな、と感じてしまう。
『美佐江、大丈夫よ』
大きな胸に抱きしめられる私。ちょっと苦しい。
「また何かございましたら、すぐにご連絡ください……我々は、アルム神様の忠実な
コクッとお茶を口にした後、ニコリと微笑まれて、私もなんとか笑みを返す。
――何もないことを祈るよ。彼らのためにも。
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