第230話
屋敷に戻ってすぐ、ヘリオルド兄様の元へと向かう。夕食の前に、一度話しておきたいと思ったのだ。ちなみに火の精霊王様は、小さな光の玉の状態でふわふわ浮かんでいる。
執務室のドアをノックすると、すぐに返事が返ってきた。
「ヘリオルド兄様?」
ドアを開けて中を覗き込むと、大きな執務用のデスクのところに座る兄様以外に、リンドベル家の私兵団の団長さんや、執事のセバスチャンもいた。ヘリオルド兄様は、私の顔を見ると、慌てて立ち上がり、私の元へと駆け寄ってきた。
「ああ、ミーシャかい。無事だったようだね」
「ええ。大丈夫。衛兵さん? が来てくれたし」
「そうか。よかった」
そう言って私をギュッと抱きしめる。私もすっかり慣れたもので、ヘリオルド兄様を抱きしめ返す。
ヘリオルド兄様に促されて、ソファに座ると、兄様は私の隣に座って、私の頭を撫でる。この家の人たちは、私の頭を撫でることで心の平安を得ているらしい。
「あの人たち、やっぱり、新興宗教関係?」
私の問いに答えたのは、私兵団の団長さん。年齢的にはエドワルドお父様と同世代だろうか。あまり接する機会はないので、私も顔を知っている程度だ。なかなか渋い感じで、イケオジってヤツだ。
「はい。ミーシャ様のおっしゃる通りです。彼らもそれは認めております」
「なんだっていうんでしょうね、あの人たち」
「目的に関しては終始無言でして……一応、不審者という扱いで捕えてはいるのですが、それ以上の悪さをしているわけではないので、あまり長くは勾留できないのですよ……特に、あの人数ですし」
結局、捕らえられた者は二十人以上になったとか。一応、牢屋のような所はあるにはあるけれど、そんな大人数を長期間捕えておくことは出来ないらしい。
それにしても、あの周辺に、そんなに怪しい人たちがいたのか、と思ったら、ゾッとする。彼らの目的を知りたいところだけれど、さすがに拷問とかするわけにもいかないか(他人事だから言える)。
「この領から追放とかは出来ないんですか」
「残念ながら、明確な犯罪を犯しているわけではないからね」
隣に座るヘリオルド兄様を見上げながら問いかけると、困ったようにそう答えた。
あちらでは騒乱罪なんていうのもあったけれど、こちらの世界ではないのだろうか。でも、彼らは騒いでいたわけではないから、それも無理か。
「森の中の家の方は大丈夫かい?」
「はい。さすがにあちらまでは気付いていないみたいです」
今の所、森の家では悪意感知をして地図が自動で立ち上がることはない。ということは、まだ、あの家のことはバレていないということだろう。
「そうか……しかし、あの手の連中は、しつこいからな」
忌々し気に言うヘリオルド兄様に、私も大いに同意する。やっぱり、抹殺しないと駄目かしら。なんて、ちょっと黒いことが頭をよぎる。
『美佐江、その気になったか!』
ここでいきなり、ぽすんと、ミニチュアサイズの火の精霊王様、登場。
ちょっと、待ってくださいよ!
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