第49話

 立派な城壁に囲まれた街は、大きな街としては最初に訪れた領都と比べても遜色がないくらい。イザーク様に聞いてみると、ここは隣国オムダル王国と接しているフルトン辺境伯の領都だとか。そう言われれば、しっかりした造りの家々が多いみたい。

 街に入ってすぐ、イザーク様達と一緒に、乗合馬車が集まっている建物に向かった。途中下車分の乗車賃を払い戻せないか確認するためだ。


 混雑している中、受付のお姉さんに話を持っていくと、なんだか嫌そうな表情を一瞬浮かべた。まぁ、そうだろう。返金するのは面倒だろうとは思う。グズグズと言い訳っぽいことを言い出した。


「すまないが、急いでるんだが」


 そうイザーク様が声をかけてくれた途端、びっくりした後、満面の笑みですぐに対応してくれた。あまりの掌返しに、現金だなぁ、と思うが仕方がない。たぶん、私一人だったら、もっとごねられたかもしれない。

 きっちりお金を取り戻して、乗合馬車の所に戻ってみると、他の乗客たちはそのまま御者のおじさんから注意事項や明日の集合場所を聞いているようだった。


「すみません、ここまでお世話になりました」

「おお、いやいや、こっちこそ色々と助かったよ」

「そうよ、ありがとうね」

「気をつけてな」


 御者のおじさんや冒険者のアンディさんたちだけでなく、あまり話をしたわけでもないおばさんやおじさんたちにまで声をかけられた。ちょっとだけ、無愛想だった自分を思い出して恥ずかしかった。


 とりあえず宿を押さえなければ、と、まるでこの土地をすでに知っているかのように、前にいるカークさんとオズワルドさんの馬の進め方には迷いがない。

 歩みを早めて先に行くカークさん。少し先の方にあった立派な建物の前に馬を止めると、そのまま建物の中へと入っていく。

 部屋の確認とかで時間がかかるもんだと思ったんだけど、そんなの関係ないみたいに、すぐに出てきて、私たちの方へと駆け寄ってきた。


「お待たせしました。あちらの宿、押さえました」

「ああ。わかった」


 連れていかれた宿の前に来てびっくり。

 宿屋、じゃないね、向こうで言ったら高級ホテルってやつだよね。思わず、大口開けて建物を見上げちゃったよ。


「ミーシャ、おいで」

「は、はいっ」


 いつの間にか馬から降りてたイザーク様に優しく呼ばれて、慌てて降りる。むぅ、相変わらず、抱き下ろされるのは恥ずかしい。

 馬たちはオズワルドさんがホテルの従業員と一緒に行ってしまった。どこかに厩舎か何かがあるんだろう。

 先に歩き出したイザーク様とカークさんの後を追って、私も豪華なドアの向こうへと足を進めた。

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