第6章 おばちゃん、街道を旅する(2)

第39話

 早朝、乗合馬車の集まっているロータリーに向かう。出発の時刻には、まだ早い。


 前日に宿屋のおばさんにはチェックアウトの時間を言っていたものだから、わざわざ昼ごはんにと、パンと大きめのチーズの塊、それに汁気たっぷりの桃のような果物を用意してくれていた。私はありがたくいただいて、斜め掛けのバッグへ、とみせかけて、アイテムボックスに仕舞い込んだ。


 

 結局、ギルドから戻ってきた翌日は、色々と買い物することにした。


 道具屋で野営に使えそうな道具を一式。簡易テントみたいなのとか、毛布とか。小さな手鍋みたいのもあったかな。それに、調薬するためにと、ちょっと小さめなすりこぎとすり鉢も買った。小分けにする小さな陶器の壺みたいなのもいくつか買った。割れ物だけに普通なら心配するところだけど、アイテムボックスだけに気を使わないで済むのって、ありがたい。


 食料はお城でいただいてきちゃったものが、まだまだあるんだけど、屋台を見てたら美味しそうな串焼きの肉があったので、それも思い切り衝動買いしちゃったのよね。


 他の店も見てまわって色々買っちゃったものだから、かなりの量になってしまった。さすがに斜め掛けのバッグに入れるには無理があったので、途中でリュックサックみたいなバッグも買ってしまった。これから先、町と町の間が長いのはわかってるだけに、変に思われないことが大事だと思う。

 それにしても、アルム様のお小遣い、全然減りません。ありがとう!


 一応、ギルドで会ったあの男を気にしながら店を巡ったけれど、運よくというのか、遭遇することも姿を見ることもなかったのはラッキーだったと思う。残念だったのは、あの時焦り過ぎて、敵用のマーカーを付け忘れたこと。

 ……たぶん、大丈夫だよ。きっと。うん。



 今度の乗合馬車にも護衛の冒険者がついているみたいだ。今度は女性と男性の組み合わせ。この前見た、ボンテージみたいな格好の女性ではなくて、普通に冒険者っぽい格好の人で、ホッとする。さすがにアレはないわ……。


 二人とも他の護衛の人たちと情報交換してるのか、真剣な顔で話をしている。

 私も一応、冒険者にはなったけど、荒事ができるとは思えない。護衛のクエストを請け負えるのは、確かCランク以上からだったはず。まぁ、私には縁遠い話だろうなぁ、と思いながら彼らを見つめた。


 すでに何人かの乗客が御者の人と話してるようなので、私も彼らの後ろに並ぶ。私の順番になったので木札を見せると、そのまま馬車の中へと乗り込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る