第140話
今にも雨が振りそうなどんよりとした空に、どんよりとした空気。
私の不安は案の定、的中しましたよ。
「まぁぁっ! なんですの、その時代遅れな格好。さすが辺境と言われるリンドベルからいらしただけのことはあるわぁ」
「オホホホ、キャサリン様に比べれば、どなたも敵いませんわ」
お茶会の会場となる広間に案内された途端、姉様と私に向けられた言葉がこれ。招待しといて、そりゃないだろ、って思うよねー(棒読み)。
どこぞの悪役令嬢、いや、既婚者たちだから令嬢ではないか、ご夫人方も公爵夫人へのおべっかに余念がない模様。おほほ、うふふ、と作り笑いが広間に響く。
一応さ、何を言われるかわからないから、ジーナ姉様は王都でも有名な仕立屋さんに以前から頼んでいたドレスを着てきたのよ。まぁ、私は領都で見たパメラ姉様の格好をそのままに変化してるけどさ、そんな大して違いはないと思んだけど。それなのに『時代遅れ』発言、公爵夫人のほうが情報に疎いんじゃないの?
前日に比べると、参加者の数はそれほど多くはない。王妃様たちのお茶会では、さすがお貴族様、美しい方々が多いなぁ、と思ったのだけれど、こちらのお茶会は、残念な方が多い。穿った見方をすれば、公爵夫人よりも見劣りのする女性たちが呼ばれてたのでは? と思ってしまう。
そんな中、ジーナ姉様と見かけパメラ姉様の私が来たら、虐めのターゲットになるよなぁ。たぶん、地図情報広げたら、確実に真っ赤と思われるので、あえて見ない。
「今日は『聖女』は一緒ではないの?」
偉そうに言いながら、ふんっ、と鼻先で笑う公爵夫人。エミリア様を産んだわりには、若々しく見えるけど、けっこう化粧が厚塗りよね、と内心、べーっ!と舌を出している私。
「ええ。『聖女』様は、本日は他のご予定がございまして」
「まぁっ! 私のお茶会以上の何があるというの!?」
ジーナ姉様がニッコリと笑いながら答えると、公爵夫人は被せるように甲高い声で文句を言ってきた。うわぁ、なんかテレビの昼ドラとかにでも出てきそうだわぁ、とか思っちゃう。
「昨日の王妃様のお茶会で、マリアンヌ王女様とお約束をされたものですから……」
「ぐっ……」
一応、前日のうちに王女様本人に不参加の言い訳の理由に使わせて下さい、と許可貰ってるので、問題なし。
フフフっと笑う姉様に、さすがに相手が王女となると、それ以上は言えなかった模様で、腹立たしそうに他のお客様のところに行ってしまった。その後を慌てて追いかけていく金魚のフンたち。私たちは放置ですか。
「姉様、私たち、このまま帰ってもいいのではなくて?」
「……そういう訳にもいかないでしょう……ほら、マルゴ様があちらに」
メイドさんたちに、あれこれ指示を出しているマルゴ様の忙しそうな姿が見えた。本来、ホストである公爵夫人が差配するもんじゃないのかしらねぇ。チラリと、肝心の公爵夫人を見れば、相変わらず高笑いしながら、周囲の奥様たちにチヤホヤされている。そしてエミリア様もそのミニチュア版のように、別のところで同世代の女の子たちにチヤホヤされているようだ。
そして、私たちの方へは誰一人視線もくれないし、話しかけても来ない。メイドや従僕もテーブルに案内もしない。やっぱり、ここにいる意味ないんじゃない?
「……マルゴ様にご挨拶だけして、帰りましょう、姉様。招待に応じた、というだけで十分義理は果たしましたでしょう」
行かないで文句言われるよりはマシだものね。
忙しそうにしているところに申し訳ない気持ちもあったけれど、いつまでも、ここにいても仕方がない気がした。
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