第139話

 結論として、貴族の奥様も所詮、近所のおばちゃんと変わらないってことはわかった。


 王妃様主催ということで多くの貴族の奥様、お嬢様がいらしていたけれど、比較的穏やかな雰囲気。あちこちから興味津々な視線は感じたものの、綺麗に着飾って、おしゃべりしている口調は確かに丁寧な言葉だけど、話題は噂話がほとんど。

 新しいお店が出来て、なんとかいうお菓子が美味しいらしい、とか、お化粧の流行の話だったりとか。特に恋バナは大好物みたいで、どこそこ伯爵は最近新しい愛人が出来たらしい、とか、なんとか子爵とこれこれ商会のご令嬢が恋仲だとか。この辺の話がかなり盛り上がっていた。

 まさに、女子会。おばちゃんたちでも、女子会(大切なことなので二回言う)。

 偶々なのか、今回同じテーブルに集まった皆さんが仲良しさんだったことで、『聖女』である私についてはあまり触れることもなく、お互いを貶めるような会話もなかったことはよかったかもしれない。


 ただ、残念だったのは、マルゴ様がいらっしゃらなかったこと。

 一応、第二王子ヴィクトル様の婚約者なのだから、王妃様とともにお茶会に出ていてもよかったはずなんだけど、カリス公爵のお茶会の準備のために来られない、とか。

 いやぁ、それ、本来は公爵夫人が仕切るんじゃないの? と私なんかは思ったんだけど、どうも間違いではないらしい。今日の参加者の奥様たちからも気の毒がられている。


「マルゴも強く出られないから、仕方がないのだろうけれど」


 王妃様も憂い顔で、そう話す。同じテーブルには、王太子でもある第一王子レイノール様の奥様、メリンダ様、第一王女のマリアンヌ様、近衛騎士団の団長、エッケルス伯爵の奥様のエミリー様、ドワーフとのハーフだったエンロイド辺境伯の奥様のマルティナ様、そして私とジーナ姉様がいる。


「あの方は、マルゴ様が何を言ってもお聞きにはならないでしょうからね」

「彼女もご心配でしょうね。ご自身がいなくなった後の家のことを考えると」

「そんなに酷いんですか?」


 エミリー様とマルティナ様の心配そうな声に、つい聞いてしまう。

 だって、明日、ジーナ姉様と行くわけだし。事前情報は大切だ。エミリー様は少し迷われたけれど、すぐに話をしてくれた。


「そうですわね……カリス公爵家の家の仕切りは全てマルゴ様がされている、というのは有名な話ですわ。何せ、今の公爵夫人は平民出身。再婚される時に、ケイブ伯爵でしたかしら、そちらに養女に入られたらしいですが、それも名ばかりで、貴族としての教養など学ぶことなく、すぐに公爵家に入られたとか」


 マルティナ様はティーカップを持ちあげつつ、じっと宙を見ながら思い出すように言葉を続ける。


「ええ、そうでしたわね。もうエミリア様もすでに大きくなられてましたし、早く公爵家に入れてしまいたかったのでしょうけれど……その後も、お勉強などはされてない様子。息子からも学園での話の中でも、あまりよい話は聞きませんわ。最初の頃は他家のお茶会にもお呼ばれされてたようですが、いらしても粗相ばかりされて……注意をしようにも、相手は公爵家、誰も何も言えないのです。ですから今ではお誘いもないのではないかしら」

「そのフォローをするのが毎回マルゴ様で、本当に彼女もお気の毒ですこと」


 聞けば聞くほど、明日が不安になってくる私なのであった。

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