第147話

 先頭に現れたのは、なんとカリス公爵。見るからに偉そうに前に進んでくるから、ちょっと笑いそうになった。笑わなかったけど。

 そして、その後ろには黒の燕尾服に細面の厳めしい顔つきの四十代くらいの男性と、真っピンクのドレスに、真っ赤な肩くらいまでの長さの真っ赤な髪を緩くカールさせた、見た感じ十四、五くらいの女の子が歩いてくる。顎先ををツンと上げて、キツイ猫っぽい感じのグリーンの瞳に白い肌が印象的。この色味だと、昔、子供の頃に見た『赤〇のアン』のアニメの主人公を連想しそうなんだけど、なんかあの女の子よりも、性格がキツそうに見える。ああ、そばかすがないからか。

 その後ろにも何やら貴族っぽい人たちがついてきているけど、カリス公爵の金魚のフンたちだろうか。こいつらもなんか勘違い的に偉そう。


「カリス公爵、何事だ」


 彼らが壇上近くまで来た時、王太子様が不機嫌そうに声をかけた。その声に、チラッと王太子様に目を向けたけど、完全無視して、国王陛下の前に進んで、頭を軽く下げるだけ。うわー、もう、不敬もいいところだよね。周囲もガヤガヤ言い出してる。


「国王陛下」


 本来、目上の者から声をかけるまで、下の人は声をかけちゃいけないって教わったんだけど……そう思いながら、私はチラリと国王様の方へ目を向ける……おっと、怖い顔してるよ。それも、王族の方々全員。一人、マルゴ様だけ、顔が真っ青だ。うん、自分の父親のやらかしていることに、自覚があるってことよね。なんか、段々と悲壮感漂うんですけど。

 国王陛下が不機嫌そうに問いかける。


「カリス公爵、これはどういうことか、今は、ミーシャ殿と話をしている途中なんだが」

「はっ。実は先程、トーラス帝国より、こちらの『聖女』様がいらっしゃいましたので、さっそくご挨拶にと、お連れいたしました」


 腹黒デブ(もう、いいよね?)は自分の後ろに立っている女の子に目を向けてから、自信満々にそう言い放つと、嫌ぁな目付きで私を見て……鼻で笑いやがりましたよ。たぶん、それに気付いた女の子も、偉そうに私を見ると、やっぱり鼻で笑って、すぐに視線をはずして、美しいカーテシーで国王陛下に挨拶をした。


「お初にお目にかかります。トーラス帝国、ドッズ侯爵が娘、アイリスと申します」


 ……うん、これも不敬だよね。国王様、挨拶するのを許してないもん。

 私は白い目で彼らを見下ろす。そんな私にも目もくれず、アイリスと名乗った少女は堂々と言葉を続ける。


「こちらの学園に交換留学のために参ったのですが、本日、こちらにご挨拶に上がったのも、何やら、偽『聖女』が現れたとか。まさか、レヴィエスタ王国の国王陛下が、そのような者に騙されるわけはない、と思いましたが……。危のうございましたわ。間に合ったようでよかった」


 ……わーい。偽物扱いされたわー(棒読み)。

 そして一方で、リンドベル家一族、炎のオーラが舞ってるように、見えるのは気のせいですかね。

 あは、あは、あははは。

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