第134話
部屋につくと、一人掛けのソファに座り、ナビゲーションの画面をジッと見る。使えそうな魔法がないか探してみたのだけれど、これといって、よさそうな魔法が見つからない。こう、一発で終わらせてくれるような便利なのっていうのは、難しいらしい。
「となると、合わせ技かな」
何段階かにわけて、敵を殲滅(殺しはしないけど)していくのが現実的なのかもしれない。あっ、この魔法、使えそう? いや、でもそうなると……。
そんなことを考えているうちに、部屋のドアがノックされる。私はドアのそばまでいって小さい声で返事をする。
「はい」
「ミーシャ? 何か用……!?」
ドアから顔を覗かせたのはイザーク兄様。思いの外、大きな声なものだから、慌てて部屋の中に引っ張り込んだ。
「え? 何? どうっ…!?」
「静かにっ!」
声を押し殺して、兄様を叱りつける。ギルバートさんに細かい指示をしなかったのが悔やまれる。できるだけ相手に動きを知られたくないのに、このままだと、ヘリオルド兄様たちも大きな声で入ってきそう。
「兄様、ヘリオルド兄様に伝達の魔法陣で、静かに私の部屋に来るように伝えて」
「……わかった」
私の真剣さに気付いたのか、イザーク兄様が真面目な顔で頷く。すぐに小さな紙を見つけて伝言メモを書くと、すぐに青い鳥に持たせて飛ばした。
「まさか、同じ屋敷の中にいて使うとは思わなかったよ」
小さな声でそう言うと、クスクス笑うイザーク兄様。
「……笑ってる場合ではないんですよ。イザーク兄様」
「ミーシャ……何があった」
「詳しいことは、ヘリオルド兄様たちが来てから……って、もういらしたみたい」
トントンという軽いノックとともに、ドアを開けて入って来たのはヘリオルド兄様とジーナ姉様。声を出される前に、指を口元に持ってきて「シーッ」とすると、兄様たちも同じような格好をして頷く。三人が揃ったところで、結界をはる。地図情報では……少し離れたところに複数の赤い点がいるけれど、こっちには気付いていないみたいで、ホッとする。
「ミーシャ、説明を」
ソファに座ったヘリオルド兄様が真剣な顔で聞いてきた。
「ええとですね。残念なお知らせです……複数の強い悪意を屋敷内で見つけました」
「なんだと」
私の言葉に、兄様たちの顔色が変わる。確かに自分の屋敷の中に、私が感知するほどの悪意を持った者がいるとか思うのは、嫌だと思う。
「どういった悪意なのか、はっきりしないので、リンドベル家に対する政治的なものなのか、私や兄様、姉様など個人的なものなのか判断つかないんですけど……こうも多いと屋敷にいても落ち着かないので、一掃してもいいですかね?」
たぶん、今の私、かなり悪い顔してると思う。
「ミーシャ……何をする気だい?」
イザーク兄様は、面白そうな物を見つけた、とでもいうかのように楽し気に聞いてくる。
「それはですね……」
フフフ。自分でドッキリしかけるみたいで、ワクワクする。ちょっと不謹慎だけどね。
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