第209話

 帝国の誕生祭というのは、かなり大規模なのは予想はしていたんだけれど。


「なんか、オリンピックの開会式みたいだわね」


 ポソッと呟いた私の言葉は、観衆の騒めきにかき消されてしまう。まるでどっかの競技場みたいな広い会場に、色んな国々の代表者たちが集められている。こんなに多くの国々を集めることができる帝国の力を、まざまざと見せつけられている感じに圧倒される。

 私は、一応、『聖女』という立場上、帝国の王族たちと同じ観覧席みたいなところに席を用意されてる。


 ――私、一人だけで。


 そう。野球場でのVIP席みたいに別室みたいにして上からのぞく部屋みたい。そこに、私、一人。あちらみたいにガラス張りってわけにはいかなようで、外の騒めきは聞こえまくりだけど。

 一方の帝国の王族たちは、その隣のベランダみたいなところに並んで座ってるみたいなんだけど、仕切りがあって、私の方からは見えない。

 なぜこうなったのか。思い出しても、ため息がでる。


 王国から転移陣で帝国について早々のことだ。王城内に専用の転移陣の間がある帝国では、訪問団ごとに出迎えの騎士たちが待ち構えていた。

 イザーク兄様は、レヴィエスタの第一王子の警護についてしまっていたので、私には別の近衛の方がついていたのだけれど、帝国から遣わされた騎士が偉そうに『必要ない』と言ってきたのだ。なんと、『聖女』の警護は帝国側でする、と言いだした。それも、なんていうの? 上から目線を隠そうともしないし、私のこと、『聖女』と言いながらも、馬鹿にしてるのも、わかるわよ、っての。本気で思ってないんでしょ、ってね。

 久々にイラっとしたよね。必要ないじゃねぇよっ! と、叫びたいところだったけど、レヴィエスタという国の立場上、そういうわけにもいかないかと、中身は大人だから、言葉を飲み込んだ。でも、超不機嫌な顔は崩さなかった。

 たぶん、そのせいなのか、いきなり私の周りにチビ精霊王たちが現れたかと思ったら、ぶんぶん飛び回りだして、周りが驚いて固まった。

 私も固まるよ。いきなり現れたら。というか、隠すつもりないのかっ! と叫びそうになる。もう、これじゃ、バレバレじゃないの。これ、私が怒ったらすぐに出てくるとかないよねぇ、とか考えてしまう。


 その中で、一番最初に動いたのは、うちの第一王子。すぐさま、跪いた。

 彼は聞いていたんだと思う。精霊王たちの存在のことを。そりゃ、そうだよねぇ。教会関係者、感激してたもんなぁ(遠い目)。

 その場にいた人たちは、当然、第一王子の様子に、慌てて同じように跪く。帝国側の騎士たちも、状況がわからないなりにも、慌てて同じように跪いた。

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