第275話
森林タイプのダンジョンで嫌なのは、虫がいること。
馬鹿みたいに大きいのもいるそうで、そういうのは魔物に該当するらしい。運がいいことに、私の浄化の能力には敵わないのか、まだ見たことはない。
それよりも、小さい虫だ。これは魔物じゃないから、単純に虫として飛んでくるから、私の浄化の能力に関係なく飛んでくる。野営の時は、結界を張るけど、念の為、自作の虫よけの燻煙剤を置いたりもしていた。おかげで、結界の外側には、虫の山が出来てたりする。自分の調薬スキルの高さに、惚れ惚れする。
パメラ姉様が突撃していったのは、やっぱり冒険者たちだったようで、虫タイプの魔物に襲撃を受けていたみたい。
初めて見たけど、何あれ。カマキリ? カマキリなのか? 周囲の木を切り倒しまくってる姿は、どう見てもおかしいでしょ。それに、あのバッタ、私よりも大きくない? ぴょんぴょん飛びながら攻撃仕掛けてくるとか、やっかいこの上ない。
それに、子分みたいに、小さい虫がうじゃうじゃっと襲ってくる。私が近寄っても逃げ出さないあたり、かなり興奮状態なのだろうか。それとも魔物ではない単純な虫なのか。虫嫌いの私には最悪だ。
そして、真っ先に戦闘に飛び込んでいったパメラ姉様も虫嫌い。
「もう、虫は嫌いだっていうのっ!」
ギャーギャー言いながらも、でっかいカマキリに剣を振り回してる。あっさり瞬殺するから、さすがだわ。
いつもなら自分を囲むように結界を張ってるから、直接触れられたりはしない。しかし、あまり大っぴらに使えないから、使いどころに困る。今、まさにその状況。
ニコラス兄様に置いて行かれたのは、戦闘している場所が見える岩陰。そして私の後ろには蹲っている若者。装備からして、ずいぶんとお金持ちのご子息といったところだろうか。血塗れになっているようだけど、本人の血ではないみたい。ガタガタと震えながら、何やらブツブツ言ってる。私のことを気にする余裕もないみたいなので、彼を含めて小さい結界だけ張ってる。
あの血は、たぶん、あっちの戦闘しているところで倒れている誰かのものなんだろう。冒険者らしき者の他に、騎士みたいな格好の人も倒れてる。彼を守ろうとして、やられてしまったか。
この様子だと、かなりの大人数で来ていたみたいだけど、ほとんどが死んでいるみたい。なんで、こんなことになってるんだ?
生き残っている連中も、かなり疲れが出ているのか、動きが鈍い。魔法を使える人がいないのか。ニコラス兄様の魔法が目立つこと、目立つこと。まるで台風の目のように錐もみで魔物たちが舞い上がっては、バラバラにされていく。
『美佐江、私もやりたい』
今日は風の精霊王様が護衛担当なので、ニコラス兄様のやってるのを見て自分もと言い出す始末。
「目立つから、駄目。それにしても、全然、減らないのはなんで?」
そうなのだ。さっきから双子が加わったことで、どんどん殲滅していってるはずなのに、減っていかない。続々と集まってくるのだ。
『うむ……誰ぞ、蟲集めの魔道具でも持っているんではないか?』
「蟲集め?」
私の言葉に、足元にいた若者の身体がビクリと震えた。まさか。
「え、そういうこと?」
こいつ、助けない方がよかったかもしれない。
私の視線は、かなり冷ややかなものに変わったのは、言うまでもない。
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