第286話
レイスを倒した後、すぐさま移動を始める私たち。なにせ、後ろから赤い点が追ってきてるんだもの! 先程のレイスほどのスピードはないものの、確実に追いかけてきている。それもいくつもの集団が、だ。なんでだ?
先頭を走るパメラ姉様が、ペースを落としてニコラス兄様に並走する。
「ミーシャ、あとどれくらいかかりそうかしら」
「そうね……ニコラス兄様がこのペースで直進できるなら一時間くらい」
「え、それくらいで着くのかい?」
「直進できたらよ? そこに行くまでに、いくつか魔物のかたまりがあるし……絶対直進は無理でしょ」
私を抱えるニコラス兄様は、表情には余裕があるものの、戦いながらというのは疲れるものだ。額に少し汗が光ってる。
本当は自分でも走れるけれど、私のペースじゃ確実に追いつかれる。なぜなら、身体強化しても、普通の大人が走るくらいにしかならないのは実験済みなのだ。双子のペースになんかついていけない!
「ニコラス、俺が抱えるか?」
殿を務めるヘリウスが、そう声をかけてきたが、いざという時に放り投げられたら恐いから却下だ。私の言い分に、呆れたような顔になるヘリウス。
「んなことしねぇよ」
「信用できませんっ」
『護りの腕輪』をしていたとはいえ、放り投げて無事だった獣人のイスタくんと同じように扱われたら困るもの。たぶん、精霊王様が助けてくれるだろうけど。
そしてどんなに避けても、遭遇するときは遭遇する。先程のレイスのように。
「来るよっ」
私の掛け声に、再び戦闘態勢になる四人。私はこっそり、自分の身体に薄く結界を張る。
今度は、骨だ。スケルトンとかいうヤツだろう。それも、随分立派な鎧をつけてるから上位種になるんだろうか。ガチャガチャと盛大な音がするのは、骨と鎧がぶつかる音なのか。理科室の骨格標本なんか、可愛いもんだ。それが、ぞろぞろと現れる。なんなのよ、この数はっ!
「はぁっ!」
「ふんっ」
パメラ姉様が気合の声とともに飛びかかり、ヘリウスは大きな剣を軽く振り払う。体格差があるとはいえ、この差はすごい。
「たぁっ!」
可愛らしい気合の声はイスタくんだ。彼もスケルトンに果敢に剣を振るっている。見ているこっちはヒヤヒヤものなんだが、私なんかよりもよっぽども戦力になっている。
「『ウィンドスラッシュ』」
弓が効かないと判断したニコラス兄様は、魔法で応戦だ。見事に、バラバラとスケルトンたちを切り裂いていく。
『私も戦いたいぞ』
今日の護衛担当は火の精霊王様が、光の球の状態で、私の耳元でブツブツ文句を言っている。獣人たちがいるせいでミニチュアサイズでいられないから、余計にご機嫌がよろしくないようだ。だからといって、さすがにこんな木が多い所では勘弁してほしい。
むしろ、私だって浄化しちゃいたいわよ。我慢してんのよっ。
ううう、ストレスが溜まるっ!
「よし、ミーシャ、もう行けるか?」
ニコラス兄様の声に、戦闘が終わっていたことに気が付いた。周囲には倒されたスケルトンの残骸が徐々に消えて、魔石だけが残っている。慌てて、画面を確認する私。とりあえず、近いところには赤い点は見当たらない。少し安心して、ホッと溜息をつく。
「うん、大丈夫そう」
「じゃ、おいで」
ニコラス兄様の元へ行こうとした時。
「なぁ、さっきから、こいつ、なんなんだ?」
胡乱気な声でそう問いかけたのは、大きな剣を剝き身のまま手にしているヘリウスだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます