第43話

 外が静かになったせいか、馬車の中から乗客がぞくぞくと降りてきた。


「あれまぁ」

「これは、どういうことかいな……」

「坊や、魔術師さんだったのかい」


 おばさんたちが、倒れている奴らを見ながら、私に声をかけてくる。


「いやぁ、まぁ……あ、それよりも、アンディさんたちを」

「あ、そうだな」


 二人のおじさんがが前の方へと向かっていってくれた。


「ところで、あいつら、どうするよ」


 乗客のおじさんたちが寝ている男たちに目を向ける。


「こりゃぁ、この辺りをねぐらにしてる盗賊どもか?」

「たぶん、そうだと思うんですが……あの、こいつらを縛っておくような縄とかってありますか?」

「ん~、御者に聞いてみないとなぁ」


 みんなでどうするか話し合っていると、後方から複数の馬が走っている音が聞こえてきた。


「まさか、新手か?」


 おばさんたちが慌てて馬車の中へと戻ろうとし、おじさんたちは自前のナイフを取り出して身構えた。当然、私もいつでも『スリープ』発動させる気満々で待ち構えていたけれど。現れたのは、馬に乗った三人の男たち。

 そのうち二人は黒っぽいマントに黒っぽい衣装。いい体格してる……偉い人の護衛してる騎士様っぽい……一人はたれ目で優しそうな顔をしてるけど……あぁっ! もう一人は領都で私を探してた人だ。あの怖そうな顔、さすがに忘れない。マズイぞ、マズイ。


「どうした、これは」


 私が内心、オロオロしていると、その二人の後ろにいた、もう一人の男の人が馬上から問いかけてきた。

 うわぁ……なんか海外の映画とかに出てきそうなイケメン登場。いわゆるアングロサクソン系の顔立ちに、緩く波打つ明るい茶色の髪を一つにまとめて、真っ青な大きな瞳が印象的。ちょっと目が離せなくなるイケメン具合だわ。その上、黒っぽい人たちに負けず劣らずいい体格してるし、着ている物もちょっと違う?というか、この人、あの怖い人の上司かなんか?


「はい、どうも盗賊に襲われそうになったところ……この坊主が助けてくれたようで」

「お、おじさん」

「坊主?」


 うわぁ、おじさん、私の背中を押すの止めて! 目立ちたくないぃぃぃっ!


「これは、お前がやったのか?」

「あ、え、と……はぁ……」

「……ふむ」


 うわー、うわー、すごい目力だよー。

 怖い男の人も、なんか目を見開いて見てるしっ。気付いた? 気付いたの?!

 怖いよー、怖いよー。


「詳しい話は後だ。まずは、こいつらを縛り上げろ。オズワルド、カーク、縄を」

「はっ」

「はっ」


 サッと馬から降りる姿はカッコいいって思うけど、でも! 一人はあの怖い人だから!

 あの三人、やっぱり王都からの追手なんだろうか。

 テキパキと指示を出すイケメンの様子を伺いながら、私はどのタイミングで隠蔽スキルを使って逃亡しようか考えていた。

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