第309話
イザーク兄様のことは諦めた。
実際、いつまでも双子のペースでダンジョンやクエストに付き合ったりなど、出来ないのだ。護衛としてでも付いてきてくれるというのであれば、付いてきてもらおうではないか。
……でも、しばらくは、イザーク兄様が下手を打たないように、双子にもついてきてもらうつもりではいる。うん、安全第一。
そして、問題はウルトガ王国だ。
「ウルトガの王太子殿下は、国王陛下の親友なんだよ」
イザーク兄様の言葉にびっくり。
なんと、二人は帝国に留学していた時に知り合ったとか。王族や優秀な人間は、軒並み帝国に留学してたんだもんな。イザーク兄様しかり。
お互いに王族ってだけでは、さすがに親友などと言うものにはならないだろうと思ったら、なんと、レヴィエスタの国王陛下、当時の王太子、一般の貴族として留学してたらしい。その理由というのが。
「当時の国王陛下は、国内ではチビデブで有名でなぁ……」
……王族なんて、美形揃いというイメージがあったんだけれど、どうも違ってたらしい。なんでも、国王陛下の祖母にあたる方が、苛烈な性格の上に、なかなかの巨体を持つ女傑だったとか。体型だけが隔世遺伝したのか、子供の頃の国王陛下はチビデブだったらしい。これで性格も遺伝してたら、色々面倒な存在になってたかもしれないけれど、むしろオドオドした大人しい性格だったらしい。
周辺の国々からも多くの留学生を受け入れている帝国だけに、王族といえば美男美女、というのが当たり前の世界。それがわかっていた国王陛下は、むしろ一般貴族として留学したそうだ。
そうなると、案の定というか、大人しい性格が影響してか、苛めの対象になってしまうわけで、そこで助けてくれたのがウルトガの王太子だったということらしい。チビデブ脱却も、ウルトガの王太子が手伝ってくれたらしいから、それは、親友にもなろう。
「そんな親友からの頼みでも、普段の国王陛下なら、断ってくださるはずだ」
イザーク兄様が困惑気味に答える。
「よっぽども王太子殿下からの依頼が切羽詰まったものだったんだろうか」
その言葉に、私と双子は目を合わせる。たぶん、私と同じことを考えているんだろう。
「イザーク兄様は、番のことって、知ってる?」
「番? いきなりなんだい。番といえば、獣人にとって唯一無二の存在と言われているアレのことかい?」
「そう」
私はそこで、ヘリウスたちのことを話した。
今回のダンジョンでヘリウスとイスタくんという、ウルトガ王室の関係者と一緒になったこと。その彼らが急遽ウルトガからの連絡で国に戻ることになったこと。その際、解毒薬の材料になるものを求めてきたこと。
「その時聞いたの。国王陛下の番の方が、毒を盛られたって」
「!? なんてことだ……」
「番って、相手の側にも影響が出るんでしょ?」
「ああ、そうだな……万が一、番の方が亡くなったりしたら、ウルトガ王国は荒れるな」
今のウルトガ王国は、現国王の存在がかなり大きいらしい。正妃の他にも第二夫人や、第三夫人(コークシス)、そして番になる方(こちらは、トーレス王国という人族出身らしい)、その他にも側室となる方々がいたらしいけれど、番の方が現れてからは、子供のいない方々は、臣下に下げ渡されたりしたらしい(さすがに、コークシスから輿入れしている第三夫人は、そういうわけにもいかなかったのだろう)。
そんなハーレムな世界、私なんかだと源氏物語とか大奥のギスギスしているイメージなんだけど、このウルトガ王家、不思議と仲良し家族らしい。むしろ、外野(貴族とか周辺国とか)の方が、問題なのだとか。
「なにせ、王太子殿下は、ウルトガ王室の中でも珍しく、王太子妃お一人なのだ。それも、あまり後ろ盾としては、強くない家柄だと聞く。今までは国王陛下がいらっしゃっただけに、あまり目立たれる方ではなかったが……まだ未婚の王子たちもいると聞く。周囲が色々と動き出しても、おかしくはないかもしれない」
うわー、めんどくさいー。
どこまでわかっているのか知らないけど、それに、私を巻き込むというのかい。国王陛下!
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