第31話

 いや、待て。

 城の連中は私の容姿が若返ってるなんて知るわけない。だから、別の女の子かもしれないじゃない。

 あ、でも、薬師のおばあさんが、何か感づいてギルドに話を持ってったりとか?

 そもそも、城関係なく、薬師のおばあさんが私を探してる? でも、ギルドに人探しをしてもらえるほど、あのおばあさん、お金があるとは思えない。

 どこかで自分がヘマしてたりするのかも? と考えてしまって、グルグルと嫌なことばかりが頭に浮かぶ。


 連れ戻されるとか。

 連れ戻されるとか。

 連れ戻されるとか。


 気が付けば人だかりもばらけていて、いつの間にかに黒ずくめの人はいなくなっていた。街の中で探し始めてたりするんだろうか。

 慌ててナビゲーションを呼び出して、地図情報を広げてみる。


「うわ」


 さすが領都。人を現わす黒い点が多すぎて、誰が誰なんてわかりゃしない。

 救いなのは敵と思われる赤い点がないこと。あの黒ずくめの人も敵ではないんだろう。そもそも、私を探しているとしても、攻撃の意思がないから赤くならないだけなのだろうか。


 とりあえず、探している相手が私であってもなくても、変に勘ぐられるのは嫌だ。あの様子だと、明日の朝の集合時間とかも探しに来そうな気がする。

 ひとまず、明日、乗合馬車に乗るのはやめておこう。

 そのことを伝えるために、乗合馬車の御者のおじさんを探していると、おじさんが建物から出てきた。もしかして、あの男とは話をしてないんだろうか。そう思うと、少し気が楽だ。

 私は隠蔽スキルをはずし、おじさんの方へと駆け寄る。


「あの」

「おや、宿は大丈夫だったかい」

「はい、ちゃんと部屋とれました」


 気にしてもらえてたと思うと、ちょっと嬉しい。

 私はしばらく、この街にいようと思っていることを伝えた。冒険者ギルドに登録したので、せっかくだから、ここで仕事をしてみようかと思うと。


「そうかい、そうかい」

「それで、このオムダル王国行きの木札、ここで乗り継がなかったら使えなくなるんですか?」

「いや、木札は到着した場所で回収するものだからね。次の馬車でも見せてくれれば乗ることができるよ」

「よかったぁ……」


 これで無駄なお金にならなくて済む。アルム様からのお小遣いだとはいえ、そうポンポン使うのは忍びないのだ。

 次のオムダル王国行きは一週間後。その途中までのであれば、三日後に来るらしい。

 私はおじさんに礼を言うと、宿屋へと戻ることにした。

 今度、あの男の人を見かけたら、敵用のマーカー、付けなくちゃ、と心に強く思いながら。

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