第65話

 魔法談義で盛り上がったところに、カークさんがお茶を淹れて戻って来た。

 なんとトウモロコシで作ったお茶だとか。一時期ハマったことがあったから、なんか懐かしい。香ばしい匂いにホッとする。


「で、魔法の話は終りましたか」

「ああ。それよりも、これからのことなんだが」


 うん。アルム様が頑張っちゃったせいで、確実に目立ってるよね。

 もともと、オムダル王国に入ったら、この国で二番目に大きい街と言われるエクトという街を経由して、レヴィエスタへ向かう街道のあるオクトという街へ向かう予定だった。


「しかし、シャトルワースの連中に確実に目を付けられてるのを考えると、このままエクトに向かうのは危険かもしれない」


 イザーク様が使うような伝達の魔法は、魔術師レベルになるともっと高度なモノになるのだとか。当然、砦にも魔術師もいたりするわけで、王都には伝わっちゃってるだろうな。


「我々を追いかけてきていたのは、ハーディング殿の部下だとして、彼らもすぐにハーディング殿に報告してるだろう。追いかけている者もいるかもしれんが、アルム神様の御業のおかげですぐには追いつけまい」


 イザーク様の体感でも、普段の倍以上のスピードで走ってたとか。それに砦の町を出てからは、また私が『身体強化』かけてるから、そのまま追いかけていたとしても、半日以上差がついてるはずだと。

 ついでに、なんでもオムダルとシャトルワース、そんなに仲がよくないんだとか。冒険者や商人レベルでは問題なく通過できても、あきらかにシャトルワースの騎士だとわかったら、足止めをくらうはずなんだとか。

 だけど。


「その一方で、オムダルの王都にはシャトルワースの外交官の屋敷がある。うちもそうだが、大抵、そこには転移の陣が用意されてるものなのだ」

「転移の陣?」

「ああ、本来は外交に伴う公務の場合のみ利用可能なのだ。戦時中などは利用できないが、休戦状態の今だったらシャトルワースも利用できるだろう。大人数を一気には無理でも、少数なら可能だ。我々が向かおうとしているエクトは、王都のほうが近い。最悪、挟み撃ちされる可能性もある」

「えと、私たちが王都にある外交官の屋敷から転移の陣を利用することって」

「無理だろうな。今回は第二王子の随伴だったから我々も利用出来たのであって、単独となると難しかろう」


 おっふ。まぁ、そりゃそうか。誰でもが簡単に転移出来たら大変だもんね。あ、でも、私って、転移の魔法あるよね? マーカーしてないと無理だけど。


「あのぉ、普通に魔法で転移って出来ませんか?」

「うーん、魔術師によっては持ってる者もいるだろうが、莫大な魔力を消費すると聞く。かなり高位の者でなければ無理だろう」


 うん、ちょっと顔が強張るよね。


「……ま、まさか」

「あ、あはははは」


 視線を逸らす私に、三人の視線が非常に痛いです。

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