第157話

 ワクワクしながらパメラ姉様の後をついていくと、家の裏手に着いた。そこには小さい小屋が建っていた。


「ジャジャジャーン!」


 テンション高めのパメラ姉様の効果音に、つい笑みが浮かぶ。彼女が両手を広げて、指し示したのは、鳥小屋だろうか? 中には赤い鶏冠に茶色い羽の鶏? が数羽いるようだ。じっくり見てみると、尾のほうがなんかはげてる? いや、傷痕になってるのか?


「えと。これは?」

「フフフ、この鶏、普通の鶏じゃないの。ダンジョン産のコカトリスよ!」

「コカトリス……?」

「そう! こいつらの卵が絶品なの!」


 コカトリス……なんか名前は聞いたことがあるような。私のイメージでは鶏に尻尾が蛇がついてる生き物。石化する攻撃があるとか。それがなぜ、この家に?

 私が不思議そうな顔で見ていることに気付いたパメラ姉様が、身を乗り出して説明をしだした。

 なんと、私が薬師の勉強をしている間に、パメラ姉様とニコラス兄様、二人でダンジョンに潜っていたそうだ。そこで、コカトリスたちと遭遇したから、ついでに捕まえてきたんだとか。ついでに捕まえるって、さすが、としか言えないんだけど。

 通常、コカトリス自体は、岩山の多い山岳地帯に多く生息しているらしく、その卵自体、なかなか手に入らない高級品なんだとか。パメラ姉様が言った通りに、味も絶品で、高級食材でもあるそうだ。

 ダンジョン産のコカトリスもいるにはいるが、ダンジョンから生きたまま連れ出しても、あまり長生きしないそうだ。いつもなら、現地でさばいて食べてしまうことが多いらしい。 じゃあ、ここで飼っても同じなのでは? と聞いてみたら、胸をはって答えるパメラ姉様。


「ここは魔の森よ! 魔素が充満してる場所。ダンジョン産のコカトリスでも長く生きられるわけ。一応、石化されないように尾の部分は切ってるから、見た目はただの鶏だけどね」


 それって、パメラ姉様が美味しい卵を食べたいだけじゃ、と思ってたら、卵の殻が石化解除の薬の原料の一つになるのだと、力説してくれた。それなら、石化解除の薬を作るのに、材料をダンジョンや山岳地帯に探しに行かないでもいいかもしれない。

 一応、雑食ではあるものの、尾を切られたコカトリスは凶暴性がなくなって、エサも草であれば何でもいいらしい。草むしりした後片付けを任せてもいいかも。

 あ、いや、薬草類を食べさせてみるのもありか? 日本にいた時、スーパーの卵売り場に、エサの違いで味が変わったり、栄養素が変わる卵とかの宣伝ポップが貼ってあったのを思い出す。


「それで……時々、卵、屋敷に持ってきてくれると嬉しいんだけど」


 考え込んでた私に、すりよって囁くパメラ姉様に、やっぱり本命はそっちなのね、と思わず笑ってしまった。

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