第205話

 私は魅了の話が気になったので、すぐにイザーク兄様に連絡をとった。教会関係者辺りで、その判断が出来る方がいないかどうか。

 返事はすぐに来た。そして、すぐさま、教会から、以前、国王陛下と謁見した時にいた若い人が派遣されてきた。やっぱり、その手のものは呪いと同じ扱いということなんだろう。そして、案の定、黒認定。即刻、報告された模様。

 第三王子は学園の寮から出て、王宮に戻されたそうだ。魅了の魔法の解き方は知らないけれど、教会のほうでなんとかしてくれるのだろうか。


 一方で、彼女をしばらく泳がせることになったようだ。今までは二人とも穏やかな関係であったことは王家の方でも認識していたようなのだ。だからこそ、婚約者候補のリストに彼女の名前も出ていたのだろう。それにも関わらず、他の子息たちまでもが絡む、急激な変化が起こってしまった。このことに関して、何かしらの裏があるだろうと、判断されたようだ。

 もし、裏に何かあったとしたら、まぁ、無かったとしても、今回の教会の判断を以て魅了を使っての関係であると判断されてしまっただろう。そうなったら、第三王子には可哀相なことになる、というのは想像に難くない。

 ちょっと生意気そうな感じだった王子の姿を頭に浮かべつつ、従者を亡くした後だけに、とことん、不憫な彼に同情してしまう。


 そして、短期留学期間は明日で終了となる。久々の学生気分は、そう悪くはなかった。

 しかし、ここまで女の子たちのドロドロしたのを見るとは予想もしていなかった。そこは若くてもお貴族様ということなんだろうか。思わず、昼ドラかよ、とか、ツッコミそうになった。

 結局、私個人としては友人らしい相手はレジーナ嬢とその知り合い程度しか出来なかった。さすがに、自分の娘くらいの年の女の子相手では、私の方が居心地の悪さを感じてしまって、うまく交流出来なかったように思う。そんな不器用な私を相手に、それでも、努力してくれたレジーナ嬢には感謝しかない。


 学生生活はともかく、肝心の婚約者候補の話だ。

 第三王子の本来の気持ちを考えれば、子爵令嬢のルーシェ嬢を推してあげるべきなのかもしれないが、魅了の件もあって、彼女はどうにもキナ臭い。

 偽聖女は、そもそもが駄目過ぎる。

 伯爵令嬢ズは、一般的な貴族のご令嬢過ぎて、押しが弱い。いや、きっと普通なんだろうけど、王子のお相手としては、物足りない感じがしてしまうのだ。

 そして、一番身近にいたレジーナ嬢を贔屓して見てしまうのは、仕方がないと思う。しかし、彼女の気持ちはどうなんだろう。仲良くしてもらった相手だけに、無理に婚約者候補として推していいものか、迷う。

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