第2章 おばちゃん、目を覚ます
第7話
やたらとチュンチュンと鳴く鳥の声に、私は目を覚ました。
「……うるさい」
ポツリと無意識に出た自分の声に、軽く驚く。
そして、改めて自分が生きてることを自覚する。
あんなに病院で苦しい思いをしていたのに、今は普通に呼吸をし、声を出している。
そのことが嬉しくて、ポロリと涙が零れた。
大きく深呼吸できること、それがたまらなく嬉しかった。
しばらく、その悦びを噛みしめていたけれど、鳥の声のうるささに意識が向いてみれば、自分が置かれている状況に目がむくようになった。
病院のベッドに比べると少し大き目だけど、ずいぶんと固いベッドに横たわりながら、部屋の中を見回す。
狭くはないものの、けして広いとも言えない石造りの壁に囲まれた部屋。
壁には飾りらしいものもなく、悪く言えば、牢獄みたいな作りとでも言えばいいだろうか。
高いところにある小さな窓はあるものの、金属の格子が嵌め込まれ、容易には外に出られそうもない。
うるさい鳴き声の主たちが数匹、窓際に居座っているようだ。
そして薄暗くて少し埃っぽい部屋には、ベッドの他にはクローゼットに小さなサイドテーブルくらいしかない。
「この状態……監禁……ということですかね?」
横たわったまま、周囲を見渡し、溜息をつく。
どれくらい眠っていたのかわからないけれど、アルム様の話の感じで、あまり好ましい状況ではないんだろう。
予想はしていたものの、これから先のことを考えると気持ちが暗くなる。
両手を布団から出すと、天井に掌を向けてみる。
細く筋張っている手首に巻き付いた、アルム様から頂いた変化のリストが、窓からの光にチカリと反射する。
あれは夢ではなかった、と確信がもてた。
「あら」
気が付けば、自分のパジャマではなく、クリームがかった色合いの服に着替えさせられていた。
随分とシンプルだこと……と、いうか、何かゴワゴワしてて着心地がイマイチ。
というか、これって貫頭衣っていうやつかしら。まるで、奴隷か何かが着てる服みたい。
そう思って顔をしかめる。
「それにしても、このリスト、盗られてなくてよかったわ」
そして再び自分のやせ細った両手を見比べる。
アルム様は随分と若返らせてくださったようだけど、今の私の状態は、変化のリストでおばちゃんの私にしてくれているということだろうか。
いきなり若返ってる姿になってたら、誰に何をされてたかわからない。
それなりに経験も知識もあるおばちゃんだけに、能天気には考えられないのだ。
さて、これからどうしよう? と思った時、部屋のドアの方からカチリという音が聞こえた。
私は慌てて布団の中に手を戻すと、寝たふりを決め込んだ。
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