第219話
皇太子たちは、彼らの登場に驚き過ぎて、固まってしまったようだ。まぁ、そうだよね。いきなりだし、ただの美男美女じゃないし。後光がさしてて迫力が違う。
『まったく、先程から聞いていれば、なんなんだ、この男は』
火の精霊王様、燃え盛ってます。侍従を焼く程度じゃ、怒りのボルテージ、下がらないっていうことですね。
『我らが美佐江になんという暴言を吐いているか』
氷の微笑って、こういうのを言うんだろうな。水の精霊王様の神々しさなのか、キラキラ輝いてる気がする……あれ、もしかして氷の結晶が舞ってるのかしら。
『美佐江が我らを抑えておらねば、この国などあっという間に消滅させてやっただろうに』
普段はのんびりした雰囲気の風の精霊王様が、獰猛な顔で皇太子を脅してる。緑の長い髪が風でうねって、まるでメデューサだわ。
『まぁ、これから、どうしてくれようかしらねぇ』
土の精霊王様の微笑みが怖い。ふくよかな身体が母性の象徴みたいに優し気なのに、こういう人を怒らせたら、駄目だと思う。ああ、土地が枯れ果ててく姿しか思い描けない。
「せ、精霊だとっ!? そ、そんな話は聞いておらんぞっ!」
おや? レヴィエスタの王家には伝わっていたのに、こちらには話がいってないとは、これ、いかに? 帝国と教会との関係があまりよくないということかしら。
「聞いてなくても、このようにいらっしゃいますし」
精霊王様たちを一人ひとり見上げて見る。皆、私には優しい笑みを浮かべてくれる。うん、美しいね。
『ふんっ、我々の愛し子に手を出すとは、愚かな国もあったものだな』
火の精霊王様の手が、私の頭を撫でてくる。うん、おばちゃんの頭を撫でるのは、やめようね。ポンポンっと彼の手を軽く叩くと、テヘッて笑う。可愛くないぞ。
「ふ、ふざけるな! 何が愛し子だ! わ、私にこのような振る舞いをする者が、精霊に愛されるわけがない! は、早く、これをなんとかしろ!」
皇太子はガンガンと自分の拳で凍ってる部分を殴ってるけど、壊れないよねぇ。一応、騎士たちも剣の柄の部分で削ろうとしてるし、魔術師も炎の魔法を使おうとしてるみたいだけど、火の精霊王様と敵対してるんだもの、魔法そのものが使わせてもらえないみたい。
だんだんと、彼の顔は白っぽくなって唇も青ざめてきてる。身体もブルブル震えだしてる。もしかして、このまま放っておけば凍死しちゃうのかな。
そもそも皇帝が使い物にならないから、皇太子が増長して、あんな風になったのか、もしくは、使い物にならなくしたか。あの皇太子の様子じゃ、なんとなく後者のような気はする。
「せっかく、生まれた王子に『聖女』の祝福を与えたのに……無意味になりそうね」
あんなに多くの国々を従えてたけれど、精霊王様たちを怒らせたのだもの。帝国の崩壊のカウントダウンは始まってるだろう。精霊王様たち、ほどほどにしてくださいね、と思うけれど、彼らのほどほどが、どの程度なのか、予想もつかない。たぶん、すでに、どこかで何かが起こってるに違いない……。
一応、教会本部には話を通しておきたかったけど……そんな、時間はないな。
「さて、魔術師は皇太子に意識が向いてるから……今なら転移の魔法、使えるかしら」
兄様を助けに行かないとね。私は、皇太子たちを放置して、精霊王様たちと共に、転移の魔法を使って、すぐに兄様の元へと飛んだ。
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