第3話 出会い再び

教室は今日も変わらずアホ共が騒いでいる。

現在クラスでは、アホ共に対して不干渉を決めたやつらと、一緒に騒ぐ取り巻き組で完全に分かれていた。


不干渉組といってもそれぞれが孤立している訳ではない。

小さいグループになっていたり、孤立組同士でやり取りをしている。


つまり誰にも関わらず、完全に孤立しているのは俺だけだった。


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昼休み開始のチャイムが鳴った。

俺は通学途中にあるコンビニで購入したおにぎりを持って教室を出た。


さて、どこで食べようか…


特に思いつかなかったので、結局、いつも水やりをやっている校舎裏の花壇へ向かうことにした。

あの花壇には近くにベンチもあり、基本的に誰もいないのでちょうどいいと思ったからだ。


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昼食を食べ終わったものの、特にやることはない。

時間もあるしスマホでも弄っていようかと思ったが、せっかくここに居るのだから、今のうちに水を撒いておけば放課後にまた来なくてもいいだろうと思いついた。


まずは目立つ雑草を先に抜き、散水パーツを着けたホースを使い、水を撒き始める。


すると、人が近づいてくるのに気付いた。


「…あら? 今日は早いのですね?」


「薩川先輩…」


やってきたのはまさかの女神様だった。


女神様は俺を見てから花壇に目線を移し、まとめてある雑草を見てからもう一俺を見た。


「いつも放課後に見かけていましたが、お昼は初めてですね?」


「いや、俺も他の誰かが花壇の世話をしてるのはわかってましたけど、薩川先輩だとは思いませんでした。先生だと思ってました。」


恐らく先生の内の誰かがやっているのだろうと思っていたのだ。


「私はいつもこの時間に来ているのです。放課後はあなたがお世話をして下さっているのをよく見かけたので。」


「そうだったんですか…」


まさか女神様に見られていたとは…

だがそれより、他に世話をしていた人が女神様だったということに衝撃を受けた。


一つ気になったのは、昨日の屋上で遭遇したときの「厳しさ」や「キツさ」を感じないことだ…


折角だからもう少しだけ話を続けてみることにした。


「昨日はすみませんでした…」


「いえ、屋上に人がいると生徒会に連絡がきたので様子を見に行っただけですよ。まぁ…あなたはあのバカで幼稚な小学生もどきに巻き込まれただけのようでしたが」


この人、凄い美人だけど言葉がキツいな…でもやはり、あの場のやり取りを聞かれていたのか。

正直、あれを見られた情けなさと恥ずかしさで、この場から早く離れたくなった。


「…え…と」


 でも薩川先輩はまだ俺に何かを話しかけようとしている素振りを見せていて、上手く切り出せなそう…あ、ひょっとして


「すみません、そう言えば自己紹介をしてませんでした。俺は高梨一成です。一年…」


「副会長!! すみません、この書類なんですが」


薩川先輩を役職で呼んだので、恐らくは生徒会役員だと思われる女生徒が走ってきた。


「昨日の書類なんですけど…」


いつの間にか…女神様の表情が、どこか先程までと違うものに見えて…これは何だろうか…


「それは放課後の生徒会まで待てないものですか?」


 先程までの、俺と会話していたときの雰囲気は消え失せ、どこかピリピリとした空気が漂う。

 そして薩川先輩から放たれた一言は、昨日の厳しさを思い出すには十分なくらい、キツい感じのするものだった。

 こんな応対をされてしまったら、会話をするのが怖くなるんじゃないだろうか…


「え? いや、その…」

「今この場で確認しなければ間に合わないものですか?」

「…すみません放課後でも大丈夫です。」

「なら放課後にして下さい。」


 もう用はないとばかりに、薩川先輩は彼女に背を向けた。

 それはつまり、俺のほうに振り向いたことになる訳で…


「すみません、お話の途中で…」


「いえ、すみませんそろそろ時間がないので失礼します!!」


「あ…」


 俺は屋上での一件を見られた情けさなさを改めて思い出してしまい、これ以上話をする気にはなれなかった。

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