第54話 世話焼き女神様(友達ver)その2
高梨さんの寝息を聞きながら、私はもう暫く手を止めないで動かし続けることにしました。
以前膝枕をして差し上げたときに、こうすると高梨さんが眠ってしまった経験を活かすことができましたね。
まだ眠ったばかりですから、今手を離してしまうと目を覚ましてしまうかもしれませんので。
高梨さんの可愛い寝顔をこうして眺めていることも良いのですが、せっかくお家のことをして差し上げられる機会ですので、スケジュールも考えておきましょうか。
差し当たり今日のところは、台所などの片付けをしつつ時間を見てお夕食の準備をしましょう。
お洗濯やお掃除などは明日ですね。
他にも細かくあるでしょうし、高梨さんのお加減の確認や、身の回りのお世話が最優先ですから…
ふふ…忙しい週末になりそうですね。
高梨さんはすっかり眠ってしまったようです。
名残惜しいですが、そろそろ手を離しても大丈夫でしょうか…
私は最後にもう少し高梨さんの頭を撫でてから、作業を開始…あ、そういえば、夏海に言われていましたね。
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「どうせ看病とか言いながら色々やるんでしょうから一つ注意ね」
「注意ですか?そんなに変わったことをするつもりはありませんが…」
「とりあえず聞いておきなさい。いい?男子の独り暮らしなんて、家のことを何もやってなくても寧ろ普通だからね。それが当然だと思ってあげて。」
高梨さんが家のことをやれていなくても…ということですよね。
それは最初から私がして差し上げるつもりでしたので、別に問題はないと思いますが…。
「それとこれが重要!……えーと、何か変わったものというか…変なものを見つけても、絶対に怒ったらダメよ?」
「?…変なものですか?」
「……PCを触らなければ大丈夫かな…とにかく!部屋の片付けで、何か変わった物を見つけたとしても、そのまま見なかったことにしてあげて。」
「?…よくわかりませんが、とにかく、何かを見付けても知らなかったことにすれば宜しいのですね?」
「そう!あと絶対に怒っちゃダメよ。わかった?」
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……変なものとは曖昧すぎてよくわかりませんね?
まぁいいでしょう。
高梨さんの持ち物に口を出すなんて、出すぎた真似をするつもりはありませんし。
夏海の注意を思い出したところで、早速、台所の片付けを開始します。
と言いましても、先程も料理をしていて思いましたが、整頓されていないだけで汚れたりはしていないのです。
ですから、片付けと言いますか整頓ですね。
…ところで、食器もそうですが、調理道具もあまり使用されている形跡がありませんね。
親戚の方は、どうしていらっしゃるのでしょうか?
調味料や道具類を、他の方が見てもすぐわかるように整頓して、食材は…
…あら、食材も少ないです。
レトルト…インスタント…
身体には宜しくないのですが…いえ、お料理をなさらない以上、仕方ありませんよね。
それでしたら、次回のお弁当からもっと栄養のバランスを考えた内容にして差し上げれば良いのです。
今晩家に戻りましたら、献立を考えましょう。
こちらにも食材が…インスタントだけですね。
さすがにこの量は…
後ほど、時間があれば少しお話ししてみましょう。
「う…んん…」
あ、いけません、高梨さんを起こしてしまったのでしょうか?
……起きた訳ではなさそうですが、高梨さんが寝苦しそうな様子です、片付けを一時中断しましょう。
まだお熱がありますから、そのせいかもしれませんね…
製氷室の氷を使い、氷水に浸したタオルを絞り、高梨さんの額へ。
本当は首裏が良いと聞きましたが、起こしてしまいますからね。
あ、何となくほっとしたような表情をされています。
こういうときに独りでは大変ですよね…
独りと言えば…高梨さんは以前も、そして今もクラスで孤立していると仰っていました。
であれば、あの学校では気の置けない友人はいらっしゃらないということではないでしょうか…
「……高梨さん、あなたは私を…私の我が儘ごと受け入れて下さいました。私もあなたを、あなたの辛い過去ごと受け入れてみせます。ですから…いつか教えて下さいね…」
高梨さんの頭を撫でていると、私も気が落ち着くといいますか、穏やかな気持ちになれるのです
「…あなたは独りではありません…私があなたを独りにさせません。私の我が儘に許可を下さったのですから、今日も明日も、しっかりお世話を受けて頂きますね。」
高梨さんを起こしてしまわないように気を付けながら、台所の整理とタオル交換を繰り返す内に夕方になっておりました。
さて、そろそろ夕食の用意をしましょうか。
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