第68話 クラスでの揉め事

ガラガラガラ


「おは〜」

「おっす」


最近クラスの状況が変化してきた。


バカ共が騒がしいのは相変わらずだが、「高梨が薩川先輩と仲がいいらしい」ということがクラス中に知れ渡ったことがネックだった。

最近はそこに「夏海先輩とも仲がいい」という話まで加わってしまい、更に酷くなってきた。


「なぁ高梨ちゃんよ〜、そろそろ遊びに行こうぜ〜」

「マジでオススメの場所があるからさ、女子を連れてきたら最高だって」

「先輩達を連れてくればぜって〜喜んでくれるって」


見た目だけでも苛つくのに、喋り方まで苛つくというのはタチが悪い。

クラスに関わらなかったのは、こういうやつらがのさばっていたからだし。


避けていたから気弱キャラだとか勘違いされているのかもしれないが、俺は別に怖がっているとか、気弱だとか、そういうキャラではない。

正直、頭に来れば手を出した実績(?)もある。


つまり何が言いたいかというと、俺でもキレることがあるってことだ。


「なぁ…お前らが先輩達を狙って俺に声かけてるのはわかってるんだけどさ、ウゼーんだけどよ?」


「…あぁ?」

「んだこいつ…」


当然そういう反応をするだろうな。

群れなきゃイキがることもできない雑魚が。


「お前らが自分で声かけてみろよ。まぁ誰かさん達みたいに自主退学するような状況にならなきゃいいけどな。」


実はあの屋上の一件のあと、関わっていた奴等は全員自主退学や転校をしていた。

周囲から色々言われたことは当然として、犯罪者扱いされてネットで実名と写真を晒されたらしい。

あの頃はよくわかっていなかったが、ひょっとしたらファンクラブ辺りが動いていたのかもしれない。


「ねぇ、あんたらみたいな奴等を、夏海先輩に近付けるつもりはないんだけどさ?」

「あんたらが相手されると思ってんの?」


夕月夏海ファンクラブの二人が参戦してきた。

チャラ男らしく、さすがに女子を相手にしたくはないらしい。


「…チッ」

「また女かよ。」


それだけ言うと引っ込んだ。

かなり空気が悪くなってしまったが…今更だな。

いつも思っていることだが、俺はこのクラスのことなどどうでもいい


…でも、助け船を出してくれた二人には、今度感謝しておこう。


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今日は生徒会はないが、会長と沙羅先輩は先生達と話があるらしく、俺は先に帰ることになった。


久々にキレてしまったので、久しぶりに神社でお参りをして気分を落ち着けようと思った。


石段を登り、小さめの神社に到着する。


帰りに、幸枝さんに挨拶をした方がいいのかな…


などと考えていると


「どーーん!」

「うわっ!?」


後ろから衝撃があり驚いた。

倒れるまではいかなかったが、完全に油断していたので少しよろけてしまった。


「こら〜未央ちゃんだなぁ〜」


大袈裟に振り返ると、未央ちゃんがいつもの笑顔で俺を見上げていた。


「お兄ちゃんだっこ!!」


相変わらずの可愛さで、両手を俺に差し出して抱っこをねだる。

もちろん俺は断る理由などないので、そのまま抱き上げた。


「未央ちゃん、今日はどうしたの? お母さんは?」


「んとね〜、きょうはおねぇちゃんといっしょなんだよ〜」


お姉ちゃん?

沙羅先輩なら「さらおねぇちゃん」だろうから、違う人なのかな…?


考えていると、石段を登ってきた人がいた。

走ってきたようで、息を切らしている


「はぁ…はぁ…未央ちゃんお待たせ…?」


俺と目が合うと、驚いたような顔をしたあと、目を細めて警戒したような素振りで話しかけてきた。


「あの、その子は私の…」

「お兄ちゃんもいっしよにあそぼ?」


未央ちゃんはお構い無しに、俺に話しかけてきた。

多分彼女が未央ちゃんの言う「おねぇちゃん」なのだろう。


パッと見、中高生くらいに見える女性で、セミロングの黒髪で真面目そうな感じだ。

今風が嫌いな俺的には、それだけで好印象だ。


「お兄ちゃん?」


「ねぇ未央ちゃん、おねぇちゃんってこの人のことかな?」


「うん、まりなおねぇちゃんだよ?」


どうやら今日はこの人と一緒にきたらしい。お母さんがいないことを考えると、家族か、それに近しい人なんだろう。

であれば、誤解されても困るからしっかり挨拶をしておくべきだな。


「すみません挨拶が遅くなりました、俺は高梨一成といいます。未央ちゃんとは前から知り合いで、こうして遊ぶこともあるんですよ。未央ちゃんのお母さんに聞いてもらえれば、俺のことがわかると思いますので。」


一応丁寧に挨拶をしたつもりだが、途中から驚いたような表情を浮かべた。

何か不味いこと言っただろうか?


「……たかなし、かずなり…同姓同名? いや、そんな偶然…」


何を呟いているんだ?


俺の訝しげな表情に気付いたのか、ハッとしたリアクションをした後、気を取り直したようだ。


「失礼しました。私は藤堂満里奈です。未央ちゃんの従姉妹になります。」


従姉妹?

まぁ別に不思議でもなんでもないんだが、それよりも俺の警戒が全く解けていないのが気になる。

そんなに怪しいかな…

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