第329話 料理審査、結果発表
という訳で、やっと審査員達の試食(?)が始まり…
一口食べては何かを考え、また一口食べては手元のシートに記入していく。一般的に思い浮かぶような、各審査員が一斉に同じ料理を食べて、その都度本人に評価を伝えていく…といったスタイルとはちょっと違うらしい。
でもこのやり方だと、それぞれの料理に対するコメントが出ないんじゃないか?
「えー…疑問に思っている人も多いと思うので、一応補足しておきます!!! 料理審査ですが、出場者ごとに料理を食べて審査員からその都度コメント…という有りがちな形式は不採用とさせて頂きました!!! 何故って、ぶっちゃけ審査員が素人なので、細かい評価も専門的なコメントも出来ないからでぇぇぇす!!!!」
何となく分かっていたけど、実に身も蓋もないことで…
とは言え、料理部の顧問はともかくとして、只の部員がそんな芸当を出来るとも思えないし…準備会の連中なんかもっと無理だろうからな。
そういう意味では、個人の感想を数値化して、総計を出すくらいしかやれないのかもしれない。
「…こういうときって、プロの一人くらい呼ぶもんじゃないの?」
「…プロならいる。味お…」
「…いや、あれコスプレだから」
「取り敢えず無言なのはアレなんで、少しくらいはコメントを聞いてみましょうか!!!! 先ずは一番頼りになりそうな…」
みなみんがマイク片手に近付いていくのは、この場で唯一の教師…料理部顧問の武田先生。ちょうど誰かさんのサンドイッチを食べている真っ最中のようで、少し渋い顔をしているような?
果たしてあれをどう評価するのか…俺もちょっとだけ興味があったりして。
「武田先生は、楠原さんのサンドイッチを攻略中ですね!!! 評価としてはどうでしょうか!!??」
「うーん…そ、そうねぇ…素材の味を生かしてるかな?」
「そのままっすね」
まぁ、せめて少しでも調理したものを挟めば、まだ言い様はあっただろうが…それは全く無かったからな。
ハムとかチーズとか、そのまま使えるものを突っ込んだだけの素材100%。
流石にあれと比べたら、俺でも、もう少しまともな物を作れると思う。
「おっとぉぉぉ、遂にハンバーグへ手を伸ばす審査員が現れましたぁぁぁ!!! まるで示し会わせたように、皆さん一斉に手を伸ばし始めましたねぇぇ。さぁ、感想は果たしてぇぇぇ」
「う、美味ぁっ!?」
「な、何これっ!? こんな美味しいハンバーグ初めて食べたっ!!??」
「凄い!! どうやったらこんな風に…」
「ちょ、これその辺のレストランなんか目じゃないでしょ…」
審査員がどちらのハンバーグを食べているのか分からないが、その反応は間違いなくここまでで最大レベル。
とは言え、沙羅さんの料理を毎日食べている俺ですら、美味しくて毎回感動してしまうくらいだし…審査員がこういうリアクションになってしまうのも仕方ない。
勿論、あれが真由美さんのハンバーグだったとしても同じ事。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ、さ、薩川さんの手料理ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「くっそぉぉぉぉぉぉぉ!!!! 審査員とは言え羨ましすぎるぅぅぅぅぅ!!」
「男子審査員に殺意の波動がメラメラとぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「し、死ぬまでに一度、せめて一度は食べたいぃぃぃぃぃぃ!!!」
審査員が美味いと騒げば騒ぐほど、観客も違う意味で大騒ぎになっていく。でも俺としては、お前らには絶対に食べさせねーぞと声を大にして言いたかったり。
そもそも、審査員の中に混じってる男子連中ですら、沙羅さんのご飯を食べさせたくないというのが俺の本音なのに…って、いくらなんでもそれは心が狭すぎるか?
「むふふ…それを毎日食べてる男子がここに居ますよーって言ったらどうなるんだろうねぇ?」
「一瞬で会場に居る全男子を敵に回すだろうね。そして沙羅も一瞬でガチギレして、次の瞬間には阿鼻叫喚の図…と」
「いや、あの、夏海先輩…」
ワリと冗談になっていないので、あまり不吉なことを言わんといて下さい。
これ以上の予定外は、本気でノーセンキューなんですよ?
「一成、大丈夫」
「花子さん…」
安心をもたらすような満面の笑みで、俺を優しく見つめている花子さん。その笑顔は、もうこれ以上のトラブルなんか起きないよと言ってくれているようで…流石はお姉ちゃんだ、本当にありがた…
「一成に敵対するやつは、お姉ちゃんが全員潰す」
「………」
おう…これはあかんやつだ。
全然大丈夫じゃなかったです。
しかもお姉ちゃんの目はマジですね…
でも仮にそうなったら、絶対に沙羅さんも同じ事を言うだろうし…これは今日のプロポーズを殲滅戦のつもりで畳み掛けないと、今後の学校生活が安心出来なくなる可能性がありますよ。
「あぁぁぁぁ、味お…もとい!!! グルメに通じた謎のお爺さんが、遂にハンバーグへ手を伸ばしたぁぁぁぁぁ!!!! さあ、その反応はぁぁぁぁぁぁ!?」
みなみんの声に視線を向けると、ちょうど味お…もとい、お爺さん(?)がハンバーグを口にする直前。
そして口に含んだそれを何度か咀嚼した後、これでもかと言うくらいに目を大きく見開き…何度も瞬きを繰り返しながらハンバーグをじっと見つめて、慌てたようにもう一口食べた。
すると今度は、俯いてから身体を震わせて……震わせ?
まさか…あれは、まさか!!??
「う~~~~ま~~~~(自主規制)」
つ、遂に出たぁぁぁ!?
何故か上手く聞き取れなかったけど(謎の現象)、あれは間違いなく伝説のアレだ!!!!
しかも大きく開かれた口から、謎の光線と共に色々な物が一斉に飛び出して、空に向かって大きな虹を描いている…ような気がしたりしなかったり!!??
な、何を言ってるのかわからねーと思うが、おれも何を…
「一成、それ以上は禁止」
「はい、ごめんなさい」
すみません、ちょっと調子に乗り過ぎました。
深くお詫びしま…って、俺は考えていただけで、実際には何も言ってないよね!?
「それはお姉ちゃんだから」
「アッ、ハイ…」
これは深く突っ込んだらダメなやつですね、分かります。
ホントは分からないけど納得しておきます。
「な、何故でしょうか…わたしは今、お爺さんの口から何かが色々と飛び出す光景が見えたような……いや、すみません、何でもないです!!!!」
「えっと…私も見えたような、見えなかったような?」
「あ、それ私もです!!」
「えぇぇ…い、今の幻覚!? 何だったの…あれ?」
うーむ…やはりアレが見えたように感じていたのは、俺だけじゃなかったらしい。
多分皆も、みなみんも、観客全体も…アレが見えたような気がしているようで、一様に首を傾げている。
流石は伝説の爺さん…とんでもない芸当だ。
ところで激しく今更なんだけど…あれって結局誰なんだろう??
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side 楠原 豊
「いやぁぁぁ副会長さん、ナイスな映像ありがとうございますぅぅ!!! すみませんねぇぇ、某所でリクエストが出てまして…あ、カメラに向かって手を振ってあげて下さい!!!」
現在、ステージ上のスクリーンに映っているのはあの男…昨日本部テントにいた、確か生徒会副会長をやっているとかいう名も知らぬ男子。
見るからに冴えない、平凡そのものといった感じの、私にとって取るに足らない存在…であるにも関わらず、何故か「あの西川絵理さん」と仲が良いらしい。
全く…この私ですら、まだ満足に接することが出来ないというのに。
しかも西川さんに対して、妙に馴れ馴れしいあの姿…その点だけを取っても、実に気に入らない存在だ。
「…はぁ…さっきの副会長くん、可愛かったなぁ…」
「…あんた、相変わらずあんな感じの年下男子が好きだよね?」
「…いやいや、実際あの笑顔は反則だと思うよ? 確かにイケメンじゃないけど、私も思わずキュンと来ちゃいました」
「…でしょ!? それにね、さっき子供達と一緒に歌ってる高梨くんを見てたら…思わず抱き締めてあげたくなっちゃった!!」
「…へぇ…なるほどね。あの副会長くんは、そういう属性持ちに刺さるタイプなのか」
そして気に入らないと言えばもう一つ。
先程から、あいつのことで騒いでいる女子連中がいるということ。
子供に優しいだの笑顔が可愛いだの、それが一体どうした?
そもそも男にとって、可愛いなど誉め言葉でも何でもない。まして私の様な人間ともなれば、そんなもの…まぁ、あの男にはお似合いかもしれんが。
それに子供の一人や二人、手懐けるなど私にとっては造作もないこと。
所詮はガキの…おっと、いかんいかん。
私としたことがつい。
「はははっ…いやいや、一成くんも隅に置けないねぇ。これは沙羅も大変だ」
「薩川専務?」
先程まで、唖然とした様子でステージを眺めていた筈の薩川専務が、スクリーンを見ながら小さく笑いを溢す。
今の流れで、笑うような要素はどこにも無かった筈だが…いや、そんなことより。
「ん? あぁ、済まないね。取り敢えず、真由美の件はどうにもならないから、このまま様子見をすることするよ」
「あ、はい、それが宜しいかと存じます。と、ところで、その…」
「何かな?」
「薩川専務は…あの男子生徒をご存知なんでしょうか?」
これは私の勘違いかもしれないが…薩川専務は、スクリーンに映っている"あの男"を見ながら名前を呟いたような…しかも下の名前で。
「ああ、それは…」
そう言って、薩川専務が向ける視線の先には、やはりスクリーンに映ってる"あの男"。
小さい女の子を抱っこしながら、照れ臭そうにはにかんでいる冴えない平凡男。
まさか…本当にそうなのか?
「あのおと…じゃない、か、彼をご存知なんでしょうか?」
「おや? その言い方をするってことは、君も一成くんを知っているのかな?」
「えっ!? い、いや、その…昨日、少し顔を合わせただけですが…」
やはり薩川専務は、あいつのことを知っているのか?
いや、問題はそこじゃない!!
あいつを下の名前で呼んだという事は、かなり近しい間柄ということになるのではないか!?
「なるほどね。確かに私達は…おっと、済まないが、彼の話についてここまでにさせてくれ。詳しいことについては、年末のパーティーで改めて発表させて貰うから」
「は、発表ですか!?」
「うん。かなり重要な話になるし、ここで安易に話すような内容じゃ無いからね」
「か、畏まりました…ではこれ以上のことについては、そのときを待たせて頂きます!!」
年末のパーティーで発表だと!?
なんだその意味深すぎる話は!?
そもそもあのパーティーは、我々佐波グループが一堂に会する重要な席…そこで発表するような話となれば、それ相応に重要な内容である可能性が高い!!
まさかそんな話に、あんなやつが!?
…いや待て、流石にそれは有り得ない。寧ろ、あいつの親や親族が関係していると考えるべきだ。
だがそうなると、あいつの親族は薩川専務に近しい存在であるということに…まさか西川さんともそういう繋がりなのか?
それなら昨日のアレも、一応は納得が…いやいや、まだ何も分かっていないのに、そこまで考える必要は無いだろう。
とにかく今重要なことは、あの男が薩川専務にとって近しい存在である"らしい"ということ。しかもパーティーに出席するのであれば、もう一度顔を合わせる可能性もゼロではない。
となれば…誠に遺憾ながら、あいつとの接し方に気を付ける必要があるのか。
しかもそうなると、昨日のアレもマズかったということに…
面倒だが仕方ない、次に会うことがあれば、適当にフォローでも入れておくしかないか。
全く…どこまでも気に食わない…
やはりあいつは、気に入らない存在だ…
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「そろそろ計算が終わると思うから、もう少し待ってて下さいね~~~!!」
味お…爺さんが色々とかましてくれた(?)料理審査も全て終わり、後は審査結果を待つだけに。
二人の料理を食べた審査員達の反応は、俺の見た限り差を感じない。だから結果も、かなりの接戦になっている可能性が高い。それこそ、誰か一人の好みの差で順位が簡単にひっくり返るくらい。
そして今回の料理審査は、ここまでのと違い点数と順位が発表される。つまり素人採点とはいえ、沙羅さんが真由美さんにどこまで迫れたのか?
その結果が、一応の目安とはいえ示されるということになる訳だ。
「沙羅と真由美さんのツートップは間違いないとして、どっちが上か…」
「ですね。でも正直言って複雑ですよ…薩川先輩は優勝を目指してた訳じゃないのに、いつの間にかそういう流れになっちゃったような…」
「それは嫁の母親が強すぎるから仕方ない。あれに勝つなら、それは優勝することと同義」
「そうね。でも真由美さんの条件に対する答えは、優勝という結果だけじゃダメでしょうから…」
「えっ!? 優勝じゃダメなんですか!?」
西川さんの指摘を聞いて、驚きの表情を見せたのは藤堂さんと立川さん。反対に花子さんと夏海先輩は冷静な様子…やっぱり気付いてたか。
ちなみに雄二と速人も、何となくでも気付いていた感はある。
「嫁の母親は、ミスコンの成績で自分に勝てだなんて一言も言ってない」
「ええ。真由美さんが設定している沙羅の勝利条件は不明です。なので、例え優勝しても安心は出来ませんね」
「そんな…それじゃ、どうやって薩川先輩は真由美さんに勝てば…」
「薩川先輩は、そのことに気付いているんでしょうか?」
「沙羅さんは気付いてるよ。でも…それでもやるしかなかったから」
俺がこうして気付ているのに、沙羅さんが気付いてない訳がない。
それに例え条件が曖昧だったとしても、俺との生活を賭けにされたら、沙羅さんはこの勝負を受けるしか選択肢が無かっただろうし。
「高梨くんとの生活を邪魔するなら、例え親が相手でも沙羅は引かないからね」
「あー…そうですね。普段は冷静な薩川先輩も、高梨くんのことになると…って、ありゃ? 未央ちゃん…」
立川さんの一言に皆の視線が俺…正確に言えば未央ちゃんに集まる。
もちろん俺は最初から気付いていたが、実は未央ちゃんはお休み中…沙羅さん風に言うなら、お寝んねの真っ最中だ。
今は周囲の騒ぎも落ち着いているし、しかも未央ちゃんはおやつを食べた後。それに、元々お昼寝の時間も近かったようなので…となれば、こうして限界になってしまうのも仕方ない。
残念ながら、俺は角度的に未央ちゃんの寝顔を見れないが…それでも小さなお手々が俺の上着をぎゅっと握っていて、その仕草が可愛くて仕方ないのですよ!!
「ふふ…本当に可愛らしい寝顔ですね。できれば、私も抱っこさせて欲しいくらいです」
「か、一成、交代が必要ならいつでも言って。お姉ちゃんが…お姉ちゃんが!!」
「はぁぁぁぁぁい、お待たせしましたぁぁぁぁぁぁ!!! 結果が出たようなので、早速発表に移らせて頂きます!!!! 先ずは皆さん、スクリーンにご注目ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
デデデデデデ…
折角の和やかな空気感を切り裂くみなみんの叫びと、スピーカーから流れ出す"いかにも"なBGM。
そしてスクリーンには「結果発表」の文字が現れて、出場者達も、客席の観客も、そして俺達も…固唾を飲んでその画面を見守る中、表示が切り替わったその瞬間!!!!
1位 No.9 薩川沙羅 100点
1位 No.10 まゆ 100点
満点で同点!!??
「おおぉぉっとぉぉぉぉぉぉ!!! 何と親子対決は、同点引き分けの満点首位だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! これは凄いぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
客席を煽るみなみんの叫び声に、客席から大きなどよめきが溢れ出す。
でも俺としては、驚きよりも嬉しい気持ちの方が強い。だって沙羅さんは、一番得意である「俺専用料理」を封印して同点を掴んだのだから。
つまりそれは、完全に真由美さんと同じ土俵に立った上で引き分けたということ…だからこれは、実質的に勝ったようなものだ!!!
「満点で引き分け!?」
「えええ!? こ、これってどうなるんでしょうか…」
「点数では引き分けだけど、嫁は本当の得意料理を使わなかった」
「そうだね。だから心情的には、勝ったと言いたいところかな?」
とは言え、この結果を真由美さんがどう思っているのか…例え「本当の勝負」に影響しない結果であったとしても、娘が自分に並べたことは素直に喜んでくれるんじゃないかと思ったり。
「では、早速コメントを頂きましょう!!!! 先ずは真由美さん、この結果は如何でしょうか!!??」
「んふふ~、まさか沙羅ちゃんと引き分けになるなんてねぇ…でも不思議はないかな? 最近の沙羅ちゃんは、料理の腕が目に見えて上達してるし」
「おっとぉぉ、そうなんですね!!?? では薩川さんの方からもコメントを…」
「満足いく結果ではありませんが、同じ条件で引き分けたのであれば及第点でしょう。そもそも、私はかず…」
「はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!! コメントありがとうございましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
最早パターンと化してきた、みなみんの大声による沙羅さんコメント強制終了。
インタビューする度にイチイチ同じパターンを繰り返しているし、そろそろ観客も気になってるんじゃないのか?
「沙羅と真由美さんの結果もそうだけど、私としては最下位の方が面白くてしゃーないわ」
「あれは…まぁ仕方ないわね」
確かに西川さんの言う通り、寧ろあの内容で最下位にならなかったら逆に驚き。それこそ不正まで疑ってしまう。
だからスクリーンに表示されている結果も当然の話で、上から順に眺めていけば、一番下に表示されているのは勿論…
「10位 No.8 楠原玲奈 20点」
完全に予想通りですな…うん。
「9位との差が30点以上なんて、いくらなんでも凄すぎですねぇ…ぷぷぷっ」
「そもそも、あの女は料理をしてないから当然」
9位の人が52点だから、正確には32点差もあることに。でも俺からすれば、調理を全くしていないのに20点も取れたことの方が驚き。
各審査員が1点ずつ入れたとしても、まだ数字の方が大きい訳で…つまりそれ以上に点数を付けた人がいることになる。
「ちょっと!!!! 何で私がダントツで最下位なんですか!!!! これは納得いきませんよ!!!!」
案の定、こんな当たりの結果で不満タラタラなのが約一名…猛然とみなみんに食ってかかるタカピー女。でも驚きなのは、恐らく負け惜しみで騒いでいる訳じゃないんだろうから…多分、本気で理解していないんだろうな。
ある意味凄いわ。
「うええええぇ、私は審査員じゃないので、言われても困りますぅぅぅぅぅぅ」
「ああ、そうですか!! それでしたら、今すぐ審査員に…」
みなみんの身体を激しく揺すりながら、タカピー女がそこまで言った瞬間…突然スクリーンの映像が切り替わる。
画面に映し出されたのは「楠原さんの審査について」との大きな字で見出しで、 それに続けて…
「素材の調理がなかった為、採点できない項目が多数存在した結果です」
…とまぁ、シンプルな理由がハッキリと。
当然だな。
「調理って…ですからサンドイッチを作ったではありませんか!!!」
「えーとですね…普通は焼いたり煮たり色々するもんですよ? でも楠原さんは、材料をそのまま使っただけですよね?」
「そんなこと、ルールには一言も書いてないでしょう!?」
「ルールって…あの、ちなみに調理って言葉知ってます?」
いい加減ウンザリと言わんばかりに、辟易とした様子のみなみん…と、他の出場者の面々。
ちなみに沙羅さんと真由美さんは最初からアウトオブ眼中で、さっきからこっちを…俺に抱っこされてお寝んね中の未央ちゃんを見ながら、柔らかい微笑みを浮かべている。
だから天使の寝顔がしっかり見えるように、身体の向きを変えてあげると、それはもう嬉しそうに満面の笑みで…
「ふおおおおおお、笑顔が美しすぎるぅぅぅぅぅぅ!!!!」
「女神の微笑みがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「薩川さん、こっち向いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「沙羅ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
そんな沙羅さんの笑顔に、ワンパタなまでの騒ぎを始めるバカども…もとい、観客連中。
あっと言う間に沙羅さんコールの大騒ぎが始まってしまっうが、もちろん当の沙羅さんはガン無視。そしてそんな客席の状況を、化けの皮が剥がれた"しかめっ面"で睨んでいるのが約一名。
「ふ、ふんっ!! そもそも料理など、私のような立場ある人間がやるべきことではありません!! こんなものは、家政婦や下働きの…」
「あの、楠原さん? それ本音なのかどうか知りませんけど、この会話は普通に観客席へ垂れ流しですからね?」
「…へ?」
ポカンとした表情を浮かべて、タカピー女がゆっくりとこちらに顔を向ける。
みなみんの言う通り、これまでの会話は全て据え置きマイクからダダ漏れ状態になっているから…遂にタカピー女が本性を現しましたよ。
「コ、コホン…す、少し説明させて頂きますが、そもそも我が家では、私が料理をしたいと言っても手伝わせて貰えないのですよ? ですが、私も女の嗜みとして、それでは困ると常々…」
「…何だよあいつ、何様のつもり…」
「…俺は最初から何となく分かってたけどな」
「…顔だけの典型的なタイプだったか」
「…金持ちなのを、ひけらかしたいだけかよ?」
そんなフォローにもなってない言い分を聞いたところで、信じるような観客がいる訳もなく…
俺の周囲にいる一般客からも、これまでに無かった明確なアンチ反応が見え始めてしまう。しかも遠くからは、ブーイングまで聞こえてきてるし…
これはもう、タカピー女のミスコンは完全に終わったな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
えー・・・・大変遅くなりました。
まさか二週間近く空けることになるなんて・・・
ツイッターで私の葛藤を見ていた方は既にご存知でしょうが、忙しくて時間が取れなくて話が進まなくなったところに、スランプが再発して全く書けなってしまいました。
例によって自分の違和感でしかないんだと思いますが、本当に書けなくて苦労しました・・・只でさえこの後の展開を考慮してルートを決めなきゃならないのに・・
話が先に進めばまた感覚を思い出すと信じて、今回はこのまま更新します。書き方に違和感があっても、話の進行は間違っていませんので思い切ることにしました。
という訳で、次回は質問コーナーとなります!
そではまた
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