第313話 小さな台風
開場と同時に入場列も順調に流れ出し、俺達のテントにも案内を求めてやってくるお客さんが増え始める。
他にも学校の関係者、そして明らかに沙羅さん目当てでやってきたバカ共は適時処理をして、一応は「順調」な滑り出しを見せていた。
そしてやっと入場待機列が解消され、俺達の業務も落ち着きを見せ始めた頃…
どこかで誰かを呼んでいるような、それも小さい子供の声が聞こえたような気がして…俺は周囲をキョロキョロと確認する。
すると駐輪場の方から、最近なかなか会う機会の取れなかった小さいお客さんが、こちらに向かってパタパタと走ってくる姿が…
「おにぃぃぃちゃぁぁぁぁん!!」
大きく手を振りながら、子供特有の少し危なっかしい様子で駆け寄ってくる可愛らしい人影。俺を「おにいちゃん」と呼んでくれる子供なんて一人しかいない。
でも見ていてハラハラするので、俺から迎えに行った方が良さそうだ。
「えーい」
俺が急いで駆け寄って行くと、毎度お馴染み、全身を使った人間ミサイ…もとい、強烈なタックルを仕掛けてくる未央ちゃん。勿論それは予想していた行動なので、タイミングを合わせて両手でそれを受け止めてから、勢いよく持ち上げてしまう。
「おりゃぁぁぁぁぁぁ!」
「きゃはははははははは、たかい、たかいぃ~!!!」
大声ではしゃぐ未央ちゃんを一頻り振り回してから、そのままヨイショと肩車。
最近なかなか会う機会を作れなかったから、こんな風に相手をしてあげるのは本当に久し振り。
「未央ちゃん、お母さんは?」
「んとね、あっちで、おともだちとおはなししてるよ~。おにぃちゃんがいたから、みおだけきちゃった」
未央ちゃんの小さい指が差している方向を確認すると、人集りの向こうに同い年くらいの女性三人組の姿が確認できて、確かに和美さんの姿もある。
向こうもこちらを気にしていたようで、俺と目が合うとペコペコと申し訳なさそうにお辞儀をしてくれた。俺もそれに会釈して返しておく。
「おにぃちゃん、あっち!! さらおねぇちゃんのとこ!!」
「あいよ~」
和美さんがこちらの状況を分かっているなら、このままテントまで連れていっても良さそうだ。
俺は未央ちゃんを肩車したまま本部テントへ向かい、こちらの様子を見守っていた沙羅さんが笑顔で出迎えてくれる。
「さらおねぇちゃん!!!!!」
肩車の状態から強引に腕を伸ばす未央ちゃんが危ないので、先ずは一旦抱っこし直してから…沙羅さんへパス。
「沙羅さん!」
「はいっ」
「えーい」
沙羅さんがそれを上手く受け取って抱っこすると、未央ちゃんはそれにしがみついて胸へすりすり。
「えへ~~~~、さらおねぇちゃんだぁぁぁぁ」
「ふふ…未央ちゃん、お久し振りですね」
未央ちゃんの頭を撫でながら、とても優しげな笑顔を浮かべる沙羅さん。
未央ちゃんも全身で抱きつきながら、時おり俺の方を見て「にひひひ~」と嬉しそうに笑う。
そしてその笑顔が…未央ちゃんのぷにぷに頬っぺが俺を誘惑してくるので、ついついそれを…
「おりゃ」
つんつん、ぷにぷに…
うーん、柔らかい…
「にゅぅぅぅぅ、さらおねぇちゃん、おにぃちゃんがいたずらっこ~!!」
「ふふ…一成さん、おいたは、めっですよ?」
「おにぃちゃん、めっ!」
「ははは、ごめんごめん」
未央ちゃんに笑顔で叱られてしまったので、頬っペたぷにぷには大人しく諦めて、頭をナデナデ。
沙羅さんの手に当たらないよう後頭部の方を重点的に撫でてあげると…未央ちゃんも気持ち良さそうに目を閉じて頭をすりすりと。
はぁ…可愛い…すっごく癒される。
でも改めて二人を見ると、沙羅さんが大人っぽいこともあって、未央ちゃんを抱っこしている姿が妙に絵になるというか…以前もそう感じたことはあったが。
「……はっ!? お、思わず見入って…」
「…な、な、何だよ…こ、この光景…」
「…ど、どう、どう見てもこれって…」
「…こ、子育て中の、若夫婦!!??」
「…だよねぇ」
「未央ちゃん!?」
「まりなおねぇちゃん!」
お客さんへの案内対応をしていて手を離せなかった藤堂さんが、慌ててこちらへ駆け寄ってくる。
沙羅さんに抱きついたままの未央ちゃんを微笑ましそうに見て、俺達と同じように頭を撫で始めた。
「和美さんは…」
「あっち!」
「あ、そうなんだ。来るって話は聞いてたけど、早かったね?」
「だって、おにぃちゃんと、さらおねぇちゃんに、はやくあいたかったんだもん!」
未央ちゃんが満面の笑みを浮かべて、沙羅さんに「ね~」っとすれば、同じく満面の笑みで「ね~」っと返す沙羅さん。
それを見て、きゃっきゃと騒ぎながら、嬉しそうに沙羅さんの胸に抱きついてすりすりと…もう完全に甘えまくってる。
「み、未央ちゃん、薩川先輩が大変だから、おねぇちゃんの方に」
ただ、藤堂さんはそんな様子を申し訳なさそうに眺めていて、未央ちゃんを引き取ろうと手を伸ばす…が、当の未央ちゃんはそれを嫌がるように、余計に沙羅さんへしがみついてしまう。
「大丈夫ですよ、藤堂さん。私は馴れてますから」
「えっ!?」
藤堂さんはかなり驚いた表情を浮かべて…何故か俺の方を見た?
おい、ちょっと待って、それは一体どういう意味でしょうか!?
「子供達と遊ぶ機会もそれなりにありましたから、こういうこともしょっちゅうでした」
「…あっ、そ、そうですよね!? 高梨くん、ゴメンね…」
自分の勘違いに気付き、真っ赤になって小さくなってしまう藤堂さん。
失礼しちゃうわプンプン!!
…って、流石に怒るようなことはしないが、普段、俺はどんな風に思われているのか…かなり不安になってきましたよ、これ。
「さらおねぇちゃん、おっぱいおっきい~。ままよりおっきい…」
「ふふ…未央ちゃん、くすぐったいですよ」
もう沙羅さんに完全ベッタリな感じで、それこそこのまま密着して、眠ってしまいそうにも見える未央ちゃん。どことなく夢見心地の様な。
でも…俺もその気持ちは良く分かるんだよね…
何故って、沙羅さんの胸は天国だと言うことを、この世で唯一知っているのは俺だからな!!
「…お、おいおい、何だよ、あの美人…」
「…おっしゃあ、来て早々に薩川さんを見れるなんてラッキー!!」
「…はぁ…女神様ぁ…」
「…癒される」
「…普段はキリッとしてて、子供には優しいとか…もう理想過ぎるわ」
「…マジでお近付きになりてぇ…」
「…声かけてみっか?」
「…バッカ、今はマジーだろ」
「か、一成…その子…なに?」
いきなり後ろから声をかけられて振り向くと…そこにはいつの間に来ていたのか、上坂さんと一緒に職員室へ行っていた花子さんの姿…上坂さんが見えないから、一人で帰って来たようだ…冷静な花子さんにしては珍しく驚いた様子で、目を丸くしながら呆然と未央ちゃんを見ている。
あ、そういや花子さんは、まだ未央ちゃんを…
「えーと、未央ちゃんっていって、藤堂さんの従姉妹で…」
「……」
夢遊病のようにフラフラとしながら、ゆっくりと沙羅さんに…正確には未央ちゃんに、近付いて行く花子さん。
手の届く距離まで近付くと、相変わらず驚きで目を丸くしたまま、じっと未央ちゃんを眺めていて…
「…?」
未央ちゃんも不思議そうにキョトンとしながら、花子さんと見つめ合う(?)
それにしても、花子さんの様子が…?
「おねぇちゃん、だぁれ?」
「っ!!??」
まるで雷に打たれたように、花子さんの表情が驚愕に染まる…って、何事!?
「未央ちゃん、このお姉ちゃんは、花子さんって言うんですよ?」
「…はなこおねぇちゃん?」
「はぅっ!?」
追い打ちでクリティカルな強烈ダメージを受けた某戦士の如く、ヨコヨロと後退…しないで、寧ろ吸い寄せられるように距離を詰めて行く。
これって、まさか…
「み、み…未央…ちゃん?」
「なぁに、はなこおねぇちゃん?」
「ぐふぅぅ!?」
花子さんがガクリと膝から崩れ落ちて…とても嬉しそうに、幸せそうに、実に満足げな顔で…最後に謎のサムズアップを残しながら…って
は、花子さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?
……………
………
…
「いっやぁ、この子、マジで可愛いねぇ」
「うっひゃぁ…ぷにぷにぃ…」
「おっふ…こ、これは堪りませんな」
未央ちゃんを連れてテントに戻った俺達は、バタバタとやってきた皆(主に女性陣)から一斉に囲まれてしまう…正確には沙羅さんと未央ちゃんだけだが。
それに驚いた未央ちゃんが、慌てて沙羅さんにしがみついたものの…そんな様がまた愛らしさを奏でて、女性陣に余計な燃料を与える結果になる。
「おにぃちゃん、こっちきてぇ!」
「はいはい、どうした未央ちゃん?」
未央ちゃんの側に寄ってあげると、沙羅さんに抱きついたまま器用に上半身だけ動かして、俺の腕にもしがみつく未央ちゃん。
えーと…どういう体勢ですか、これ?
「うぉ、旦那が邪魔をする!?」
「高梨くん、そこに居たらラブリー未央ちゃんが見えないじゃない」
「ねぇ…なんで未央ちゃんは、そこの夫婦に懐いてるの?」
「「「夫婦!?」」」
本来であれば突っ込みを入れるべき発言であるのに…筈なのに…嬉しいと思ってしまう自分がまた。
そして全く間違ってるとは言い切れないところも…ね。
「ふうふ? ぱぱとまま?」
「そうですね、意味としては…」
「さらおねぇちゃんがまま? おにぃちゃんがぱぱ?」
「えっと…」
「そ、それは…」
「さらおねぇちゃん、あかちゃんいるの?」
「えっ!?」
「ぶっ!?」
な、な、何でそういう話に!?
未央ちゃんは自分の知ってることを言っているだけだろうから、当然、その発言に他意も思惑もないのは分かってる。でもそれは未央ちゃん本人だけの話であって、聞いている野次馬な方々には、もはや格好エサにしかならない訳で…
と言うか…
これ、どうやって対応すればいいの!?
「みおしってるよ。あかちゃんがいると、ぱぱとままになるんでしょ?」
「えっと…」
沙羅さんが少しだけ笑顔を崩し、困ったような視線を俺に送ってくる。
確かに、子供が出来て、初めて父親と母親になる…未央ちゃんの話は決して間違ってない。
でもこの話をこれ以上掘り下げられると、目の前でスッゴい楽しそうに目を爛々と輝かせている「自称」乙女達に更なる燃料を与えることに!?
「そ、そうですね。ですが、まだ私とかず…おにいちゃんは、パパとママではありませんので…」
「そっかぁ…あ、じゃあじゃあ、おにぃちゃんとさらおねぇちゃんが、ぱぱとままになったら、みおにおしえてね。みお、あかちゃんとあそんであげる!」
「そ、そうですね。そ、そのときは、未央ちゃんにお願いしましょうか…ね、一成さん?」
「ふぉ!?」
な、何故このタイミングで俺に話を振るんですか!?
とは言え、沙羅さんだって未央ちゃんの可愛いお話を無下にする訳にはいかずに、こうして恥ずかしそうにしながらも何とか応対している訳であって…俺だけが逃げるのは情けないか!?
「こ、これは面白い…不謹慎だと分かっていても面白い…ぷぷ」
「うふふ、いい話題に目をつけたねぇ、未央ちゃん…」
「さ、薩川さんが困ってる…珍しい!」
「あ、あの受け答えは、薩川先輩って…」
「…俺、辛くなってきた」
「…奇遇だな…俺もだ…」
「あ、ど、どうすれば…ね、ねぇ花子さん…」
「………」
「花子さん!!」
「…はっ!? 未央ちゃんどこ!?」
「おにぃちゃん、みおに、あかちゃんだっこさせてね?」
「わ、わかったよ、そのときは、えっと、未央ちゃんにお願いする…ね?」
「うんっ、やくそく!!」
はしゃぐ未央ちゃんに、何とか体裁を整えて冷静を装いながら答えを…でもハッキリ言って、とても居たたまれない気持ちです。そしてニヤニヤを隠そうともしない皆さんが…ええい、笑うなら笑え!!
これはあくまでも子供に…未央ちゃんに合わせて言っただけだ!!
そりゃ結婚すれば、いつかはそういう話にもなるだろうけど、それもまだまだ先の話であって…
と言うか…
俺はまだ高一なんですけど!?
なんでこんなぶっ飛んだ話をしてるの!?
「さらおねぇちゃん!! おにぃちゃんが、あかちゃんだっこさせてくれるって!!」
「ふふ…そうですか。良かったですね、未央ちゃん」
「うん!! ねぇねぇ、さらおねぇちゃん。いつ、ままになる?」
「えっ!? さ、さぁ…いつでしょう?」
「おにぃちゃんならわかる?」
「う、うーん…ど、どうでしょうか…ね、一成さん?」
「ぶっ!?」
「「「………」」」
沙羅さんだって、答えに困っているのは見れば分かる。分かるんだけど!
そんな恥ずかしそうに、しかも上目使いで俺を見て、話の内容が内容で!?
オマケに周囲の視線が…
野次馬根性丸出しの好機に満ち溢れたものと、嫉み丸出しのもの…色々と。
こんな居たたまれない気持ちになったのは、本当に久し振りですよ…
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「すみません、お騒がせしました」
「まったね~」
あの後直ぐにやってきた和美さんに抱っこされて、ご機嫌な様子で帰っていく(正確には校舎に入っていく)未央ちゃん。
最初は沙羅さんから離れたくないとごねたものの、お菓子に釣られてアッサリと。
まぁ…そんなところも子供らしくて微笑ましいことではあるが。
ちなみに、和美さんは知り合いのママさん達と回るんだそうな。
可愛らしい台風の目が無くなってしまい、テント内は火が消えたように静けさを取り戻してしまう。こうなってしまうと、逆に物足りないような気がしないでも。
「花子さん、大丈夫か?」
「大丈夫。ちょっと衝撃を受けただけ」
未央ちゃんが行ってしまい、明らかにガッカリした様子の花子さんに声をかける。
でも、あれを「ちょっと」と呼ぶのは、だいぶ無理があるような…
未央ちゃんの可愛さにやられたのか、「はなこおねぇちゃん」の衝撃が強すぎたのか、あるいは両方か。
…多分、両方だな。
「心配しなくてもいい。あれは単に萌えただけだから、一成とは意味が違う。私の姉弟は一成だけ」
何故か「お姉ちゃん笑顔」で俺に優しく微笑む花子さん。
えーと…俺が心配したのは「そこ」じゃないんですが。
でも、それをわざわざ訂正するのはヤボなので、そういうことにしておけばいいか。
「と、とにかく、大丈夫ならいいよ」
「子供が可愛いと思ったのは初めて。だからそういう意味でも驚いただけ」
「そっか」
確かに、俺も未央ちゃんと出会うまでは、子供が可愛いなんて思う機会はそもそも無かったから…多少は気持ちが分かるような気がしないでもない。
「…はぁ…やっぱ女の子って可愛いよねぇ」
「あのくらいの子が一番可愛いと思うよ。素直で無邪気だから」
「そうですね、でも妙に薩川先輩に懐いてませんでした?」
「どうでしょうか? 一成さんにもしっかり懐いていますし…」
「あ、でも、私が抱っこしているときより甘え方がストレートだと思いますよ。和美さんに甘えてるような感じもしますし」
「そ、そうですか?」
照れ臭そうにしながら、それでも沙羅さんは満更でもない様子。もともと子供と遊んだり、触れ合うことに慣れている沙羅さんだから…
未央ちゃんが可愛いという面も当然あるだろうが、そもそも、普通に子供が好きなんだろうし。
「ふぅ…やっと戻ってこれたよ。あの先生は話が長くて…おや、何かあったのかい?」
そんな沙羅さんを眺めていると、来客対応で職員室へ行っていた上坂さんが戻ってきた。沙羅さんを囲んでワイワイやっている皆の様子を見て、不思議そうに首を傾げる。
「お疲れ様です。いや、ちょっと知り合いが来てただけですよ」
「ああ、そうなのか。ところで案内対応の方はどうだい? 落ち着いてきたなら、そろそろ各担当に分かれてもいい頃だと思うが」
「そうですね。もう案内の方も並ぶことはないでしょうし…」
「うん。あ、そ、そう言えば、今日は…その」
相変わらず、話題による波が激しいと言うか、あからさますぎて分かりやすいと言うか…
突然こんな風にまごまごし始めたら、何を聞きたいのか直ぐに分かってしまう。
普段が堂々としていて頼り甲斐のある人なのに、西川さんにはこんな姿ばかり見せていたから、印象が弱くなったんだろうな…きっと。
「もう直ぐ来ると思いますよ。この後、夏海先輩の試合応援がありますから」
「そ、そうか…残念だけど、私はそれに行く訳にはいかないからな…」
俺達が応援に行く(視察名目)以上、人員の関係で、上坂さんにはどうしても本部待機を兼ねたテント対応に残って貰うしかない。
これは本当に申し訳ないとは思うが…
「すみません…」
「いやいや、いいんだよ。私の分まで、夏海の応援を宜しく頼む…って、一度も試合の応援に行ったことのない私が言えることじゃないが」
「いえ、上坂さんも応援しているって、ちゃんと伝えておきますよ」
「お前の応援は要らないって言われそうだけどね」
「ははっ。でも何だかんだ言って、内心では喜んでくれると思います」
「そうだな。あいつは照れ屋だから、そういうところは素直じゃないし」
確かに夏海先輩は素直じゃないから、上坂さんのこれには反発するだろうけど…
でも幼馴染み故の気軽さというか、普段は素っ気なく見えても深いところでは理解しあって繋がっているというか。
…お互いがちゃんと理解し合うことが出来ていれば、最低限でもこんな感じになれたんだろうか…
「…高梨くん、どうしたんだい?」
「…いえ、何でもないです…って、噂をすれば、何とやらってやつですね」
昨日と同じように、何故か門の間にピッタリと嵌まったように停車する、不自然なまでに長く白い高級車。
助手席が開くと、やはり昨日と同じように、黒いスーツをビシッと着こんだ男性が慌てたように降りてきて、後部座席のドアを開く。
そこからゆっくりと現れたのは勿論…
「に、西川さん…」
上坂さんが唖然とした…いや、正確に言えば、昨日この光景を見ていた一部を除いて、皆が驚きの眼差しで見守る中、流れるように優雅な仕草で、颯爽と高級車から降りてくる西川さん。
…と、それを真似たように…全然出来てないが…ぎこちないコミカルな動作で降りてきた立川さんと、全く意に介さずスタスタと降りてくる雄二。
どんな光景だよこれ…
と言うか、今日は一緒に来たみたいだな…
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やっぱり試合までは届きませんでした!
どうしても未央ちゃんを出したかったので…
ミスコンでみなみんが司会なので、予定変更して先にキャラ紹介入れておきます!
深澤 南(ふかざわ みなみ)
身長 155cm(平均チョイ下)
体型 身長のワリにスタイルは悪くない(あくまで悪くない…くらい)
髪型 短いタイプのあざといツインテール
2年生(進学コース)で、沙羅達とはコースが同じでもクラスが違う。
放送部に所属していて、圧倒的なノリの良さとトークの上手さで実質的なエース(?)に君臨。
愛称は「みなみん」、合言葉は「みんなのみなみん」
ちょっとしたマスコットキャラクター的な存在で主に男子達から人気がある。ただし、どちらかと言えばノリ重視の人気が強い。
体育祭の一件もあり、一成と沙羅の関係については比較的早めに気付いていた。
だが元生徒会長の上坂から口止めをされていたことや、何よりも余計なことをして沙羅を敵に回すことのリスクを考えた結果、自分が楽しむ範囲に抑えることに。
独自の情報収集網を確立させるために、「みなみんちゃんねる」という個人ブログを作成。そこからタレコミが可能(タレコミ内容はみなみんに直接送られる為に他のユーザーから見れない)になっていて、実は学校内でもトップクラスの情報通でもある。
ちなみに学祭中は、それに送られてくるタレコミを使って放送を盛り上げる予定でいたが、一成と沙羅がやらかしたことで情報がそれ関連に集中してしまい苛々していた。それが当日の放送に現れて、あんな暴言に繋がってしまう。
なお余談として、優秀な情報提供者には、みなみんから直々にコードネームが与えられるという名誉がある。
以上です。
次回は、試合中…くらいまでは行けるかな。
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