第29話 友達に
「それじゃ行こうか。結構時間使っちゃったからいつもより遅くなっちゃったけど。」
「今朝は生徒会の仕事はないので、今からでもまだ充分大丈夫ですよ。」
「俺の方はギリギリでも平気なんで、まだ大丈夫ならのんびり行きましょう」
とりあえず急ぐ必要がないなら、ゆっくり行けばいいよな。
話もしたいし、何よりこんな幸せな時間はギリギリまで楽しみたい
「えーと、夏海先輩の話でしたよね?」
「何だっけ?」
「確か、会長のお話ではなかったですか?」
あぁ、そうだそうだ。
というか、沙羅先輩は話をしっかり聞いてたんだな。
「そうだ、大地の話をしてたんだっけ。と言っても別に特別なことはないのよ。大地とは幼馴染みってだけだからさ。それ以上でもそれ以下でもないってやつかな」
「そうなんですね。なら沙羅先輩とも友達な感じなんですか?」
「会長とは生徒会に関わることの話をするくらいですね。私がお友達だと思っている男性は高梨さんだけですから」
うぉ、こんなにストレートに言われると照れ臭いな…
夏海先輩が、意味深な視線をこちらに寄越してるが?
しかし先輩は完全に復活したな…沙羅先輩って呼ぶと凄い嬉しそう…
「沙羅は、大地も含めて生徒会メンバーでも事務的な応対しかしてないからね。だから高梨くんは安心してね」
「は、はい?そうなんですね」
えーと、先輩は生徒会では敵を作るようなことをしてないから心配するなって意味かな。
さすがに生徒会は心配してなかったけど、大丈夫ならそれでいい
「しかし、まさか沙羅が男友達を作る日がくるなんてねぇ。前に相談されたときに、相手が男だって聞いて信じられなかったよ」
「私はそもそも男性と関わることを避けていましたからね。もっとも、今でも高梨さん以外の男性と関わる気は全くありませんけど。」
なんか、沙羅先輩は俺に対してこうやってハッキリと言ってくることが増えたような気がする。
返答に困ることが多いけど、本音は勿論嬉しい
「えと…沙羅先輩にそう言って貰えて嬉しいです」
「ふふ…これからも仲良くしていきましょうね」
「おーい、まさか私が置いていかれるとは思わなかったぞ〜」
夏海先輩のツッコミが響く
俺も今のやり取りは恥ずかしかったです。
「えーと、夏海先輩は俺のこと前から知ってたんでしたっけ?」
「うん。と言っても大まかにしか聞いてないよ。前からお世話になってたってくらいかな。」
なるほど。
まぁ俺の話で細かい部分になると、嫌な話しか出てこないから別にそれでもいいよな。
「だから、これからお互いに色々わかりあって友達になって欲しいかな。私も高梨くんが気に入ってるから。」
「あ、ありがとうございます。 そう言って貰えて嬉しいです」
「高梨さんと夏海が友達になれて良かったです。これで、今日から三人で楽しくやっていけますね」
沙羅先輩が、嬉しそうに…楽しそうに言った。
沙羅先輩と知り合って、俺に二人目の友達ができた。夏海先輩も、本当の俺のことを知っても仲良くしてくれると思う。
だから、追々ちゃんと話をしていこう。
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学校が近付いてくれば、当然登校中の生徒も増える訳で…
沙羅先輩だけでも凄いのに、夏海先輩も凄い注目を浴びている。
…女子の方が多いような気もするけど
ただね…なんで二人は俺を挟むような並びで歩くんだろう…
間にいる俺が受ける視線が特別凄いのですが…勿論やっかみその他で。
俺みたいなやつ分不相応だって言いたいんでしょ。
言われなくてもわかってるよ。
「夏海先輩おはようございます〜」
「おはよ」
「夏海先輩今日もかっこいいです!」
「私は女なんだけど…」
確かに夏海先輩は女子にもモテそうな雰囲気があるな
「薩川先輩おはようございます」
「…おはようございます」
「薩川さんおは〜、今日も可愛いね」
「」
おお。ガン無視
「……おい、あいつなんだよ」
「……よくあの二人と歩けるよな、あんなツラで」
はいはい、そういうこと言われるのわかってましたよ。
今更気にしない…ってあれ?先輩ちょっと
「今、とても不快な寝言が聞こえましたが?」
「へ?」
え!?
あいつらに突っ掛かって行った!?
「性格の醜さが顔によく出ていますよ。私の大切な友人を批判するなど100年早いですね?」
「な……」
「……あいつ薩川先輩を敵に回してこれから大変だな」
「……夕月さんが見てる前で薩川さんを怒らせるとかアホすぎるだろ。ハブられるなあいつ」
「……それより友人って言ったぞ。薩川さんの近くに男がいるなんて」
「……友達だろう友達…友達だって言ってるから大丈夫、友達。」
何?
沙羅先輩と夏海先輩を怒らせると何かあるのか?
「沙羅~そのバカはもう終わりだから捨てときな~」
……なんか、周りの女子があいつらのことスマホで写真撮ったりひそひそ言ってたり、何かが起きてる気がする
「二度と私達の前に立たないで下さい。目障りです」
顔を青くしてる二人に、先輩が強烈な一言を残して戻ってきた
そして俺と目が合うと…笑顔ですね
「お待たせして申し訳ございません。つい聞き捨てならない戯言が聞こえてしまいましたので」
「あ、えと…」
「さあ高梨くん、さっさと行こう」
「…了解です」
なんだったのか聞けなかった
…その後、女神様と夏海先輩を怒らせたバカというレッテルの貼られた写真が、様々なコミニュティRAINを経由してかなりの生徒に渡っていたことなど、ぼっちの俺が知るよしもなかった。
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