第28話 またわからない気持ち

------------------------------------------


高梨さんが、夏海と無事に打ち解けられたようです。

夏海は基本的に人当たりがいいので、直ぐに仲良くなれるだろうと思っていました。


お友達同士が仲良くなれるのは嬉しいことです。


「じゃあ夏海先輩でいいですかね?」


…………え…私は…


「あ、夏海先輩、遅くなりましたけど」


夏海先輩……夏海先輩…


なんでしょう…お二人が凄く仲良くなったような…


……私の方が先に…


何を考えているのですか私は、お友達同士じゃないですか。

そんなことを気にするなんて、心の狭い…狭い………


…私は先輩としか呼ばれていないです。

夏海だけ…


いえ…呼ばれ方の違いなんて、人それぞれではありませんか

こんなことを考えてしまうのは…


私はまた自分の「よくわからない気持ち」が出てしまったと感じました。

いけません、こんなことを考えるなんて、私らしくありませんね…気を付けましょう


話が一段落したようです。

高梨さんがこちらを向きました。


「では先輩いきまし…先輩?」


……なんでしょう?


「あの…先輩?本当に…俺が何かしちゃいましたか…?」


……してませんよ?……でも……るい…です


「先輩?」


夏海だけずるいです!


------------------------------------------


ぷくー


……え???


先輩が…先輩が…膨れた!!!???


え?え?何!?何これ可愛い!?可愛すぎ!?


じゃなくて、怒ってる?何で急に?


------------------------------------------


え!?

何でこの子むくれてるの!?


それなりに付き合いがあるはずだけど、こんな顔見たことない…

っていうか、こんな子供っぽい仕草をする子だったなんて驚いた!


えーと…私に対してこんな顔したことないから…

絶対に高梨くんに関係してるはずなんだけど。


…高梨くんが絡むとこんな一面が見れるんだねぇ。


これは凄い、こんなの沙羅のファンクラブとか知ったら血の涙流すんじゃないかな?

おっと、今はそれより何が気に入らなかったのか…


高梨くんは別に変わったことをしていない、だから行動じゃないはず。

つまり何か言った?


私と高梨くんは自己紹介をしただけで、後は屋上の話と…高梨くんに言葉使いを普通にって…私のことは夏海と…


あ!


むくれる直前も…高梨くんは先輩って呼び掛けたよね


うそ…え…沙羅ったら、まさか妬いてるの?


------------------------------------------


えーと、どうしよう…可愛いんだけど、このままにする訳にも…


夏海先輩は何かわからないかな…え?


スマホの画面いっぱいに何か表示してる…な?・ま?・え?……名前?

先輩を指差してる…先輩の名前ってことか?


え?先輩の名前を呼べってこと?


「薩川先輩?」


無反応…いや寧ろ少し機嫌悪くなった?


でも名前は呼んで…あれ?まさか下の名前か?

いや…でも夏海先輩は呼んだし、いいのかな…


「沙羅…先輩?」


先輩が驚いた顔した…

効果あった?

ならもう一度。


「えーと、沙羅先輩?」


「はい!!何でしょうか?」


満面の笑みですよこれ…

正解ってことだよな。

夏海先輩がエア拍手してるし


そうか、夏海先輩だけ名前呼びにしたから、先輩を仲間外れにしたような形になっちゃったのか…申し訳ない


なら、これからは沙羅先輩って呼ばせて貰えばいいのかな


「すみません、事後承諾ですけど、これから先輩のこと沙羅先輩と呼んでもいいでしょうか?」


「はい、勿論です。うふふ…」


今日は新しい先輩の可愛い一面が見れた…

とにかく今後は気を付けよう


------------------------------------------


正解だったみたいね。


これは…そうかぁ、うん、それとなく探りを入れてみるか。


高梨くんも、この前の行動を見るに少なからず沙羅に思うところがあるだろうし。


沙羅は男に迷惑をかけられ続けているから、

私は可能な範囲で変な男を近付けないようにしてきた。


でもあの一件を見た以上、私は彼を信用してる。

あのときは高梨くんも沙羅と色々あって心理的にキツかったはずなのに、それを乗り越えて必死に守ってくれた。


それに、私も知らなかった沙羅に隠された一面を引っ張り出すこともできる存在。


沙羅の気持ち次第では、私は協力するつもりだ。


ちょっと楽しみが増えたなぁ…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る