第48話 初めての

「おはようございます沙羅先輩」

「おはようございます、高梨さん」


今日は二人で登校になった。

夏海先輩は、部活で朝これない日がたまにあるのだ。


ちなみに最近知ったんだが、夏海先輩はテニス部だったらしい…うちの学校は部活が強制ではないから、全く知らなかった…今までそんな話ししなかったし。


「今日は帰りまで天気が持つといいのですが…」


「え?」


そういえば、先輩は傘を持っている

こんなに晴れてるのに…


「天気予報ですと夕方前から雨とのことでしたが…そういえば、高梨さんは傘をお持ちではないのですか?」


「持ってきませんでした…でも、降る前に帰れるかもしれないし、何とかなりますよきっと。」


「そうですね、早めに帰ることができれば大丈夫でしょう。」


フラグを立ててしまったことを後悔したのは、最後の6時限目の授業中だった…


お弁当を食べているときも、一応晴れてたのに…


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ザァァァァァ…


結構降ってるんだよな…

でも強い雨って、少し待つと弱くなることが多いからとりあえず待ってみる。


………

………


ダメか…走るしかないかなぁ


「おや、高梨くんだったかな?どうしたんだ?こんなところで…」


現れたのは、まさかの生徒会長だった。


「会長。えーと、その節はお世話になりました。」


顔見知りとまでは言えないだろうし、どういう距離感で話せばいいのか迷ってしまった…


「いや、生徒会の仕事の意味もあったから気にしないでくれ。それより、こんなところで雨宿りということはないだろうから、傘でも忘れたのかい?」


「はい…朝は晴れていたので油断しました…」


「確かに朝の天気だけ見たら、雨が降るとは思わなかっただろうね。どうする?走って帰れるならそれも有りかもしれないが、もし何なら私の傘に二人で」


「会長…高梨さんに何か御用でしょうか?お話があるのでしたら私がお聞きしますが?」


生徒会長がいるんだから、沙羅先輩も帰宅時間になっていて不思議はないか。

ちょっと情けないところで出会ってしまった。


「いや、そんな、彼に難癖をつけている訳じゃないのだから割り込んでこなくても…」


「それは失礼しました。高梨さん、どうかなさいまし…あ、そうでしたね、本日は傘をお持ちではありませんでしたね。」


うぐ、その通りです…


「私もその話をしていたんだよ。しかし、薩川さんは知っていたのかい?」


「ええ、今朝お話ししましたので。」


すると、沙羅先輩が手に持っていた傘を少し持ち上げて、笑顔でこちらを見た


「さぁ高梨さん、傘が小さくて申し訳ございませんが、私と帰りましょう。」 


「!?」

生徒会長が、鳩が豆鉄砲をくらったような表情になった


「い、いえ、俺は走って帰りま」

「それは許しません。このまま高梨さんを一人で帰すなど、私が自分を許せませんので。」


あ〜、これは逆らえないモードだ…

こうなると先輩の言う通りにするしかない。

だって逆らうと…


「いや、二人で傘を使ったら沙羅先輩が濡れてしまいますから、俺は濡れても別に…」

「高梨さん、私は自分が雨で濡れるなど大したことではないのです。そんなことよりこの雨の中、高梨さんを黙って見送るような真似が私にできるとお思いですか?……それとも、高梨さんは私の傘に入るのがお嫌なので…」

「わかりました!すみませんお手数お掛けしますが一緒に傘に入れて下さい!沙羅先輩と帰れるのが嬉しいです!」


やっぱこうなる…

先輩、その悲しそうな表情はズルい…


「ふふ、では早く帰りましょうか。遅くなるほど雨が強くなるようですので。」


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………いや、私はまだここにいるのだが…

すっかり忘れられているねこれは。


しかし、夏海から聞いていたが、これは思っていたより衝撃が強いな…


本当にこれは薩川さんなのか?

似ている別人と言われても私は納得してしまうが。


あの薩川さんが男に笑いかけているだけでも驚きなのに、高梨くんに対してはこうも変わるのか…


……………いや、これは…そうだ、夏海に相談してみるか…


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「コホン…それでは二人とも、私は先に失礼するね」


あ、会長がいることすっかり忘れてた…


「はい…では会長、お疲れさまでした。」


凄い事務的な挨拶だな…いつもこんな感じなのかな…


「会長、お疲れさまでした。」


会長が傘をさして帰っていく。


「では、高梨さん、私達も帰りましょうか?」


先輩がどこか嬉しそうに俺を見ながら声をかけてくる。


そして傘を開き俺の横に立つが…

うん、やっぱり身長差があるから、先輩が傘を持つと大変だよな。


「沙羅先輩、傘は俺が持ちますね…」


先輩から傘を受け取り、二人の間で広げる

そして雨の中へ歩き出した。


「高梨さん、濡れないように近くに寄って下さいね?」


「はい、俺は大丈夫ですよ」


俺が傘を持ったのにはもう一つ理由がある。

先輩の方へ傾ける為だ。

当然俺の肩が濡れるが、そんなこと微塵も気にならない。


先輩に合わせて、ゆっくりと歩く


「……こうして、帰りもご一緒するのは初めてですね。」

「そうですね、俺は部活をやってないし、沙羅先輩は生徒会がありますからね…」


なんか…先輩と二人になるのは珍しいことじゃないのに、今日はどこか不思議な感じがしていた…

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