第47話 未央ちゃんと女神様

待ち合わせのコンビニで待っていると、元気な女の子の声が聞こえた


「あ〜〜!おにぃちゃんだぁ!」


久し振りの未央ちゃんだった。

未央ちゃんがこちらに走ってくるのを受け止める


「ど〜〜ん!」


「おっと!未央ちゃん久し振りだね」


「ぶ〜〜おにぃちゃんがきてくれないんだもん」


先輩達と待ち合わせるようになってから、時間が少し早くなってしまったからな…

未央ちゃんが俺を見上げて両手を差し出してくるので、そのままだっこしてあげる


「おはようございます、高梨さん。最近時間が変わったんですか?」


未央ちゃんのお母さんだ


「おはようございます。ええ、ちょっと時間が早くなってしまいまして。いつもこのくらいの時間です」


「そうだったんですね。すみませんコンビニで買い物をしてきますので…未央、こっちにきなさい。」


「いや!おにぃちゃんとまってる〜」


「あの、まだ少し時間に余裕があるんで、見てますから行ってきて下さい。」


未央ちゃんがほっぺたをスリスリしてくるので、俺もスリスリを返してあげる


「きゃはははは」


未央ちゃんはとても嬉しそうに笑っている


「もう…すみません高梨さん、お手数ですがお願いします」


「いってらっしゃ〜い」


ご機嫌だな未央ちゃん…


「おはようございます、高梨さん」

「おはよう高梨くん」


後ろから声がかかったので振り向くと、

二人が少し驚いた様子だったが、沙羅先輩はすぐに笑顔で未央ちゃんを見た。


そういえば、俺と未央ちゃんが一緒にいるの見たことあるんだっけ。


「おはようございますお二人とも」


未央ちゃんが、二人を見て首をかしげた。


そんな未央ちゃんを見た先輩が


「ふふ…おはようございます、私は、さつかわさらです。お名前を教えてくれますか?」


先輩が笑顔を浮かべて、優しく未央ちゃんに話しかけた

未央ちゃんが俺を見たので頷くと、元気に挨拶を返した


「さかしたみおです!よんさいです!」


「未央ちゃんですか。可愛いお名前ですね。私のことは、沙羅と呼んで下さいね」


「さらおねぇちゃん!」


「はい!仲良くして下さいね」


沙羅先輩も、子供には甘くなるんだなやっぱり。


「さらおねぇちゃん、だっこ!」


「はい、いいですよ。高梨さん、宜しいでしょうか?」


「はい、では宜しくお願いします」


未央ちゃんをゆっくり渡すと、そのまま沙羅先輩が抱えて抱っこの体勢を取る。


未央ちゃんの頭を撫でてあげると、目を細めて気持ちよさそうな表情をしている。

先輩も未央ちゃんの背中をぽんぽんとリズミカルに叩き始めた


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「…………………」


私は何を見せられているのだろうか…


沙羅が凄く優しい笑顔であの子を抱っこして、背中をぽんぽんしてる

高梨くんも、沙羅に抱っこされているあの子の頭を撫でて笑顔を浮かべている


………………


いや、一応ここも通学路で学校の生徒もいるのよ…危険な噂が出ても知らないわよ…


あ、これ橘くんにいきなり動画送ったらどういうリアクションするか面白そうだわ。

少し録画しておこう(笑)


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「あらあら、すみません、えーと」


「あ、沙羅先輩、未央ちゃんのお母さんです」


「突然申し訳ございません、薩川沙羅と申します。高梨さんとは親しくお付き合いさせて頂いております」


ん?間違ってはいないけど、微妙なニュアンスが…

沙羅先輩から降りた未央ちゃんが、お母さんと手を繋ぐ


「まぁまぁ!高梨さんの…そうでしたか、それで…あ、すみません初対面なのにいきなり未央を抱っこさせてしまいまして」


「いえ、こちらこそ突然お邪魔してしまい申し訳ございません。」


「いいえ〜未央の相手をして頂いてありがとうございます。それにしても、高梨さんとこんなに綺麗なお嬢さんが…」


あ、これは勘違いされてる気がする


「高梨さんは素敵な男性ですから、しっかりと捕まえておいた方がいいですよ」


「?はい、高梨さんとは今後も仲良く…」


「先輩、そろそろ時間が無くなりそうです!急ぎましょう 」


とりあえず誤解は今度解けばいいから、今はこの場を離れよう

夏海先輩がスマホで何か録っていたようなので、それも後で問い詰める


「あ、はい、そうですね。それでは失礼致します。」


「私達も、幼稚園に向かいますので失礼しますね。」

「おにぃちゃん、さらおねぇちゃん、ばいばい」


未央ちゃんが可愛く手を振ってくれる


「はい、さようなら」

「未央ちゃん、ばいばい」


俺と沙羅先輩も、手を振って返す


ふう、今度会ったらしっかり誤解を解かないと、とんでもないこと言われそうだな…


「では学校へ向かいましょうか? 」


「はい、そうですね。」


「ところで夏海?何故離れていたのですか?貴方も未央ちゃんと挨拶をすれば良かったではないですか?」


「いやいや、私はいいのよ。あんた達の邪魔なんて野暮なことはしないから。」


邪魔って、別に普通にしていただけなんだけどな?


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教室に入るといきなり数人から詰め寄られた


「高梨!!お前、薩川さんと子供をあやしていたって本当か!!」

「はぁ!?嘘だろ!!」

「えええええ、大問題だろそれ」

「子供!?子供って言ったか!?」


あー………面倒臭いなぁ…

そうか、夏海先輩もそんな感じで見ていた訳か…

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