第121話 積極的な沙羅さん
「一成さん、起きて下さいね」
…声が聞こえたような気がする。
でも撫でられているような感覚が気持ちよくて……このままもっと寝ていたい…
「ふふ…起きて下さらないのですか?」
撫でられる感覚が消えた。
残念だ…
「一成さん…お・き・て」
ぞくぞく
「ふぁ!?」
昨日に引き続き、耳にこそばゆい感覚で目が覚めた。
「うふふふ…おはようございます、一成さん」
はぁ…この起こし方は昨日もされたような。
「さ、沙羅先輩、この起こしか…」
「めっ!」
少し不機嫌な表情になったと思えば、いつもより少し強めに額を突つかれた。
「一成さん、私は誰でしょうか?」
「? 沙羅せ…じゃない、沙羅さんです。」
ついつい癖で、沙羅先輩と呼んでしまったのに気付いた。
それでいきなり不機嫌になったのか。
でも沙羅さんと呼ぶと、昨日のことがハッキリと思い出されてくる。
俺は本当に告白して、沙羅さんと…その…こ、恋人になれたんだよな?
「先輩と呼んだら、お返事して差し上げません。はい、もう一度です」
取りあえず、可愛く頬を膨らます沙羅さんのご機嫌を回復させる必要があるのだが、その前に…本当に夢じゃないよな?
「沙羅さん。その、夢じゃないですよね? こうして沙羅さんと呼べるってことは、俺達は…いや、夢じゃないとわかってはいるんです。でも、夢みたいというか」
は、恥ずかしい…自分で言ってて恥ずかしい。
夢じゃないとわかってるんだけど、嬉しすぎて夢みたいと言うか、自分が言っていることが支離滅裂になってきた。
そんな俺の様子を見た沙羅さんが突然動き出すと
ちゅ…
!?
少し顔を朱くした沙羅さんが、いきなり俺に軽く抱きついてそのまま頬にキスをしてきた。
俺は自分の顔が真っ赤になってしまった自覚がある。
離れた沙羅さんも真っ赤になっていた
「夢じゃないと、実感して頂けましたか?」
「は、はい…ありがとうございます」
朝っぱらから二人で真っ赤になって俯いてるとか、俺達は何をしているのだろう。
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「あーん…」
ぱくっ
もぐもぐ
いつもなら沙羅さんが朝食を用意してくれている音で目が覚めるんだが、昨日は帰りが遅かったことと、色々疲れていたようで起きれなかったらしい。
もう朝食も、俺の着替えも殆ど準備が終わっていて、それでも俺が起きてこなかったので沙羅さんが起こしてくれたようだ。
急いで顔を洗い、テーブルに着く。
今日は和食だった。
二人で朝食を食べながら、沙羅さんは頃合いを見計らい、いつものあーんを仕掛けてくる。
そうだ、忘れない内に朝のあれを…
「沙羅さん、あの…昨日と今日、俺を起こすときに…」
何と言っていいのかわからないので、伝わるかわからないが取りあえず話をしてみる
「申し訳ございません、一成さんの反応が可愛くてつい。」
どうやら俺が何を言いたいのか、わかってくれたようだ。
「あの…お嫌ですか?」
うぐ…そんな甘えるような声色で聞かれてしまうと嫌なんて絶対に言えない…
それに沙羅さんは楽しそうだったし、俺もあれをやられるの嫌じゃないし…
「一成さん、可愛い…」
俺の表情を見て考えを読まれたらしく、満面の笑みを浮かべた沙羅さんだった。
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午前中は夏休みの宿題を少し片付けることにした。
パーフェクト家庭教師がいるので、詰まって調べるという時間がないから非常に捗る。
そして昼食を食べて一息ついたころ、珍しく沙羅さんが俺を散歩に誘ってきたのだが
顔を朱くしてもじもじしている…
なにこれ可愛い。
何を言われるの?
「あの…ですね、私、お祖母ちゃんに一成さんのことを…」
…これはつまり、幸枝さんに報告をしたいと言うことだよな?
え、何て言えばいいんだ…改めて挨拶した方がいいんだよな?
あ、でも大丈夫だろうか?
真由美さんの話ではお父さんにはまだ報告をしない方がいいということだったが。
「俺は大丈夫なんですけど、お父さんは大丈夫でしょうか?」
「お父さんのことは説明しますから大丈夫です。お祖母ちゃんに、私が…初めて好きになった男性と…お、お付き合いすることに…」
声に出すと意識して恥ずかしくなってくるようで、ついに真っ赤になってしまった。
そして突然こちらに近寄り、俺の腕に顔を隠す。
「……私に恋人ができましたと、お祖母ちゃんに紹介させて下さい…」
小さな声で恥ずかしそうに呟く沙羅さんが可愛くて、我慢できずに抱き締めてしまう。
結局、お互い落ち着くまで暫く出発できなかった…
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