第144話 情報収集

沙羅達から話を聞いた翌日。

お父様から話を聞く前に、先に私の方で可能な限り調べた方がいいと判断し、個人的な付き合いのある秘書さんに連絡を取った。

この人とはプライベートな話もするし、私が山崎を忌諱していることを知っているので相談しやすいからだ。


知人から嫌な噂を聞いたと伝えると、山崎の会社と接点のある担当者達から話を聞いてくれるということになった。


そして二日後、早くも秘書さんから連絡があった。


「合コンですか?」


「はい。うちの新入社員が、山崎さんの会社に勤めている友人から懇親会に誘われたそうです。息子さんが主催しているようなのですが…ここだけの話、息子さんは参加者の顔をあまり覚えていないそうで、外部からの参加者も少しなら入れてしまうようです。内容も実質合コンのようで、話し合いなどしないから尚更わからないそうです。」


何を考えてそんなことをしているのかわからないけど、会社の人間を参加させて顔もろくに覚えないなんて…あの会社はどちらにしても長くないわね


「一つ報告で気になったことがあるのですが、参加者に未成年者もいるのではないかということに加えて…絵里さん、その、お持ち帰りと言われて理解できますか?」


お持ち帰り?

残り物かお土産のことならわかるけど、それならこんな風に聞かないわね

言い難いもので、持ち帰る…合コン…連れて帰る? え!?


「まさか…女性ですか?」


私の言葉を聞き、秘書さんがコクリと頷いた。正解だったようだ。


「息子さんは強制はしていないようですが、参加者同士でそういう流れになった場合、黙認…いえ、参加する男性には実質的に許可を出しているようです。だから女性も息子さんが集めてくるようですね。」


それはつまり、何かの目的の為に女性をエサにしている…と

…ゲス野郎が…っといけない、言葉使いが悪いですよ絵里。


「お金は取っていないようですし、体裁としては本人たちの自由という形をとっているようです。ですが、暗黙の部分があるとすればグレーゾーン的な売春斡旋とも…」


「ありがとう、とりあえずもういいわ。聞いていて虫酸が走る」


知らなかったとはいえ、こんなろくでもない屑男に言い寄られていたかと思うとぞっとするわ。


こうなってくると、可能なら目的と女性参加者をどうやって集めているかを知りたいわね。

いくら社長の息子とはいえ、高校生がそんなに女性を集めるなんてできるとは思えない。

となれば…後ろで支援している人がいるはず。

一番確率が高いのは父親…そして父親だった場合、黙認もしくは推奨しているということ。


「その新入社員がもう一度参加できないか聞いて貰うことはできますか? 取引先企業の極秘内部調査ということにして派遣する形を取れないでしょうか? もちろん絶対に無理はさせないように」


「畏まりました。ではその路線で打診しておきます。調査とすれば目的やその他、何かしらわかるかもしれませんね。ボイスレコーダーや撮影用のカメラも持たせる必要がありそうですか。」


あとは上手く行くことを願うのみ。

沙羅達から聞いていたより、もう一段きな臭くなってきたわ…


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タイミングが良かったのか、すぐに開催があったらしく日数は大してかからなかった。


そして報告を受けてみれば、きな臭いなんてものではなく…


今、目の前のTVには、懇親会とは名ばかりのバカ騒ぎ合コンが映し出されている


目的は微妙にハッキリしないものの、集められている参加者は山崎の会社関係者であることは間違いない…しかも若い人ばかり。


そしてこのときは、どこか取引先の会社の人物が参加していたらしく、山崎がそちらで接待している映像もあった。


「気に入った子は、無理矢理じゃなければ持ち帰りも大丈夫です。というか、簡単に持ち帰れるの集めてますから、好きにして下さいね」


おっと、これは重要な発言ね。

言い逃れさせないわよ


つまりこれは、取引先の人物に対する接待…と言えば聞こえがいいが、決して宜しくない接待。


ボイスレコーダーに入っていた音声には参加していた女性との会話も入っており、遠回しではあるが山崎の父親の斡旋があることを匂わせる発言が出た。

つまり山崎和馬は父親からの指示、もしくは指示ではなくても推奨、支援を受けて行っているということ。

例の婦女暴行の話も聞けたようで、やはり山崎が直接関わった訳ではなさそうだが、犯人に紹介したのは間違いないらしい。


そして一番の衝撃だったのが、女性参加者に高校生が混じっていたことだ。

山崎和馬から誘われたと、はっきりした証言が録音されている。

ただの合コンとして誘われたようだが、彼女達は山崎がお持ち帰りを男性陣に勧めていることを知っているのであろうか?

どういう繋がりかわからないけど、山崎に利用されているだけなら何とか助けてあげたい…


「ありがとう、これをやり遂げてくれた社員に、特別ボーナスか何かあげたいけど。あ、まさかその人も持ち帰りしたとか言わないでしょうね?」


「それは大丈夫です。途中で迎えの車に乗って直帰してますので。彼へのボーナスはこちらで手配しておきます。」


はぁ…これは早く皆に報告をした方が良さそうね。

お父様にも報告をしなければならないけど…情報源の説明もあるわよね。

その辺も報告のときに相談してみましょうか。

もちろん今回は私も直接行きますよ。

久々に沙羅達に会いたいというのもあるけど、電話越しとはいえ随分楽しそうだったもの。

私だけ仲間外れは許せないわ。


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「一成さん、絵里から連絡がありましたよ。どうやら色々とわかったようで、早めに集まるようにとの話ですが…どう致しますか?」


沙羅さんが台所の片付けをしているところで、RAINのメッセージ着信が鳴った。


ちょうど夕食が終わった直後で、俺はテーブルの上をまとめていたところだ。


「あ、一成さん…それも私がやりますといつも言っているではありませんか」


振り向いて俺を見た沙羅さんが、注意するように声を上げた。

そうは言われても、手持ち無沙汰な上に全て任せてしまうのもどうかと思う訳で。

こうやって強引にやってしまえば、その内に馴れて少しでも分担させてくれるのではないかと思っている。


まぁそれはともかく、色々わかったということは、山崎を追い込むネタが見つかったということだろう。

となれば、その情報をどう使ってどう動くのか、決めるときが来たということだ。


幸い明日から土日だからな


「ちょうど週末だから、皆の予定を聞きましょう。可能なら丸一日使える日曜日がいいんですが」


「畏まりました。では私は、夏海と絵里に確認をしておきます。」


さて、今回は雄二にも声をかけて、速人と藤堂さん…藤堂さんには花子さんと立川さんへの連絡を頼まないと。

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