第138話 怒られるよりもショックなこと
「な? 信じてくれよ、俺らは山崎とも佐川とも関係ないんだ。」
確かに、文面をみる限りでは少なくともこの写真の件に関わった形跡はなさそうだけど…
でも俺を脅迫しようとした事実は消えないんだけどな。
「速人、ごめん俺に話をさせてくれ。任せて貰ってもいいか?」
「わかった。任せる」
速人が素直に譲ってくれたので、今度は俺が話を進める。
「山崎は関係ないって言うけど、お前ら山崎の指示で俺を脅迫したんだろ?」
立場が逆転していることを強調するように、強めに話しかける。
「は? いや、あいつは…その、噂を広げろって言ってきただけで…」
そう言えば、さっきのRAINにも俺のことを含めてそのくらいのことしか書いてなかった。
ということは、俺を脅迫するという行動は、こいつらが勝手にやったと言うことか…
所詮、自分の利益しか頭にないやつらの集まりなどこんなものか。
山崎も、まさか噂を蒔け程度のつまらないことから、足をすくわれるかもしれないなんて思っていないだろう。
「お前らの独断だということはわかった。とにかく、写真の件と併せてお前らは警察に…」
「何でもしますから、警察だけは!!」
「山崎が悪いんです! 写真のことも、今回のことも、山崎が全部悪いんです!」
どうやら全部擦り付けるつもりだな。
だが都合がいい…こんな雑魚より山崎だ。
今回の件であいつが俺にちょっかいを出してくることがハッキリしたし、エスカレートして沙羅さんや俺の周りを狙う可能性だって充分にある。
この学校に山崎の知り合いがまだいる可能性も残っている訳で、特に沙羅さんが狙われるのだけは何としても避けたい
それなら…過去の礼も含めてあいつを潰すしかない。
それに柚葉も…今回の件はあいつが山崎を唆したのが原因となれば、放置できない。
また俺にちょっかいを出すというのなら、もう幼馴染みだからという情はない。
「山崎が全部悪いんだな?」
俺がそう反応すると、それに乗っかるように
必死になって頷いた。
「なら、山崎の件が片付くまで警察は保留してやる。その代わり、山崎のことを教えろ。お前らが関わってないなら言えるよな? ちなみに俺もここまでの会話は全て録音してるからな。」
「わ、わかった、本当に俺らは山崎と関わってないからな、あいつを庇う理由もないし」
自分の為なら仲間も簡単に見捨てられる…
本当にこの手のやつらは屑だな
というか保留にしただけで、このまま無罪放免なんて一言も言っていないけど。
ただ、仮にここでこいつらを警察に付き出しても写真の件に関わっている可能性は低いだろうし、もしそれが山崎に伝わった場合、何かしらの対策を取られると後々面倒になりかねないからな…
「ごめん速人、勝手に話を進めてしまったけど…」
「いや、いいよ、話を聞く限りは直接関わっているか微妙っぽいし、一成に任せる。」
速人の方も大丈夫かな
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こいつらが知っている限りのことを聞き出したが、写真の件以外はそこまで目ぼしい情報はなかった。
この二人は、例の佐川という人物経由で山崎と知り合ったのがきっかけで、たまに女性を紹介して貰う代わりに、何か依頼があれば手伝うという関係だったらしい。
といっても数回くらいの話で、佐川が事件を起こしたせいで山崎が警戒したらしく、それ以降は女性を紹介することはなくなっていたそうだ。
それでも恩着せがましく言いながら依頼くるので、自分達がパシリに思われていることが気に入らなくて独断で動いたということだった。
ちなみに佐川が事件を起こしたことを知ってはいたが、山崎が自分も関わっていないと言いながらも黙っているように念押ししてきた為、不審に思っていたらしい。
佐川の写真に驚いて、更に山崎が写っていてやはり関係があったと思い込んだという訳だ。
とりあえず現時点で話せることは話したということで、今後も何かあれば必ず話すという条件で保留…と思ったが
「一成さん、警察は保留にするとしても、学校としての処分はしておくべきだと思います」
確かに沙羅さんの言う通りかもしれない。
交換条件にしても、全くの保留では甘すぎるか…
「確かに、現状でもそのくらいは必要ですかね」
「ええ、バカをまともに相手をするのも面倒なので、三人まとめて脅迫の共犯者ということで処分するように報告しておきます。」
「ひ、姫、俺は騙されて…」
「ちょっと待ってくれよ、保留してくれるって…」
「黙りなさい」
強く言った訳じゃないのに、妙なプレッシャーが三人を黙らせた…
「警察に通報することが保留になっただけですよ。その単純な頭でもそのくらいわからないものですかね?」
やはり沙羅さんも、俺に任せるとは言ったものの頭にきていたようで、攻撃的な口調になってしまっている
「一成さんに免じて報告は脅迫未遂にしてあげます。精々教師と両親への言い訳でも考えておきなさい。得意でしょう? あなた方みたいな人間は、そういったことだけは頭が回るのですよね…面白いことに。」
どうやら今後のことを考えて多少控え気味にしてくれている…のか?
「その代わり、もし後で関与していたことが発覚したら…覚悟しておきなさい」
「「「………」」」
結局、数人の教師が三人を引き連れていき、たまたま知った俺の噂で脅迫「未遂」を行ったとすることで、一応恩を着せた形をとることになった。
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ちなみに後日、この二人はそれぞれの両親と共に俺へ謝罪となったのだが、その最中に親に泣かれたことがショックだったらしく、二人とも号泣して謝ってきた。
そして翌日には見た目も地味などこにでもいる高校生になっていた。
山崎については、これ以上の関わりは本当に無いから聞きたいことがあればいつでも聞いてくれとのことで、随分と萎らしくなったものだ。
最後までよくわからなかった田上というやつは、何かあったようで突然転校になったとのことだった。
結局あいつはなんだったんだろう…
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屋上でのいざこざが終わり、今日は生徒会がないので俺達は屋上から生徒会室に移動していた。
俺のことをしっかり説明する必要があったことと、藤堂さんが話があるということだったからだ。
もう既にある程度は皆わかっているであろうけど、俺は先日沙羅さんに話をしたことを皆に説明した。
思っていたよりかなりスムーズに理解して貰えたのはありがたかった…
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