第50話 風邪

「……あーキツい…ダルい」


やっちまった…あの後、自分なりに気を付けたつもりだったのに。


俺が風邪をひいたなんて先輩が知ったら、タイミング的にあの雨の日が原因だとすぐわかるだろうし…自分のせいだって言い出しそうなんだよな…

あと、ケアが足りないって怒られそう…


とりあえず明日休めば土日がそのまま休めるし、それで何とか…

問題は先輩達だよな…用事があるから明日は無理だとRAINを送っておこうか。

朝と昼を回避できれば、バレずに済むだろうし


「すみません明日なんですが、用事があるので朝一緒に行けないです。昼もそのまま用事があるのでお昼ご飯と水やりはお休みさせて下さい。すみません。」

「畏まりました。残念ですが、来週からまたお作りしますね。」

「はい、ありがとうございます。お休みなさい」

「お休みなさい」


これで取りあえずいいか、先輩が教室までこなければバレないだろう…


…という、またもや盛大なフラグを立てた俺だった


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朝、挨拶だけでもと高梨さんの教室まで伺いましたが、まだ登校されていないようでした。


ギリギリになるなんて、お忙しいのですね。

無理に押し掛けてしまうのはよくないでしょうか…でも、お昼も会えないのですから挨拶とお顔だけでも…


「どうしたの?高梨くんに会えなかった?」


「ええ…今日はお忙しいと連絡を頂いておりますので。」


高梨さんのお弁当を作れないのは寂しいですね…もう私の日課になっていますから。


「忙しいといっても挨拶くらいは出来るだろうし、昼休みに行ってきたら?」


「はい、そのつもりです。」


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「高梨くんなら、今日は風邪でお休みですよ。朝のHRで先生が言ってました。」


お昼休み、高梨さんの様子を見にきたのですが…

見当たらなかったので、たまたま近くにいた女子生徒に聞いたところ、そんな返答が返ってきました。


……風邪…昨日までそんな感じは…夜に悪化したのでしょうか…


教室まで急いで戻りましょう


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沙羅が急いで戻ってきた。

険しい表情をしてるけど、高梨くんに会えなかったのかな?


ん?

なんで急に荷物を纏めてるの?


って!ちょっとまさか!


「沙羅!何帰ろうとしてるの?まだ学校が終わってないんだよ?」


「高梨さんが風邪をひいてお休みしているとのことでした。先日の雨が原因の可能性が高いです。であれば、私のせいなのですから今から看病を…」

「待った!えーと…先生には何ていうの?それに沙羅は高梨くんの家を知ってるの?」


「はい、先日一緒に下校致しましたので。先生にはこの後説明に伺います」


雨が原因って何…それより、いつの間に家まで…って、そこじゃない。

仕方ない、高梨くんをダシに説得するしかないか


「沙羅、気持ちはわかるけど、今沙羅が早退してまで行ったら、高梨くんが困るんだよ?自分のせいで、沙羅を早退までさせてしまってどうしようって」


「あ…う…ですが」


おー、やっぱ高梨くんが困るって言われると抑えられるみたいね。


「高梨くんは、沙羅がそうなると困るから、仕方なく嘘をついたんだと思うよ。だから、行くならちゃんと学校を終わらせてからにしないと、高梨くんの気遣いを台無しにすることになるよ?」


…高梨くんから聞いた訳じゃないけど、沙羅に知られたくなくて嘘をついたと考えれば、その辺りが理由でしょうからね。


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高梨さんにご迷惑を掛けてしまうのは…


私は今すぐに行きたい気持ちを我慢しました。


そうです…高梨さんは優しい方ですから、私の為に嘘をついて下さったのでしょう。


このタイミングで風邪をひくなど、あの日が原因だとしか思えません。

でもそれを悟らせないようにと考えて下さったのでしょう。


であれば、せめて学校をしっかり終わらせてからにしなければ、高梨さんに申し訳ありません。学校が終わってからお伺いさせて頂きましょう


……もちろん、嘘をついたこと自体はお説教です。


「わかりました。高梨さんのお家へは放課後に伺うことにします。生徒会はさすがにお休みさせて頂きますが。」


「私からも大地に連絡しておくから、放課後になったらすぐに向かおう。」


私は、今日ほど授業が早く終わって欲しいと考えたことはありませんでした。

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