第61話 ファンクラブ
ガラガラガラ
視線が集まる
…何だよ、金曜日に一日休んだだけだろ…
そう思いながら席につくと、女子が二人近付いてきた。
「おはよう高梨くん」
「風邪ひいたんだってね、もう大丈夫なの?」
この二人、本当に最近よく話しかけてくるな。
別に迷惑とかじゃないけど、何でだ?
「あぁ、土日でずっと寝てたから」
「そっか。それなら良かったよ」
「友達が体調悪いままなんて、優しい夏海先輩が悲しんじゃうからね」
…なんで好意的なのか不思議だったけど…まさかこの二人、噂の夕月夏海ファンクラブなのか?
「なぁ…ひょっとして二人って、夏海先輩のファンクラブなのか?」
「そうだよ〜」
「やっと興味を持ってくれた。仲良くしようね、夏海先輩の友達は私達の友達だから。」
繋がった…そういうことか。
でも、それだと夏海先輩に近付く悪い虫とか思われそうなんだが。
「ファンクラブ的に、俺って邪魔とか思われてないの?」
「そんなことないよ?ただ、夏海先輩って人当たりがいいし後輩の面倒見とかもよくて人気があるんだけど、友達な感じの人は少ないんだよ。だから羨ましいなぁと思う人は多いだろうけど、夏海先輩の友達は大切に…が鉄則だから」
「抜け駆け禁止だから、夏海先輩狙いだったら例え友達でも話は別だけど…高梨くんは薩川先輩だから、みんな安心してる。」
「へ!?」
え、何、俺が沙羅先輩に…
「あれ?ファンクラブのメンバーならみんな知ってるよ?わかりやすいし」
「薩川先輩も、高梨くんだけ明らかに特別扱いしてるもんね。」
……まさか…いやそれなら何か言ってきても…
「薩川先輩のファンクラブで何か困ったら私達も協力するから。」
「あいつらキモいくせに結束力が凄いから…それもキモいか。」
今のところ、何かされた覚えはないよな…
「薩川先輩の前に出ると何もできないヘタレの集まりだから、薩川先輩と一緒にいれば安全だと思う」
「夏海先輩にも迷惑が及ぶようなことするから敵対してるんだよ。私達は高梨くんの味方だから、何かあったら相談に乗るよ。」
「えーと、ありがとう?」
予鈴が鳴った
「それじゃ、病み上がりで大変だろうけど頑張ってね」
「どうも…」
うーん、納得したけど、ファンクラブねぇ…
というか、沙羅先輩のファンクラブってあるのか…存在をどう思ってるんだろう…
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昼休みになり、花壇へ向かう。
昨日まで療養食?だったので、普通のご飯が久し振りな気がする
花壇では、既に準備が終わっているようだった。
場所的に、2年生の方がここへ着くのは早いと思うが、それでも早すぎじゃないか…?
「すみませんお待たせしました!」
「こんにちは、高梨さん。私達も来たばかりですから大丈夫ですよ。」
「こんにちは、高梨くん」
「こんにちはお二人とも」
先輩が立ち上がるとこちらへ近付いてくる。
あ、やっぱ確認するんですね…
「朝と比べて変化はなさそうです」
額に手を当てて、首の体温もしっかり確認して俺から離れた。
「…………」
夏海先輩はポカンとしてるな…
「は、はい。体感的にも大丈夫です。」
「大丈夫そうですね。でも、放課後も確認させて頂きますね?」
放課後ってどうするんだ?
まさか生徒会室まで来いとは言わないよな…?
「では、お食事にしましょうか?」
「はい、ちょっと腹が減りました…」
「…なんで何事もなかったかのように…あのくらい普通だとでも…」
「夏海?食べないのですか?」
「食べるけど、朝からお腹いっぱいで困ってるだけよ。」
「食べ過ぎは気を付けて下さいね?」
「……」
何で俺が睨まれてるんだろうか?
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帰りのHRが終わった。
体調が悪化ではないけど、病み上がりな上に微熱くらいはあるだろうし、さすがに疲れた感じはする…早く家に帰って横になりたい
「高梨くん大丈夫?」
「顔色が悪いって程じゃないけど…大変そうだよ?」
クラスメイトからこんな風に素直に話しかけられるの久し振りだな…ちょっと嬉しい。
「さすがにちょっと疲れたわ。帰って横になりたいかも…」
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放課後に体調を確認しますとお話はしてありましたが、高梨さんはまだ教室にいらっしゃるでしょうか?
病み上がりですし、まだ少しだけ熱もありますから…
本日は短時間とはいえ、生徒会で少し打ち合わせがありますので、お休みをする訳にも…
本当はお家まで付き添って差し上げたいのですが。
お昼休みの感じでは大丈夫だと思いますが、油断はいけませんね。
高梨さんのクラスはHRが終わっているようで、教室から出てくる生徒がいます。
ガラガラガラ
「失礼致します」
高梨さんはまだいらっしゃるようで…す、ね?
………何でしょうか……あの二人は…
はっ!
高梨さんがクラスメイトとお話をしているだけではないですか。
私は何を…いけませんね。
どうしましょう、会話が終わるのを待って…
……少々、距離が近くて馴れ馴れしいのではないでしょうか…
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