第60話 お説教という名のご褒美
「高梨さん、私達に心配や迷惑をかけたくないと思って下さるのは嬉しいです。ですが、そのせいであなたが辛かったり大変だったりしていることを我慢して、悪化してしまったらどうするのですか?」
うう、先輩の言葉が耳に痛い…
「高梨さんはお家でお独りなのですから、体調の急激な変化が起きたり、仮に悪化してしまったとしても、私は気付いて差しあげることもできず、また、お助けすることもできないのです。」
先輩が俺を真っ直ぐ見据えてくる
真剣な眼差しに、吸い込まれそうだ…
「もしその結果、私が気付かないところで、それこそ重症にでもなってしまったら………私は泣きますよ?」
うぐお、これは殺し文句だ。
先輩がこんなこと言うなんて…
「昨日もお話しましたが、私は高梨さんのお世話をすることは大変でも苦労でもないのです。むしろ、高梨さんが辛いことを我慢されている方が私も辛いのです。ですから…」
そこまで言うと、先輩が近付いてきた。
かなり近距離までくると、人差し指を立てて俺の額をつついた
「嘘をついたら、めっ!ですよ?」
うわああぁぁぁ、駄目だ、顔を赤くするな我慢しろ…いや無理だって、これ可愛すぎだろ!?
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見てるこっちが照れくさい!!
高梨くん真っ赤だな…いや、あれやられたら無理ないよ。
沙羅のことだから、もっとしっかりお説教すると思って面白そうだったから蒸し返したのに、まさかこんなイチャラブで反撃されるとは思っていなかった。
ていうか、あれ高梨くん落ちたでしょ?
だって沙羅だよ?100人に聞いたら100人が厳しい人って評価を返す沙羅だよ?
あの沙羅が、まさかの萌え説教するなんて…
普段の沙羅のお説教と言えば本当に厳しいのよ。あれを、ありがとうございますなんて言うのはファンクラブのバカ共くらいで、下手をすると涙ぐむ人もいるくらいだし。
……いやぁ、女子高生が同世代の男子に「めっ」とか沙羅は凄いなぁ。
私には絶対真似できないし、そもそも思い付かなかった…
狙ってあざとくやった訳じゃなくて、天然なんだからなぁ…こんなところまで女子力の塊ですか。
高梨くんだって、本心では沙羅のこと想ってるだろうし、あれをやられたらどうなの?
…どうでもいいけど、最初は「私達」って言ったのに、途中から「私」だけになってるね…
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「反省して頂けましたか?」
「はい…凄く反省しました…」
本当に凄く反省しました。
申し訳ない気持ちはもちろんだけど、恥ずかしさも同じくらいです…
「…あ…少々強く言い過ぎてしまいましたでしょうか?もう怒っていませんから、大丈夫ですよ…?」
俺は赤くなっているであろう自分の顔を、先輩に見られたくなくて下を向いていたのだが、怒られて落ち込んだと勘違いされたようだ
頭の上に手が乗せられた。
これはまさか…こんな人の往来がある場所で!?
「高梨さん、私は怒っていませんから。反省して頂けたのなら、もうそれでいいんですよ…お顔を上げて下さいね?」
なで…なで…なで…
ますます顔が上げられなくなってます!
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げんなりとは、こういうことを指すのだろう…
いや、仲良くなりすぎでしょ…この数日間で何があったの?
特に沙羅が変わったかな。
これまでは高梨くんに迷惑をかけるかも…って部分がどうしても残っていたはずだけど、今は自分の行動を受け入れてくれると信じてる感じがする
昨日の夜に寂しいと言ってたし、これはそれを埋める意味合いもありそうね。
本人はただ嬉しいと思ってやってるだけでしょうけど…
うーん、高梨くんの気持ちを確認したいところだなぁ
話もあるし、今晩橘くんと相談してみようか
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色々あったけど、学校に到着。
はぁ…また今日からあのクラスに行くのか…
「高梨さん、何か体調の変化があったら保健室へ行って下さいね。あと、私にも必ず連絡を下さいね」
「…(沙羅は高梨くんの保護者なんだろうか)」
「は、はい。でも大丈夫だと思いますから」
「では、またお昼休みに。」
「また後でね〜」
「はい、また後で」
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