第59話 変化

RAINのメッセージ着信で目が覚めた


「おはようございます、高梨さん。起きていらっしゃいますか?」

「おはようございます。今起きました。」


ピンポーン


は?

こんな時間に誰が…って、タイミング的に先輩か?


ガチャ…


ドアを開けてみると、やはり先輩が立っていた。


「早朝から申し訳ございません、直接お顔を見て、高梨さんの体調を確認させて頂こうと思いまして…」


「あ、確かに昨日、確認すると言ってましたよね?」


「はい…ただ、昨日の時点ではお電話のつもりだったのですが、どうしてもお顔を…」


「えーと、とりあえず上がって下さい。」


「ありがとうございます、失礼致します。」


なんか、今日もこの光景が見られるとは思っていなかったので、予想外に嬉しいと感じている自分がよくわかる


「体調は如何でしょうか?お熱も計りましたか?」


そう聞きながら、既に先輩の右手は俺の額にある訳だが…無意識?


「昨日の夜の時点では微熱でした。多分もう大丈夫だと思いますが」


「そうですね、触った感じ、もう熱さを感じないですね…」


額…首と触って、先輩が離れた。


「では、本日から通学再開ということで。高梨さんはお着替えをして下さいね。私はその間に朝食の準備をしておきますので。」


そういうと、先輩はタンスの中から俺の制服のシャツと下に着るシャツを取り出して渡してきた。


そしてそのまま台所へ向かうと、冷蔵庫に入っていた昨日の夕食の残りだった米をレンジに入れて、卵やハム(昨日、先輩が持ってきてくれた)で何かを作り始めた。


…え……ここ俺の家だよね…?


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先輩が作ってくれたスクランブルエッグを食べながら時計を確認すると、まだ少し余裕があったのでゆっくりできた。


「夏海とはいつもの場所で合流することになっておりますので。」


「了解です。ということは、夏海先輩はもう沙羅先輩がここにいることを知ってるんですか?」


「はい、既に伝えてあります。」


「そうですか…あ、ごちそうさまです。」


こんなにしっかりした朝食食べてから学校行くの初めてかも。実家でもパンだけだったからな。


「お粗末さまでした。ではお片付けしてしまいますね。」


「あ、そのままシンクに入れといて下さい。帰って来たらやるんで」


「すぐ終わりますので、大丈夫ですよ。」


えーと、そういう意味ではなかったんだが…

ここまで甘えておいて今更か…


「はい、お待たせ致しました。それでは出発しましょうか。」


鍵をかけ家を出ると、先輩の横に並んで一緒に歩く。いくら歩道とはいえ、もちろん俺が車道側だ


「…朝から色々申し訳ございません、またやり過ぎてしまいましたでしょうか…」


「とんでもないです。美味しい朝食まで食べることができて、朝からありがたいです。」


「そう言って頂けますと嬉しいのですが……私、このところ少しおかしいのです…高梨さんと一緒にいると、どうしても何かして差し上げたく…いえ…何でもございません。」


先輩…そんな風に思ってくれて…ああまただ、先輩を見てると顔が…

って、先輩は友達だと言っただろ。余計な気は起こすな


「…………」


気まずい訳じゃないけど、お互い微妙な沈黙のまま歩いていると夏海さんが見えた。

どうやら先に着いていたようだ。


「おはよ、二人とも」

「おはようございます。」

「夏海先輩、おはようございます」


「よしよし、ちゃんと来れたみたいね。体調はどう?」


「まだ少しだけ怠い感じは残ってますけど、このくらいなら…」


夏海先輩が、俺と沙羅先輩を交互に見ながら、意味深な笑みを浮かべた


「そっか、沙羅の徹底的な看病が効いたかな?」


「はい、沙羅先輩にはお世話になりすぎてしまって…」


「そんなことはございませんよ、私は普通に…」


「いや、本当に助かりました。昨日と同じ流れかもしれませんが、改めてありがとうございます。」


「ふふ…でしたら、どういたしまして…ですね。」


「はいはい、平常運転なのは理解しました」


「「??」」


夏海先輩が時間を確認すると、前を向いた


「さて、そろそろ行こうか。高梨くんは病み上がりだしゆっくり歩こう。今日は無理をしちゃダメだよ?もし学校の途中で体調が悪くなったら、沙羅には連絡入れてあげて。もう嘘ついたらダメだよ」


「あ…」


夏海先輩、余計なことを!!

それは掘り返さないようにしてたのに…


「そうですね、体調も良くなったようですし、ちょうど話題に出たことなので少しだけお説教です。」


あ、やっぱ覚えてたんですね…

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