第62話 絶対に一人では帰しません
「大丈夫?風邪がぶり返したりしてない?」
「帰る前に、保健室寄って体温計を借りて…」
「高梨さんの体調は私が確認しておりますので、心配は不要です」
!?
いつの間に…
先輩が不自然なまでの笑顔で近付いてくる。
目線は明らかに俺の額をロックオンしていて、まさか…
…いや、まだ教室にはかなりの人数が残っているんですよ先輩!?
「高梨さん、お熱を計らせて下さいね?」
そう言われてしまえば、俺は逆らえる訳もなく…
額、首と、なぜか昼休みよりも長く計って頂きました…公衆の面前で。
教室から声が消えた…二人も固まってるし…
「お昼と比べても変化は感じませんね。大丈夫でしょう」
そう言いつつも、先輩は俺の顔を見ながら
「ですが、少々お疲れですか?そんな感じがしますが…」
「あ、はい、ちょっと疲れたかなと…」
「…そうですか…畏まりました。」
先輩は何か考えたようで、少し間を開けた。
そして二人の方を見た…
「高梨さんの心配をして頂きありがとうございます。あとは、"私"がしっかり付き添いますのでご安心下さいね。」
物凄く丁寧な対応が、逆に何かを感じるんだけど…
「は、はい、それでは薩川先輩にお任せします。」
「それでは私達は失礼します。」
「さぁ高梨さん、参りましょうか。」
「は、はい。」
どこへ?とは聞けなかった。
とりあえず、教室を緊急脱出したい
先輩にしっかりと手を捕ま…握られて、教室を出た少し後に
「なんだありゃあああ!!」
「付き添うってどういうこと!?」
「本当に友達かあれ!!」
「ぐおおおお、薩川先輩がぁ!!!」
…なんか、教室から悲鳴みたいなのが聞こえてきてるような…
先輩は俺の手を掴んだまま、どこかへ先導するように歩く。
ああ、注目を集めてるなぁ…
俺は帰るつもりだったんだけど…
「あの…沙羅先輩は今から生徒会ですよね?俺は少し疲れているくらいなんで、一人でも帰れ…」
「生徒会につきましては考えがありますのでご安心下さい。しっかりお休みできる場所を用意しますので、申し訳ございませんが私が終わるまでお待ち頂きたいのです。」
え、凄く嫌な予感がするよこれ!?
というか、先輩がこんなに強引なの初めてじゃないか?
「クラスメイトにまで心配をかけてしまう高梨さんを一人にはできませんので」
…ひょっとして、何か少し怒ってますか…?
「さ、沙羅先輩、帰るくらいは一人でも大丈夫ですか…」
「ダメです!私が付き添いますから、絶対に一人では帰しません!」
「はい!ごめんなさい!」
また先輩に迷惑をかけてしまった…
でも、沙羅先輩だけだよな…俺をこんな風に受け入れてくれるの…
「沙羅先輩、本当にお手数おかけして申し訳ないです…」
「高梨さん、私は…」
「でも、俺をこんなに心配してくれて、受け入れてくれて、面倒まで見てくれた人は沙羅先輩だけなんです。それが嬉しくてつい甘えてしまって…」
「……高梨さん」
「は、はい?」
「私だけですか?」
「はい?」
「高梨さんには私だけですか?私にだけは甘えて下さるのですか?」
実際、俺にこんな風に優しくしてくれて、助けてくれて、率先して面倒まで見てくれる人なんかいない。母親は対象外だし
「え…と、その、俺は沙羅先輩以外、あんな風にお世話して貰ったり、甘えてしまった人はいません。」
うう、結構情けない上に恥ずかしいこと言ってるな俺…
「私だけ…私だけ…ふふ…そうでしたか」
!?
なんか、沙羅先輩が凄いキラキラした笑顔になった。
「高梨さん、困ったときにはいつでも私がお世話しますからね?それと、甘えたくなったら言って下さいね。いつでも大丈夫ですからね?」
「は、はい、ありがとうございます?」
「ふふ…さあ、それでは参りましょうか。」
機嫌が直ったの…か?
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生徒会室に着くと、先輩が俺を連れて中に入ろうとする。
やっぱ俺も入るの!?
ガラガラガラ
「お疲れ様です」
「「「「「お疲れ様で〜す」」」」」
「薩川さん、お疲れさ…ま?」
生徒会長が俺を見て驚いている。
それはそうだろう、俺だって何でここにいるのか不思議だし
「申し訳ございません、高梨さんのことで相談があるのですが」
「ああ…どうしたんだい高梨くん?」
生徒会長が俺を見て話しかけてくる
「「「「「高梨さん!! ??」」」」」
うわ!びっくりした!
何!?俺が何かした!?
「高梨さんは病み上がりで、まだ体調に少し不安があるのです。帰りに付き添って差し上げたいので、生徒会が終わるまで休憩室を使用させて下さい。」
「「「「「ええ!?」」」」」
なに、生徒会の人ってリアクションまで統一されてるの?
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