第349話 勇者
ガラガラ…
「おはよう」
「おはよ…」
パン!!!
パン!!!
「っ!!??」
教室の扉を潜った瞬間、室内に甲高い炸裂音が鳴り響き、目の前に紙吹雪のようなものが飛び散っていく。
一瞬遅れて、それがパーティー等で使うクラッカーであると思ったその瞬間…
「高梨くん…」
「「婚約、おっめでとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」
今度はクラスメイト達(と言っても、殆どが女子の声だったが)の綺麗にハモった声に迎えられて…
と言うか…
いきなり何事っっ!?
「なっ、なっ、何が…」
「さぁぁぁぁぁ、遂に村一番…もとい!! クラス一番の勇者がご登場ですよ!!!」
「ふっふっふっ…ようこそイケニ…じゃない、高梨くん!! 我ら恋愛乙女達の祭儀(ミサ)へ!!」
「さぁさぁさぁさぁ、ズズイっと祭壇へどうぞぉぉぉぉ!!」
後ろに回り込んだ女性陣からグイグイと背中を押され、あれよあれよと言う間に教卓の前…に着くよりも早く、黒板にデカデカと書かれた文字に気付く。
そこには…
「婚約おめでとう!! 勇者・高梨一成!!!」
とか書いてあるし!?
だから、勇者って何だよ!?
「いやぁぁぁ、あれだけの観衆の前でプロポーズするとか、もう勇者じゃなきゃ何なんだって話よ!」
「あれに比べたら、ここで皆に報告するなんて大したことないでしょ?」
「そうそう。私達がお店で忙しいのに、そんな面白い…じゃない、凄いことやらかしてくれちゃってさ!!」
「あのな…別にお前らを楽しませる為に、プロポーズをした訳じゃ…」
「おいおい、まさか俺らのお姫様をかっさらった勇者様が、まさか報告もせずに逃げるなんてこ……ひぃぃぃ!!??」
「そうだぜ。せめて大人しく冷やかされて精々困りやが……ひぃぃぃ!?」
恋愛ネタに目がない女性陣は、興味深々な様子でこちらに詰め寄ってくる…が、それが面白くないのか、はたまた言葉通りに沙羅さんを盗られたと本気で思っているのか、やっかみを滲ませて俺に絡んできた男連中は…
花子さんから殺気全開の視線を向けられて、アッサリと退場していきました。
俺が言うのも何だけど、花子さんの目の前で俺に絡むとは命知らずな。
「ほらほら、早くしないと先生が来ちゃうから!!!」
「短くてもいいから、高梨くんの口から一言!!」
「高梨…冷やかされてるように思うかもしれないが、これでもクラスの連中は、お前を真面目に祝うつもりがあるみたいだぞ?」
「川村…」
「そうそう! 薩川先輩と恋人どころか結婚なんて、羨ましいなんてもんじゃないけどさ。でもここまでされたら、もう素直に祝おうって気持ちもあるんだよ」
「田中…って、あれ? そう言えば、一番騒がしい奴はどうした?」
よくよく見れば、こういうときに率先して騒ぎそうなお祭り男…山川が居ないんだが…もう朝礼の時間も近いというのに、一体何処へ?
「山川なら、さっき肩を落としてどっかに行ったぞ?」
「項垂れて教室に入ってきたと思えば、そのままフラフラとまた出ていったな。羨ましいとか何とか、呪文みたいにブツブツ言ってたが…」
「羨ましい?」
よく分からんが、何かショッキングなことでも見てしまったとか、そういうことなんだろうか?
…って、今は山川のことより自分の方を何とかしないと!?
「ほらほら、高梨くん!!」
「皆が待ってるよ?」
「一成…ここはもう、スパッと言ってしまった方が早い」
「そ、そうだな…」
トドメで花子さんにまで説得されてしまえば、これはもう完全にゲームセット。
まぁ…単に報告すればいいというだけであれば、別に勿体ぶるような話でもないんだけどさ。玄関でもあれだけ大体的にやられたし。
ただ…
「…全員知ってるのに、改めて報告するのも微妙なんだけど?」
「そんなことないよ!!」
「そうそう、こういうことは、本人の口からしっかりと聞かなきゃね!!」
「はぁ…分かったよ。皆も知っての通り、俺は日曜日のミスコンで、沙羅さん…薩川沙羅さんにプロポーズしました。…これでいいのか?」
「しつもーん!!」
「はい!!!」
「はいはいはーい!!」
ご希望通りに報告を終わらせたのに、今度は手を挙げて何故かアピールを始める女性陣。
あんたら、一言でいいって言ったよな?
「高梨くんって、薩川先輩と同棲してるんだよねっ!?」
「あ、あの薩川先輩と同棲!! あんな美人と一つ屋根の下、健全な男子高校生が、我慢できるはずが…」
「ってことは、もう二人は毎日!?」
「きゃぁぁぁぁ!!! それ以上はらめぇぇぇぇぇ!!!」
「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!! 高梨ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「お、お、おまっ、羨ましすぎるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「さ、薩川先輩がぁぁぁぁぁぁぁ!! 薩川先輩がぁぁぁぁ!!!」
「くっ…もう諦めろ。諦めて…今はただ、俺達より一足先に大人の階段を登った勇者を祝って…」
「えーと…」
俺はまだ何も言ってないし、誰も指名してないのに…何を勝手に質問して、勝手に答えを出して、勝手に騒いで、勝手に絶望してるんですかね?
と言うか、もう引っ込んでもいいですか!?
どうせ説明をしたところで、まだ何もないなんて誰も信用しないでしょ!?
ガラガラガラ…
「こら、お前ら!! 何を大声で叫んでる!!!」
「やべっ!?」
「ちょ、今日は来るの早すぎ!?」
突然、教室の扉が勢いよく開け放たれ、そこから入ってきたのは俺にとって救いの神(?)、クラス担任の…って、後ろ手に引き摺られているのは山川か?
「はぁ…お前らな…何だこれは?」
黒板に書かれたクラスメイトからのお祝いメッセージ(ご丁寧に、可愛らしいデコレーション文字)を眺めつつ、先生は大きな溜め息をつく。
でも俺は、それよりも後ろにいる山川の方が気になって仕方なかったり…
「……全く、玄関で大騒ぎになっていたと報告があったから、心配して早めに来てみれば…」
「先生?」
「何でもない。教師にも教師の事情があるんだよ。そんなことよりさっさと席に戻れ!! 今日の当番は黒板を綺麗に消しておけよ!! それと、そこの紙ゴミの山も掃除しろ!! 後は…山川。お前も何があったのか知らんが、いつまでそうしてるつもりだ?」
「はい…すんません…」
普段の陽気さは見る影もなく、ポツリと呟くように謝罪の言葉を口にする山川。
これは思ったより重症っぽく見えるが…そんなにショッキングなことがあったのか?
「ほら、チャイムが鳴るまでに全部終わらせろよ!」
「「はぁ~い」」
渋々と言った様子で返事をしてから、それぞれが言われた通りに行動を開始するクラスメイト達。
対して俺は、教卓の前に放置されたまま、実に手持ち無沙汰な感じ。
「高梨、お前は当分、大人しくしてろよ? 特に学校内で、不必要に目立つようなことをするな。分かったな?」
「は、はい」
「…それと、何かあれば、俺じゃなくてもいいから近くの教師に直ぐ相談しろ。話は通ってるから、誰でも大丈夫だ」
「は、はぁ…?」
耳打ちするように、そんな意味深なことを言われても…この前といい今日といい、担任が妙に親切なのがどうにも怖…もとい、違和感がありすぎる。でも玄関で山田先生がフォローしてくれた件も同じ理由から来ているとすれば…真由美さんの話と関係あるのは間違いなさそうだ。
でも明らかに個人的な話なのに、ここまで学校に影響力を及ぼせるって…
うーん…?
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side 夏海
突然だが…
現在私は、未だかつてないピンチを迎えている。
それは、これまで経験してきた数々の強敵との試合…それも、格上を相手に死力を尽くし、もう後がない程に追い詰められた最後の一線。それすら凌駕するかもしれない、正に絶体絶命。
ここまで自分が追い詰められるとは思ってもみなかった、文字通り窮地と言えるくらい…
「さぁさぁさぁ…キリキリ吐いて貰おうか!?」
「まさか薩川さんの陰に隠れて、自分までちゃっかりだなんてね…」
「だいたい水臭いんだよ。何で毎日一緒にいるあたしらに、最初に報告しないかな?」
「何か深い理由でもあるのかな? ん?」
「いや…そ、そういう訳では…」
四方から囲まれるように追い込みを掛けられて、既に後ろは教室の壁。これ以上、後ろに下がることは疎か、まして逃げようにも…
何で…何でこうなった!?
「女の友情なんて寂しいもんだね。こんな簡単に終わっちゃうものなのかな?」
「ちょっ、何でそうなるのよ!?」
「まぁ…過ぎてしまったものは仕方ない。でも、こうなった以上は…」
「そうだよ。キッチリと説明して貰おうじゃないの」
「言っとくけど、逃がさないからね?」
「夏海、観念しな!!」
「ちゃっかり混じるな、悠里!!」
じりじりと距離を詰められ、もう本当に後がない。しかも残念なことに、まだ予鈴が鳴るまで余裕があるので…つまり、先生の介入も期待できない!!
そして、敵となるか味方となるか、ある意味賭けの要素が強い最後の望み…私の大親友・沙羅は、何故か今日に限って来るのが遅いし!?
いつもならもうとっくに居てもいい時間なのに…何で今日に限って。
くっ、もう、本当にここまでなの!?
「夏海…」
「夏海ちゃん…」
「なっち…」
「よし子ちゃぁん!」
「お前は黙ってろ!!」
「あいたっ!?」
取り敢えず、ストレスを悠里にぶつけて(天誅)気持ちを落ち着けて…
「さぁ…」
「「彼氏のことを、洗いざらい白状しな!!」」
「何でそうなるのよ!?」
そう…
私は今…
雄二のことについて、問い詰められている真っ最中!!
試合終了後に、お姫様抱っこをされて付き合っていることを報告したアレは、ものの見事に拡散されていたようで…
沙羅と高梨くんの一件が大騒動になったから、それに隠れて誤魔化せるかもしれないと密かに期待してたんだけど…
チッ、甘かったか。
「男の影を見せなかったから油断してたわ」
「まさか他校の男子とはね…完全に盲点だった」
「あれって高梨くんの親友らしいから、もし夏海が吐かなかったら高梨くんを問い詰めて…」
「ば、馬鹿!! そんなことしたら、薩川さんに殺されるわよ!?」
「私がどうかしましたか?」
「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」」
いつの間に来ていたのか、教室の入り口からこちらをじっと見つめている沙羅の姿。心なし、不穏な空気を漂わせているように見えるのは、決して気のせいではないはず。
でもそれはそれとして…
これはラッキーかも。
「今、一成さんのお名前が聞こえましたが?」
「い、いえ、私達は全く関係ないです!!」
「そ、そうそう、悠里が勝手に言ってるだけなんで!!」
「ちょっ!?」
「成る程。それでは悠里さん…一成さんに何をするつもりだったのか、私の目を見てもう一度言ってみなさい?」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!! 嘘です冗談ですユルシテクダサイゴメンナサイィィィィィ!!!」
普段通りに見える笑顔の裏に、明確な殺気を滲ませて悠里を威嚇する沙羅の図。
恐ろしい…我が親友ながら、恐ろしい。
「あぁぁぁぁ、薩川さん、指輪してるぅぅぅぅ!!!」
「ぉぉぉぉ!!!!」
「見せて見せて!!」
でも…直接それをぶつけられた悠里本人はともかく、恋愛ジャンキ…もとい、恋愛乙女達には効果が薄いらしく、沙羅はあっと言う間に周囲を囲まれてしまう。
若干、困惑気味に見える当人に対して、乙女たちはエサ(ネタ)に群がるハイエナの如く…
これはひょっとしなくても、私のことは忘れて貰えたと判断してもいい!?
「うわぁ、凄っ!?」
「綺麗…中に入ってる宝石って、本物のダイヤなの!?」
「ちょっ!? こ、これ、高校生が普段身に着けるレベルじゃないでしょ!?
「バッカ、婚約指輪だよ!? あたしらが普段使う程度の物な訳ないじゃん!!」
「さ、薩川さん、これホントに高梨くんが用意した指輪なの!?」
「ええ。これは正真正銘、一成さんから頂いた婚約指輪ですよ?」
「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「さ、薩川さんが、これを受け取ったってことは…」
「薬指に着けてるんだもん!! そりゃ当然…」
「本当の本当に、高梨くんと結婚するってことだよね!?」
女性陣は、ワクワクとドキドキに溢れた好奇心満載の視線を沙羅に集め…
反対に男性陣は、それを外側から絶望感漂う表情で静かに見守り…
渦中の沙羅は、幸せ一杯の笑顔を浮かべ…コクリと小さく頷いた。
「ええ。まだ少し先のお話ではありますが…私は一成さんと、正式に結婚致します」
「…………」
「……」
「…」
「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
「「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
何一つ迷い無く、さも当然とばかりに宣言するが如く。
とても高校生の発言とは思えない、ある意味衝撃的な一言を、実にアッサリハッキリと言い切ってくれちゃった沙羅。
まぁ沙羅だから、当たり前っちゃぁ当たり前なんだけどさ。
「おめでとう薩川さん!!!!」
「結婚って、響きが凄いよね!!」
「結婚式には絶対呼んで欲しい!!」
「薩川さんのウエディングドレスかぁ…うわっ、想像しただけで絵になるぅ!!」
「しかも高梨くんが独り占め!!」
「それは言わないであげなよ! 只でさえ、男子達は涙目なんだからさ」
「「ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」」
何と言うか、男子と女子のコントラストが凄すぎるわね。
天国と地獄…は、ちょっと違うけど、でも女子が盛り上がれば盛り上がるほど、男子は絶望に落ちていくという構図な訳で。
「あっ、そうだ!! ねぇ薩川さん、高梨くんと同棲してるってホントにホントなの!?」
「ええ。私達は二人で生活をしておりますよ?」
「おおおおおおおおおおおっ!! マジでっ!!??」
「か、完全に二人っきりで住んでるの!?」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!! 凄い凄い凄い!!!」
「だ、男子と一緒に暮らすって、色々と大変じゃない!? その、色々なこととか…主に色々なこと!!!」
「いえ、大変だと思ったことは一度もありませんね。それに、今の生活は将来の結婚に向けた予行練習の意味合いもありますから…もし何かあったとしても、それは喜んで受け入れたい所存です」
「「何かあったら受け入れちゃうの!!!!????」」
「え? え、ええ…勿論ですよ。一成さんには、私が出来ることを全てして差し上げたい…」
「「ぜ、全部してあげちゃうの!!!!????」」
あー…これまた、ちょいと際どい発言を…
勿論、沙羅の発言に深い意味なんか全く無いってことは、私も重々承知してるけど。でもそれをこの場で理解しているのは私だけであり、つまりそんなことを言えば当然…
と言うか、微妙に会話が噛み合ってないのに…こいつら脳内で、沙羅の台詞を意図的に書き換えてない?
「きゃぁぁぁぁ!! 薩川さん、大胆!!」
「そ、そうだよね!! もう結婚前提で同棲までしてるんだから…」
「高梨くんだって、責任取れるから問題なしってこと!?」
「や、やっぱり薩川さんも、女子…いや、女だったと!!!」
「さ、薩川さんが…薩川さんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁ!! もう聞きたくないぃぃぃぃ!!!」
「諦めろ…諦めろぉぉ…ぅぅぅぅ…」
「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「え…と…?」
一方の沙羅は、なぜ周囲がここまで大騒ぎ(男子に至っては大惨事)になっているのか、その理由を理解していないので…キョトンとした表情を浮かべ、どこか困惑気味の様子。
うーん…
このままだと、高梨くんも可哀想なことになりそうな気配があるから、武士の情けで止めてあげた方がいいかも。
ここまで来れば、私の方に関する話は完全に忘れて貰えただろうし…
「ほらほら、いい加減にしなさい。沙羅も困ってるでしょ!!」
「な、夏海!?」
「ちょっと、何よいきなり!?」
「あんたらプライベートなことに首を突っ込みすぎ!!」
「ええ~…でも聞きたいこと一杯あるのにぃ」
「大丈夫だって。あたしらも、そこまでセンシティブな話題に触れるつもりはないからさ!」
「そうそう…夜のお話とかね…」
「聞きたい!!! 本当はそっちを聞きたい!!!」
「あのね…」
まぁお年頃ですから…そっちの話題に興味津々なのは分からないでもないけど。
でもあの二人は本当に何もないみたいだから、聞いてもきっと無駄なんだよねぇ。特に高梨くんは、直ぐ顔に出るから「まだ何もない」って嫌でも分かっちゃうし…ただ本音を言えば、私も違う意味で気になることが…って、そうじゃなくて!!
「とにかく、これ以上…」
ガラガラガラ!!
「はい、いつまでも騒いでないで、早く席に着きなさい!!」
「「えっ!?」」
突然大きな音を立てて扉が開き、入ってきたのは我らがクラス担任、笠原先生(独身)。
朝礼の時間どころか、まだ予鈴すら鳴ってないのに…今日はどうしたんだろう?
「せんせ、いくらなんでも早いんじゃ…」
「そうですよ、まだ私達、話が終わってな…」
「このクラスが特段騒がしいという通報がありました! いいから席に着きなさい」
「…はぁい」
「…わかりましたぁ」
有無を言わせない担任の迫力に、渋々といった様子で自分の席に戻っていくクラスメイト達。
何だかよく分からないけど、取り敢えず何とかなっちゃった…のかな?
「…玄関にあった校内新聞もそうですが、貴方達が何を騒いでいるのかは分かっています。本人達に聞きたいこともあるでしょうが、あまりアレコレと詮索をするのは…」
「せんせっ!! その言い方をするってことは、薩川さんと高梨くんの同棲って学校的にも大丈夫なんですか!?」
「…これについてはプライベートな案件でもあるので、当人達以外からの問い合わせは一切受け付けません。ですが、学校として正式に許可は出ていますよ」
「おおおっ、マジでっ!?」
「学校公認の同棲!?」
「やべぇ、流石は婚約者!!!」
「はい。騒がない!! とにかく、薩川さんと高梨くんの件については余計な詮索を禁止します。もし目に余る行為が確認された場合、学校から指導が入りますからそのつもりで」
「ええええっ!?」
「何でそこまで!?」
…これはちょっと驚いたかも。
暗黙の了解的に大丈夫なんだろうとは思っていたけど、まさか歴と公認されているとは思わなかった。流石は沙羅パパ…佐波グループ次期会長の影響力は伊達じゃないね。
しかも先生が、教室へ来て早々にそんな話をするなんて…まさか早めに来た理由も、沙羅のフォローをする為だったとか?
うーん?
「はぁ…仕方ない。薩川さんの件は一旦置いといて、先ずは夏海の方を」
「悠里!! 蒸し返す…」
「そうだっ!! 私達にはまだ、夏海ちゃんの嬉し恥ずかしエピソードがあるじゃないか!!」
「むふふふぅ、お姫様抱っこの感想を聞きたいですなぁ…」
「ちょっ!?」
ヤバい…この流れは私に一点集中するパターンだ!?
「夕月さんの話なら休み時間に好きなだけしなさい。そんなことより、朝礼を始めますよ」
「「はぁ~~い」」
「そんなこと!?」
ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべ、一斉にこちらを見るハイエナ達の視線に…先程を遥かに上回る身の危険を感じる。
しかも先生は、沙羅のときと全然違い、完全スルーの構えで…
と言うか…
何で私ばっかりこうなるの!?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
時間が中々取れなくて、ブツ切り状態で執筆していたので微妙に繋がりが悪いような気がしないでもないですが・・・
実は今回の夏海先輩視点は、この後の昼食タイムで「~みたいなことがあったんだよ」程度の事後報告的な触りで終わらせるつもりでした。
でもその程度で終わらせるのは、自分らしくないな・・・とw
なので、急遽追加されたシーンです。
次回は昼食と・・・何かですw
それではまた。
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