第12話 相談

せっかくの休みなのに俺は何もする気が起きなかった。

でも、雄二と約束してしまったからな…


昨日の夜に雄二(俺は親友だと思っている)からいつもの連絡があり、ついぶっきらぼうな態度をとってしまった。


それを気にした雄二に、ゲーセンでも行こうと誘われた


駅前で合流した俺に開口一番


「スゲー不機嫌だな」


と困ったような、何とも言い難い感じの雄二が印象的だった。


ゲーセンで遊ぶ予定だったが、結局俺の気分が乗らずファミレスで話をすることになった。

雄二とは、お互いの近況を連絡しあっていたので余計なことを説明する手間が省けた。

そして昨日の話になった


「まぁ…普段からある程度親交のあった人に、いきなりその辺のアホ共と同じよう扱われたら余計にキツいか」


「俺が、他のやつと違って少しは打ち解けられていたって勘違いしてただけだよ…」


「んー、俺はその人のこと知らないから何とも言えないが、本当にそんな態度だったのか?」


「俺はそう感じた」


「そうか…(こいつは中学の頃のこともあって、疑心暗鬼になってる部分があるからな。先走って誤解してるだけかもしれない)」


雄二は何か考えていたようだが、すぐに元の表情に戻った


「まぁ、次に会ってみればわかるかもな。誤解かもしれないし」


確かにそうかもしれないが、俺は先輩に「あの視線」で見られたことに恐怖を感じていた。

お前も所詮はその辺のバカ共と同じだ…と、暗に言われたような気分だった


ある程度は信用して貰えていると思っていたのに、またあの目で見られたら…と思うと先輩に会う気にはなれなかった


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「んで、どうしたって?」


夏海が直球で訪ねてきました


「ですから…昨日の話です」


私は、昨日電話で少し相談した内容を重複させて説明しました。


「私の勘違いでなければ…高梨さんを傷付けてしまったかもしれません…」


昨日はあの後、高梨さんの悲しそうな表情が頭から離れませんでした。

その原因が自分にあるかもしれないと思うと…こんな気持ちは始めてです。


私は…何かしてしまったのでしょうか…

それに最後のあの表情…あれはいったい…


「んー、昨日も突っ込みたかったんだけどさ…まず最初に聞いておきたいんだけど、高梨さんって誰?」


私はそもそも高梨さんのことを夏海に話していなかったことに気付きました。

そう言えば、高梨さんのことはお祖母ちゃんにしかお話してませんでした…


「あ!…すみません、高梨さんはですね…」


私は、花壇でのこと、お祖母ちゃんとのことを説明しました。

他にもあるのですが、今はとりあえずの説明でいいでしょう。


「へぇ…今どきの男子にしては…って年寄りか私は」


「高梨さんは他の男子とは違うと思います」


「なるほどねぇ…んで、昨日具体的に何があったの?」


昨日、階段の踊り場であったことを説明しました。


最初から居た訳ではなかった為、どちらが悪かったのか含めて判断できなかったこと

公平である為、双方に同じ対応をしたこと

二人組の話が先にあった為、高梨さんに真相を問いかけたこと


「それって、いつもの、その辺の男子と同じ応対したってこと?」


「はい」


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そっかぁ…あれをやったかぁ…


私も、沙羅の普段の対応を毎日のように見てきた。

男子には冷徹に、女子には淡々と…それがいつもの沙羅だ。

私がそうなのだから、一度打ち解けてしまえば、ちゃんと普通に接してくれることは知っている。


でも例えば…


「友達になれているのか確信できていないときに、あんな態度をとられたら?」


それだけでは無いような気もするが、高梨さんとやらの気持ちも少しわかるかな。


でも、基本他人に無関心なこの子が、誰かに対してここまでハッキリと関心を見せるとは…しかも男子に…


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「そうだねぇ…まず言うと、その対応は決して間違っているとは言えないかな。公平にってのもわかるし、信じていたとしても証拠もないのに決めつけることはマズい」


「はい」


私はとりあえず自分の行動を肯定して貰えたようです


「ただ、アンタは自分でどこまで理解しているか知らないけど…」


と続けてきた


「普段の男子に対する態度は毛嫌いしている本音を隠してないし、酷いときは、相手をする価値もないと思ってるのが態度に出てるのよ」


確かに、私は昔から男子をそう思っていましたし、どうせ空気が読めないのだからと、態度や言葉でハッキリと示してきました。


「ここ一年くらいで更に酷くなってたんだよ? よく敵を作らないなと思えるくらい」


この一年…

恐らく、軽薄な告白を繰り返されたせいで余計に男子の印象が悪くなった頃かでしょうか。


「んで、高梨さんってのがどう思ってたのか知らないけど、ある程度は仲良くなれていると思っていたのに、ちょっと何かあっただけでそんな態度をぶつけられたらね。結局は他のバカな男子と同じように扱われるし、全然信用して貰えないんだなって思っちゃうんじゃない?」


「そんな…私は高梨さんは他の男子とは違うって」


「うん、そう思ってるのは事実だろうけど、向こうはアンタがそう思ってるなんて知らないからね。そう思ってるなんて伝えたことないでしょ?」


「はい…それは…」


「高梨さんの連絡先は知ってるの?」


「はい、以前交換しましたので」


夏海が少し驚いた顔をしました


「へぇ…アンタが男子とねぇ…まぁ今はいいや、直後とか夜に連絡した?」


「いえ、その…昨日は自分の何がいけなかったのかわからなかったので、何とお話すればいいのかわからなかったのです」


正直に話すと、微妙な表情になった夏海が


「うーん、そこでフォローできてれば違った可能性もあったかなぁ…」


私は打開のチャンスを逃していたようです…

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