第13話 亀裂

結局は勇気を出してしっかり話してみるしかないという、最初からわかっていた結論しかなかった。


でも俺は、確認することが怖いという気持ちも勿論あったが…殆ど諦めていた。


自分を信用して貰えず、対立して、孤立するなんて今まで何度も経験したことだ。所詮俺なんか…


と諦めた気持ちと


俺は悪いことをしたつもりはないのに、なんでいつも悪者にされる? どいつもこいつも…


憤りの気持ち。


俺はやりきれない思いを抱えたままファミレスを出た。

何も解決していないのがわかっているからか、雄二も俺の表情を見ながら苦い顔をしていた。

しかし、悪いことは重なるものだ。

ファミレスを出たところで…


……先輩に会ってしまった


先輩は女の人と二人だった。

友人だろうと思ったが…それよりも今は怖かった。

あの冷たい視線を向けられること

自分がどう思われているのか確認すること、わかってしまうこと。


先輩と顔を会わせるなんて不可能だ。


俺が顔を反らし、急に後ろを向いたことで雄二と目が合った。

俺の顔を見ていた雄二は何となく事態を理解したような顔で、俺と先輩を見比べた


「行こう雄二」


そう雄二に声をかけ、俺は先輩とは逆方向に歩き出そうとした


「ま、待って下さい!」


先輩が大きな声で俺を呼んだ

初めて聞いた声色だった


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「ま、待って下さい!」


私は誰かと話をするのに、こんな焦りを感じたことはありませんでした


夏海に相談しましたが、やはりどう考えてもしっかりとお話するしかないという、わかりきった結論でした。

偶然とはいえ会うことができたのです。

この機会を逃したくはないと思い、去ろうとする高梨さんを呼び止めました。


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「一成、その人が例の先輩なんだろう? ちゃんと話をした方がいい」


雄二が俺を諭すように言った。


正直向き合うのは怖かったが…でも心のどこかでまだ可能性はあると思いたい自分も残っている。


あんな態度をとったのは理由があった、信じていない訳じゃない、そんなことを言ってくれるのではないか…


俺は立ち止まり、もう一度ゆっくり振り向いたが、目を合わせることはできなかった。


「高梨さん、昨日のことですが…」


先輩から切り出してきた。


「私があの場に着いた時点では、高梨さんとあの二人に何があったのかわかりませんでした。ですから、事情を聞こうと思ったのです」


どうやら先輩は、俺が後ろから押されたことや、胸ぐらを捕まれたところを見ていなかったようだ。


「私は生徒会副会長として、全ての生徒を公平に見ているのです。誰かを特別に見ることはありません。あの場では、あなたも、他の二人も同じです。」


…それはつまり、俺も他のやつらと同じにしか見ていないということだよな。


「疑わしさがある以上、しっかりと話を聞く必要があるのです」


…疑わしさを俺から感じたということか?…あんな子供じみた、頭の悪いバカがするようなことやるような人間だと、そう思っていると…だから問い詰めた…と


思考がネガティブになっていることは自分でもわかっていたが、聞きたくない答えが続き、もうこれ以上話をしたくなかった。


帰ろうと思ったところで、雄二が口を開いた


「それはつまり、一成が疑わしいと感じたから問い詰めた…という意味なんですね? こいつが、そんな子供じみたバカな真似をやるような男だと、そう思っていると?」


雄二にしては珍しく、不機嫌な声色だった。


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私は沙羅の説明に頭を抱えていた


確かにしっかり話せと言ったが、自身の副会長としての心得から説明するとは思っていなかった。


あなたを信じている


最初からあなたを疑っていなかった


と言うだけで、向こうは話を聞き入れてくれたはずだ。


高梨くんの表情がどんどん強張っていくのがわかった。

私は話に割って入る必要があると感じた。


でも、高梨くんの友人であろう男子が先に割り込んでしまい、出鼻を挫かれた


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「それはつまり、一成が疑わしいと感じたから問い詰めた…という意味なんですね?こいつが、そんな子供染みたバカな真似をやるような男だと、そう思っていると?」


話の途中で、高梨さんと一緒にいた男子が割り込んできました。

私は、全く知らない男子に話しかけられた嫌悪感と、大事な話を止められたことで不快感が出てしまいました。


「誰もそんなことは言っていません。私は自分の立場の説明をして」


「もういいです。よくわかりました。」


「…高梨さん?」


高梨さんがまた…無表情になりました…


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「つまり先輩は、俺を昨日のバカ共と同類としか思っていない、そしてあんな子供染みたことを平気でやるような、程度の低い男だと思っていると、そういう話なんですね。俺は普段からそんな風に見られていたと、信用なんて微塵もされていなかったと。」


そこまで言われた訳じゃないけど、次々とネガティブな言葉が出てくる。止まらない…


俺は今までの積み重ねが全く意味を持っていなかったことを悟った。


結局あのときと同じで、それまでの積み重ねがあろうと信用のかけらも得られておらず、だから濡れ衣一つで簡単に疑われ、切り捨てられる。


俺はいったい何なのだろうか…


この人も俺と接しながら、その程度の信用すらしてくれていなかったということだ。


もうこの場にいたくなかった。


「いくぞ」


雄二を腕を引き、俺はその場を立ち去った


「ちょ、ちょっと待って高梨くん!誤解…」


先輩と一緒にいた女性が声を上げたようだが、俺はもう何も聞きたくなかった


「すまん一成、やっぱお前の感じた通りだったな…」


雄二が気分を落ち着けようと、大きく息を吐いた


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「つまり先輩は、俺を昨日のバカ共と同類としか思っていない、そしてあんな子供染みた悪さを普通にやるような、程度の低い男だと思っていると、そういう話なんですね。俺は普段からそんな風に見られていたと、信用なんて微塵もされていなかったと。」


…え?

何でそんな話に…


ちょっと待ってください、私は副会長としてあの場では嫌でもそういう態度を、対応を見せなければならなかったと説明したかっただけで…


でも私自身は最初からあなたを信じていたと伝えたかっただけで…


戸惑ってしまった私に代わり、夏海が声を上げてくれましたが、それも振り切るように高梨さんは友人を引っ張り足早に去ってしまいました。


「はぁ……心構えができてなかったとは言え、最初に伝えるべき言葉を決めておかなかったのが失敗だったなぁ。しかし、あれはかなりコンプレックスがあるんだろうな」


「夏海…いったい…」


私は現状が理解できなかった

なぜこうなってしまったのでしょうか…

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