第38話 友人同士の考察
「これも可愛いですね…」
先輩が弁当箱を見ながら声を漏らす
ちなみに今見てるのは猫のイラストの入った弁当箱だ。
…正直、男物のシンプルなやつを想像していたんだが…いや、先輩がいいなら俺は
------------------------------------------
「沙羅は男物なんて気にしてないからねぇ。絶対に可愛いの選ぶわ」
「…一成が可愛い弁当箱で食べてる姿が想像できない…」
まだ選ぶのに時間かかりそうだし、今のうちにこっちも擦り合わせしとこうかしら。
「今のうちに自己紹介とかしとこっか。改めて、私は夕月夏海。二年で、あの子…薩川沙羅の友人でクラスメイトよ。」
「橘雄二です。一成とは、小学校の頃からの付き合いです。」
「宜しくね、橘くん。早速だけど、今日こうして来てるってことは、何かしら心配してるってことだよね?」
「宜しくお願いします夕月さん。はい、一成はちょっと抱えてることがあるので…それに、あいつは俺以外と出掛けるのかなり久々なはずなんで余計に気になって。」
抱えてるものがある…ねぇ。
気になるけど、いきなり不躾に聞くものね
「私は沙羅の初デートが面白…心配だったからついてきたのよ。」
「……そうでしたか。ところで根本的な質問なんですが、薩川さんは一成に友人だと公言してるんですよね?間違いないですか?」
やっぱりそんな感じで聞いてるんだね。
ということは、高梨くんも沙羅の言葉を真に受けてるのか…
「そうだね、確かに沙羅は高梨くんを大切な友人だと言ってる…ねぇ橘くん?あなたは私の協力者として考えていいのかしら?高梨くん本人に黙っていて欲しいこともあるんだけど…」
「俺は正直、もう一成は救われて欲しいんですよ。あいつは優しいやつですが、周りのせいで散々酷い目にあってきました。だから、あいつが幸せになれるのなら協力します。」
うん…これなら大丈夫そうかな。
酷い目って話が気になるけど、さっきの「抱えてる」っていうのに
絡んでるのかな。
でも類は友を呼ぶというか、橘くんも優しい人だねぇ
「わかった。ここからは本人達に秘密だけど、まず沙羅は自分の気持ちにイマイチ気付いてないのよ。今まで恋をしたことなかったせいもあるだろうけど、独占欲とか嫉妬を不思議と感じている部分があっても、それは異性の親友だからと勘違いしてるみたい。まぁこれについては私も無理に訂正しなかったんだけどね。」
「やっぱりですか。話を聞いてて、友人と考えているにしては…と思ったんですよ。」
「高梨くんに対する優先度が一般的な友達を大きく越えてしまっているんだけど、本人はそれに気付いてないというか、気にしていないのよ。聞くだけで好意があると周りが気付くようなことでも、本人はそのくらい普通だと思ってるみたい」
「結構思い込み激しい感じなんですか?」
「沙羅も、今まで理由があって男性を忌諱してたからね。初めて仲良くなった男性で、しかも恋なんて初めての感情だろうから色々感情が溢れてるというか、制御できなくて過剰反応してる部分があるみたい。」
「なるほど。友人だと公言しながら行動が行き過ぎている感じがするのはそのせいですか。」
「高梨くんはどう考えているの?」
問題はそこだ。
少なくとも、親友以上の感情は持っているとみているが…
「あいつは…薩川さんに合わせるつもりです。」
「合わせる?」
「薩川さんが求めてるポジションになれればいいと思ってるんですよ。だから、薩川さんが友人を望んでいるなら友人でいいと思ってます。自分が薩川さんを大切に思っている気持ちは変わらないからって本人が…」
あー…高梨くんらしいと言えばらしいが…
つまり沙羅が大切だから、自分はどういうポジションでも構わないってことよね。
…ダメだ、意地でもあの二人をくっつけたくなった。
「…これは本人が言うべきことなので俺からはあまり言えませんが、あいつは中学の頃の出来事で、俺のようなもともといる友達ではなく、初めて自分を知ってそれでも受け入れてくれる人を求めていました。だからやっと現れてくれたその人に、盲目的になっている部分があります。俺が聞いても、恋人になりたいとか、異性として好きだとか言ったことないんですよ。」
「…そっか。でもそれなら、自分より沙羅を優先してるだけで、本心は別にあるかな?」
「…多分、好きだと思う気持ちはあるんだと思います。ですが、友達だと直接言われている以上、あいつはこの先も友達でいくつもりでしょうね。」
「…わかった。となると、まずは沙羅が自分の気持ちが何なのか気づく必要があるね。ただ、これは私の気持ちでもあるんだけど、自分で気付いて欲しい。」
これは私の本心だ。
あの沙羅が、やっと男性に好意を持ったのだから、ゆっくり見守ってあげたい。
「俺としても、心理的にどうであれ一成が今の状況に幸福を感じているのであれば、急いでひっかき回す必要はないと思います。悪い方向へ行かないように、見守ってあげればいいと思います。」
同感。
いや、なかなかどうして橘くんも友達思いのいい男じゃない。
これは今後も協力できそうね。
「さて、我々お助けキャラの情報共有と方向性が決まったことで、差し当たり今日のデートを見守りましょうか」
「そうですね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます